☆ ☆ 自前旅行のノウハウ ☆
☆ 自前旅行は、これで六回になる。
それを自慢する気持ちは露ほどもないが、昨今、多くなって
きた同世代の海外旅行や滞在を楽しみたい向きに、もしも希望
されるなら情報を提供してあげたいと思う心境になっている。
今、私たち夫婦は経験的に「おそれを持たず通常の気持ちで外
国滞在が出来る」境地に達したと自覚しているからである。
役に立ちたいのだ。
いや、この情報が役に立たなくてもかまわない。今、私たち
は現にこうしながら確信をもって海外旅行していることを書き
とどめておきたいのだ。
さて、私たちが所属するソサエテティーの一つに会報があり、
こんな原稿募集記事があった。「海外旅行、滞在についての調
査方法、時期、ホテルの選び方、予約の仕方、航空機の選び方、
航空券の買い方、旅行代理店の選び方、保険の掛け方、緊急対
策、楽しみ方、節約方法、携帯食、腹をこわさない食事、薬、
バッグの選び方等旅行に関する知恵の数々について投書下さい」
と。
会員から取ったアンケートをもとにして書かれたのだろうが、
私たちの「お答え」を示してみよう。
★「あなたの行きたい所」は、どんなところですか。まず本屋
さんで該当する本を見つけ、三冊ほどは読みましょう。(買わ
なくてもいいんですよ。)
★「夢」が膨らんできましたか。それとも心配ごとや不安を感
じましたか。つまり夢がしぼんだのではありませんか。夢が膨
らんだのなら次に進みましょう。
★三冊より四冊、五冊と読んでもいいですね。どれか一つを携
帯用に買いましょう。「携帯用のガイドブック」は、(ア)できる
だけ薄く軽く小型で、つまり携帯に便利で、(イ)地図がはっきり
としかも大きく、地図には通りの名や建物名などが十分に記さ
れ、(ウ)見物する値打ちのある物の紹介・料金や見所がはっきり
示され、(エ)ホテルやレストラン等の情報もたっぷり備えている
物がよろしい。
★それでは「旅程表」を作りましょう。これは単なる日程の計
画ではなく、本番の旅を机上でリハーサルするつもりで書いて
みましょう。(巻末に私の旅程表が記載されてあります。これ
は事前に作ったものを携行し、実施した後で変更を加えたもの
です。)家を出てから帰るまで、時刻入りでなるだけ具体的に
書き上げましょう。また旅程表の作成は、次の航空券・パス・
予約などと並行して進めていきます。
重要事項を一つ。旅程表には天候の具合や思いがけない不都
合で変更を余儀なくされる場合のことが考慮されていますか?
「雨なら」、「いい宿が見つからなかったら」、「乗り物の良
い便があったら」などと柔軟に対応できる計画を、予め加えて
おくのがいいと思います。
★「航空券の入手」は至って簡単です。あなたの好きな旅行会
社に電話をして、日時と行く先を告げて航空券を申し込めばよ
いのです。
安い航空券を手に入れようと努力するのなら、本屋さんに出
向き「AB・ROAD(エイビーロード」という雑誌を買ってきて、情報を
得てください。そしてそのどれかにねらいを定めて電話します。
その時、値段だけではなく「航空会社」や「乗り継ぎの時間」
などもすべて尋ねて下さい。あなたが「安心」できる航空会社
で、値段に納得ができ、示された条件が飲めるなら、名乗って
申し込みをして下さい。代金は、切符が取れたのを確認してか
ら払い込むのがいいでしょう。
重要事項をもう一つ。私の場合は格安航空券を手に入れよう
とするとき、必ず旅行社まで出向きます。雑誌記載以外の切符
があったり、目の前のコンピューターの画面で各航空会社の空
席情報や接続時間が分かったりしますから。
航空券とともに「渡航手続き」費用や「海外旅行保険」の加
入などを旅行社から勧められます。その時、「出入国手続き」
は「自分でしますから」とおっしゃってはどうでしょうか。費
用を省くのはもちろんですが、いやしくも自前で外国旅行をし
ようとする人はこれくらいのことを他人まかせにしてはいけま
せん。「ビザ」の必要な国は数少ないのですが、この申請手続
きに限っては旅行社にお願いするのがいいと思います。「海外
旅行保険」の加入も(次の項に書きますが)簡単に「はい、そ
れにします」と決めないほうがいいと思います。
★「海外旅行保険」は、どの保険会社でもほとんど同じ条件で
す。(全く同じと言ってもいいのですが、私が問題にするよう
な入り方をするとき、その差異が明らかになります)。(ア)「バ
ラ掛け」の申し込み用紙を貰い、何にどれだけ保険を掛けるか、
細かく吟味する。(イ)「命」、「病気」と順々に吟味してゆき
ますが、「携行品」のところに注意。現金やトラベラーズ・
チェックは保険の対象にはなりませんから、あなたが携行する
品すべての値打ちはどれくらいか推定してください。(私たち
はどちらか一人が三十万円ほど入るだけです。カメラの他少々
を保証するだけですから)。「救援者費用」も、急あるときに
来てもらう人にそれぞれ五十万円も備えてあればいいでしょう。
こうしてすべての項目を吟味して掛け金を決めます(今回のド
イツ旅行では、二人の掛け金の合計は6,080\でした)。
★「旅行一件書類づくり」。旅行する自分達にも、また留守を
頼む人にも何かある時の必要事項のすべてを、一枚の用紙に記
載します。(わが家は、私たちと子供三人がそれぞれ同じコピ
ーを持つことにしています)。
★「荷造り」、つまり「持ち物」ですが、 大別して、「容器」
から言えばスーツケース、リュック、ウエストバッグでしょう
か。「内容」から言えば、まず衣服類。これはどう少なくする
かが課題です。肌着は各二着(ほんとうは一着でも構わない)。
上衣には長袖を含めること。レインコート。 カメラ・ビデオ・
ノートなど記録用具。 お金(次の項で書きます)。 地図・
磁石・ガイドブック・
★「お金」は現金・トラベラーズチェック・キャッシュカード、
で持っていけばいいのですが、予算をおおよそこう立てます。
滞在日数 x(宿泊費+食費)。(わが家の場合、ヨーロッパな
ら二人で宿泊を一晩10,000\、食費一日を5,000\とします。そし
てこれは随分ゆとりのある予算なのです)。予算を立てたら、
予算の半額はトラベラーズチェック、同じく予算の半額を現金、
同じく予算の半額をキャシュカードにします。(?。そうです、
予算の150%を携行します。はい、もちろん残して帰ってきます
よ。)使うのはまずキャッシュカードから、次いで現金の順で
す。(わが家の場合は、行く前にcitibankの普通預金に入金し
ておき、これから使っていきます。トラベラーズチェックは使
わずに持って帰ることになる場合が多いです)。(現地で換金
するとき、業者をよく較べるとどこが有利かわかってきます。
ここで問題、有名銀行でも交換レートがよいとは限りません。
外国で比較するとある国の銀行は手数料が異常に高いのですが、
さてどこの国の銀行でしょうか。答えは残念ながら言いたくあ
りません。私が一番好きなのはcitibank、次いでその国の交換
業者を比較しながら利用します。)
★「出発」。旅行社で示された通りの場所・時間を間違えない
ように行きます。チェックインして荷物を預け、搭乗券を貰い
ますが、席に注文があれば遠慮なく言います。例えば「禁煙で
窓側」とか「通路側でトイレに近いところ」など。トランジッ
ト(乗り継ぎ)のある場合、「荷物は行き先までダイレクトに
行きますか」などと確認すること。(機内にはかなりの物が持
ち込めますから、最近のわが家は荷物を預けないようにしてい
ます。空港での身の処し方が楽ですから)。
★「出入国」。出発空港に「日本国」出入国の書類があります
から、分かりやすく記載すればよろしい。到着国の「入国」書
類は、機内で配布されます。書類が全く分からなかったり、書
き方が分からないときは、スチュワーデスに「日本語(英語)
のはありませんか」と分かる書式の用紙を求めたり、書き方を
尋ねたり、不安なら書いた後の点検・確認を求めたりすればよ
ろしい。
★「機内の情報」。外国の航空路線では機内放送などが分から
なくて不安になったりします。でも、その国の言葉の放送の他
に必ず英語の放送があります。またそれが分からなくても乗客
の中にはたいてい親切な人がいるもので「様々の手段」で教え
てくれます。乗務員に尋ねれば、分かるように努力してくれま
す。また特別の事柄以外は、どこかに「サイン」があるはずで
す。
★「相手国入国」。着陸後、機外の空港構内を進むとき、「乗
換え(乗り継ぎ)」か「入国」か、間違えないようにしましょ
う。乗換えなら「TRANSIT」、入国なら「IMMIGRATION」とか
「(出口)EXIT」などと表示され、「入国査証(IMMIGRATION)」
にたどり着きます。列を成していましたら、どの列に並ぶべき
かよくみます。ゲートが「外国人用」「ビジネス入国用」「帰
国者用」などと分けてある場合あるからです。順番がきたら素
直な気持ちで自分を観察して貰いましょう。吏員の質問がある
とすれば「目的(観光ですか)」「滞在日数」などについてで
す。
次にベルトコンベアで荷物を受け取ったら、その先に「税関」。
そこでは、次のどれかになります。(A)何も言わないで通してく
れる、(B)「禁制品を持ってませんか?」「食料品を持ってませ
んか?」「ドラッグなど持ってませんか?」と問われる。(いず
れも『No.』と答えてください。『はい、持っていません』は日
本語の語法です。)
「そのバッグを開けて下さい。」と中身の提示を要求される。
(他人の持ち物は決して預からないこと。私の場合、今までに
二度、『出るとき荷物を持って欲しい』と頼まれたことがあり
ます。しかしこれはゼッタイにいけません。個人が責任を持て
るものだけを持って入国を許可して貰うのですから。(税関に
引っかかったらどうなるのか、よくは知りませんが、預かった
小さな包の粉で終身刑というのもあるみたい)。
★「空港から街(目的地)へ」。旅の最初の被害に見舞われる
確率が高いところです。気をつけましょう。 迎えがある時、
確かな迎えかどうかを、挨拶や会話で確認しましょう。 迎え
のないとき、客引きがタクシーやホテルを勧めます。が、知ら
ぬ顔して「INFORMATION」へ行くのがいいでしょう。街(ホテル)
へ行く迎えがなければ、タクシーか、あるいは鉄道、バスなど
の交通機関を利用することになります。 信用できるタクシー
でしょうか? いわゆる白タクではありませんか? 乗る前に
目的地までの料金を尋ねてみませんか?
行く先を確かめてから乗るバスや鉄道は安心です。乗客の誰
かに行き先や駅名を確かめながら、目的地まで旅の出だしを
「会話練習」で楽しみましょう。
★「宿」。予め予約してある人は、名乗ってチェックインすれ
ばいい。予約のない人は、あなたの書類に「ホテル候補」か、
あるいは「ホテルの多い場所」が記載してあるでしょうから、
次の手順でアタックします。
しかるべきホテルのフロントで、
「部屋(シングルルーム、ツインルームなど)はありますか?」
と問う。
「ある」なら、「風呂は? 電話は?」など条件を問う。
条件に叶えば、「見てもいい?」と、部屋を自分の目で確認す
る。
「OKです。で、いくら?」「朝飯付き?」、
それで納得できれば決めます。(私の場合は、いつ支払うの
か、門限はあるか、近くに気をつけなければならないことはな
いか、ホテルカードや街の地図がほしい、などと言います。)
宿に落ち着いたら近くを探索しましょう。駅や街のセンター
のINFORMATIONに出向き、地域を知ることに努めましょう。
銀行や両替や、利用航空会社の事務所など、所在を確かめま
しょう。リコンファームするには、電話番号が分かればいいと
する向きが多いようですが、私は出向いて行くのが好きです。
多くの場合は、電話番号は知っていても掛け方が分からなかっ
たり、掛かっても言葉がうまく通じないのでホテルのフロント
や誰か人に頼んだりしています(私もひとの代行をつとめたこ
とがあります)。でも、自分でADRESSと地図とで捜し尋ねてみ
ると、単にリコンファームに限らず様々な情報が得られます。
また街の様子も良く分かります。
★旅は「滞在」ですか? ここが「しばらく」の住まいですか
ら、台所、風呂、ベッド、家具など生活条件の吟味を、予め丁
寧にしてから決めましょう。
★旅は「旅行ですか?」 どんな宿にも旅の情報が備えられて
います。情報を得がてらフロントで話しましょう。旅程が改善
されますよ。
★「食事は?」国に依っても違いがありますが、一般的に朝食
つきが安心です。ゆっくりたくさん食べて(飲んで、そして出
して)その日の行動力を確かにするのが旅を充実させます。駅
付近のどこかでなんとかなるわさ、は、なんともならなかった
ときに惨めです。
★「安全は?」ここは私の場合、とっても大切。勇気のおあり
の方には参考にもならないでしょうが、私は妻にもなじられる
ほど用心深く振る舞います。
まず、予め読んだ数冊のガイドブックに治安についてどう記
載されているかを見ます。「A・Broad」にも引用されてますが、
外務省邦人保護課から「**~**年渡航自粛・観光旅行自粛発出一
覧」が出ています。これを尊重するのはもちろん、その他のト
ラブル多発情報にも過敏に対応しましょう。人の噂も大切です
し、現地の情報などはもっと大切です。
用もないのに路傍にたむろしている人に近づかない、思いの
外に親切なのはまず警戒、ものありげな旅行者の姿をしない、
等など。
パリの地下鉄で私と妻の向かいに座った二人の黒人婦人が、
私の妻のネックレースを褒めたので、「メルシー」といい気になっ
たら、「(それ、外しなさい)」。私はきっとなって「プルクワ
(どうして)?」と言い返したら、「(取られるヒッタクラレルから、
外したほうがいい)」
「(でも、あなた達もしているじゃないか)」
「(マダムは日本人ですから、危険です)」
やっとマダム・ノワールの好意・善意に気づいて、
「メルシー・ボークー.」心からお礼を述べた次第。
人から見える「自分」に敏感になりましょう。国名は伏せて
日本人のよく訪れる国で経験した人の話を並べてみます。
A、観光が終わって空港へ走る最終日のバスの中で、通訳兼ガ
イド嬢が「日本人のみなさん、本来ならあなた方は帰宅する
お金以外はすべてここに置いていくべきなのです」
B、英語で「(あそこは空港を出たら様々親切な人がいたり、
申し出があるでしょうが、いずれもイエスを言ってはいけません。
何も言わないか、ノーだけを言うのが正しい)」と。
C、ある国の旅行代理店で「迎えは依頼してありますか?そう、
いけませんねえ。空港の辺りがいちばん危険ですから、必ず
誰かを頼んでください。」そして、(わたしどもで手配しま
しょうか?)とは言わなかった。
D、「あそこは昼間はいいのですが、暗くなるとドラッグの売
買で人が立ちます。外出には向かないです。」
E、マーケットの中で、理由もなく少年にわめかれて、なんだ
この野郎。すると少年は傍らを差し示す。見ると男が入れ墨
の背中を見せて座っていた。(買わないで通れると思ったら
間違いだぞ)とのディスプレイ。
★「言葉は?」多少は研究して行きたいもの。流暢なことばで
なくとも、およその必要度に応じた英語が欲しいものです。
すべてボディーランゲージでいい、とおっしゃった方があり
ますが、私は賛成しませんね。
★「こんな工夫」をしています。
その1。巻末には今回の使用した外貨換算表があります。パソ
コンで訳なく作れます。円・ドル・相手国の通貨、及びもしか
すると(途中の降機などで)関係があるかも知れない通貨も含
めておいてはどうでしょうか。通貨のレートは、株屋さんなど
で新聞を見せてもらうのがよろしい。
その2。うまく通じないかも知れないという不安が常につきま
といます。そういう事態に備えてカードを作ります。この項末
にコラム風に示したのは、私がフランスへ行った時のものです
が、幸いにこんなのを作ると、その時の印象が記憶に残るので、
カードは掌に握っていただけで見なくてもよかったという経験
をしました。
★「旅の記録」。カメラはもちろん結構です。携帯しましょう。
ビデオは臨場感が豊富で、再現力は抜群です。また疲れていて
も宿では日記を付けましょう。拘らない感想は、後日、様々の
見聞を甦らせます。
★「触れ合い」。道を尋ねる、物を買う、品物の有無を尋ねる、
車中で話しかける、道端の人に挨拶して話しのきっかけにする
等などは、異国の見聞を思いがけなく多彩にします。「そこ」
は日本ではありません。周囲の人たちは、黙っていたり素知ら
ぬ風をしていても、実は「異国びと」に通常異常の関心を持っ
ています。
迷惑にならないことなら甘えましょう。私の経験では車中の
会話で目的地を増やしたり変更したりしたことがあります。
用心を忘れず、かつ友好的な接し方が旅を有意義ににするの
ではないでしょうか。
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