南インド1


 ナマステ! インド最南端のカニヤークマリ(コモリン岬)は、南インドのヒンドウ教の最大の聖地の一つでもある。 アラビア海、インド洋、ベンガル湾が集合する海域である。コモリン岬の太陽は、海から昇り,また、 海に沈んでいく。
 この地を巡礼で訪れる人々は、この岬の沐浴場で身体を清め、 処女神クマリを祀るカニヤークマリ寺院で敬虔な祈りを捧げる。2000年の幕開けは、この聖なる海で、十何万ものヒンドウ教徒の人々と共に迎えた。 人、人、人、白い布で身体を纏った人々の群が、薄暗い闇の中で、一枚の大きな白い布を広げたように、海岸を埋め尽くし、インド洋に昇り来るご来光を待ちわびる。


 家族ずれで訪れる人々も多い。インド全国から汽車やバスを乗り継ぎ、何日もかけて、この聖地にやって来る。 コモリン岬の東方には、偉容を放つ聖人テイルバッルバルの立像が、紺碧の海の中から巡礼者を見下ろしている。その向こうには、哲人ヴィヴェーカーナンダを祀るロック・メモリアルが浮かぶ。
 紺碧の海洋は、大きな白いうねりとなって、この小さな岩にとめどなくうち寄せる。この島を訪れる人々は、インド洋からアラビア海に向けて、航海する船にのっている錯覚にとらわれる。岬には白波がうち寄せ、大きな葉を広げた椰子の木々は、キラキラと銀色の陽光をはねかえす。その向こうには寺院が白い顔をのぞかせる。
 強い日差しを避けて寺院の影で休む巡礼者たちには、紺碧の海の上を渡ってきた潮風が、うち寄せる白波の心地よい響きをのせて、例えようもようのない安らぎをとどけてくれる。インド南端の聖地で、巡礼の人々と至福の時を共有している一時をじっくりと噛みしめる。


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