蝶でみ

2.Key and Scale

調と音階



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さてさて…はやいところ、なにかをやってみたいところではありますが…もう少し、基礎をやっておきましょうか。ホントに基礎だけです。ここで理論だけを続けるのは本末転倒ですし…そんなの、市販の本を読めば済むことですからネ。

曲を作る上でもっとも大事なことの一つは、『調』です。短調、長調くらいは聞いたことがありますよね?そう、聴いてて楽しいのが長調、悲しいのが短調です。…乱暴すぎますか?では、ドから始まってドで終わるのが長調、ラから始まってラで終わるのが短調です。――これも、ラフすぎますねぇ。では、厳密に云うと、そのスケールが『全全半・全全全半』という並び方(前章を見てくださいね)をしているときは長調、『全半・全全半・全全』という並び方をしているときは短調となります。見てみましょう。
長調 ハ長調サンプル(.mid、1KB)
短調 イ短調サンプル(.mid、1KB)
上が長調のスケール、下が短調のスケールになります。上の調はハ長調、下の調はイ短調です。

ところで、スケールってなんでしょう?カンタンに云うと、曲中、オタマジャクシたちは通常、その7つの音だけを行き来する、その基本の7音のことです。日本語では音階といいます。例えばハ長調なら、メロディもコードも基本的に『ドレミファソラシ』の上だけを行き来するのです。もちろん進行によって#や♭がついて外れることはままあるわけですが、とにかく、この七音がその曲の基本となるのです。

そして、そのスケールが『全全半・全全全半』なのか『全半・全全半・全全』なのかで長調か短調かがきまり、そしてその最初の音、図の上ならド(ハの音)、図の下ならラ(イの音)によって、ほげ長調とかほげ短調とかいうのが決まるわけです。

…じゃあ、もし、上の『ドレミファソラシド』を、『全半・全全半・全全』に変えてみたら?

グッドクエスチョンです。やってみましょう。

ハ短調 ハ短調サンプル(.mid、1KB)
こんな風になります。最初のハ長調と比べると、ミ、ラ、シが半音ずつ下がって、結果として『全半・全全半・全全』になりました。そしてこのスケールのために使われる鍵盤は、白鍵ばかりでなく、黒鍵も必要となり、それは図の青い部分になります。

これは、『ハ短調』です。最初の上の絵と同じく、『ハ』の音から始まっているにもかかわらず、聞いてみると悲しい感じがします。つまりこれは短調なんですね。この場合なら、メロディやコードは『ドレミ♭ファソラ♭シ♭』という7つの音(イロハで云うと、『ハニホ♭ヘトイ♭ロ♭』になりますね)の上を行き来して、そして結果として『ラシドレミファソラ』と鳴っているように聞こえます。(『移動ド』の話を思い出してください)

そして、これが移調の概念になります。『キー』と云った方がわかりやすいですか?カラオケで、声が高すぎて歌えないとき、『キーを下げ』たりしますね。あれはこんなふうに、『ドレミファ…』もしくは『ラシドレ…』の関係を保ちながら、全体を上げ下げしてるんですね。上の図で、イ短調とハ短調を比べると、『全音+半音』分だけハ短調の方が全体的に高いわけです。

そんなわけで、『どの音から始まるか』で12種類、『それが短調か長調か』で2パターン、合計24の『ほげほげ調』が存在します。…でも、最初のうちはあまりややこしいとイヤになるので、とりあえず、長調なら『ハ長調』、短調なら『イ短調』に絞って見ていきましょう。これだと使うのは白鍵だけだし、『固定ド』と『移動ド』が一致するので、少しは解りやすいでしょう。#が幾つ付くと何調になるというのは、ここでは宿題にしますね。興味があったらその手の本を読む、程度でいいでしょう。
でみ は こんらん した!!
では、『曲というのは、基本的に決められた7音の上を行き来するものだ』ということが解ったところで、もう少しスケールについて掘り下げて見てみましょう。

その曲が長調の時は、メロディやコードは、ハ長調の図で示したように、#も♭もつかない『ドレミファソラシド』の上を行き来するということを云いました。これが、短調になった場合、少し違ってくるのです。

自然的短音階 まず一つ目は最初に示したイ短調の音階です。『自然的短音階』と云います。サンプルはイ短調のそれを聴いてください。
わりと普通…ですね。というか、ちょっと物足りない気もしますね。
和声的短音階 和声的短音階サンプル(.mid、1KB)
次にこれです。これを『和声的短音階』と云います。『白鍵しか使わない』と云ったくせに、ソに#が付いてますね…まあ、ウソつきという前に、聴いてみましょう…なんだか、一気に悲しさが増した気がしませんか?
旋律的短音階 旋律的短音階サンプル(.mid、1KB)
さらに、こちらです。『旋律的短音階』という思わしげな名が付いています。今度はファにまで#が付いてますね。聴いてみると、スムースな流れで、かつ悲しい感じがします。『旋律的』と謳うのもわかる気がしますね。

ところで、この旋律的短音階、上がってくるときは図のようにファとソに#が付くのですが、『下がるときには#が消えて、「ラソファミレドシラ」となる』と説明してある本が多いです。確かに、そうなのですが…ワタシは、こだわらなくてもいいと思っています。というか…それを決めるのは、自分、ということでいいんじゃないでしょうか。曲調や雰囲気で、自分が思ったとおりに曲を書いて、その結果が過去の慣習を破っていても、それはそれでOKじゃないかなと。…芸術に、絶対なんて言葉はないわけだし、逆に云えば、ヒトと違うことやってナンボ、みたいな部分もあるわけですからネ。

さて、どうしてこういう風に#が付いちゃったりするのかというと、あとで述べるコード進行に絡んでくるからなのです。V度のコードからI度のコードに終止するとき、V度のコード中に、スケールにない音、つまり『ソ#』が入ってくるから、こんな風に動いてしまうのです。――何を云ってるのかわかりませんね。今は『ああ、そういうものなんだな』と思ってください。これについては、またコードの所で説明しますからネ。

さてさて、こんなふうに、短調の場合は、その曲の流れによって、ファやソが半音上がることがあるということがわかりました。でもこれは、理屈というより、普通に創っていくと自然にそうなっていくのです。今はわからないかもしれませんが、これはわりと簡単な考えだと思うので、すぐにわかるようになります。

ここまででわかったのは、
  • 曲は、ある並びの7音の上を行き来すること
  • その7音は、大きく長調と短調とにわかれること
  • その全体が上下に動くのが移調であること
  • 短調には、いくつかのパターンがあること
ですね。
さて、ここでもう一つだけ、覚えておくと便利なのがあるので見ておきましょう。
ペンタトニックスケール
(1)はド(ハ)から始まってるのでハ長調、(2)はラ(イ)から始まってるのでイ短調のようですが、おタマの数がさっきと比べて少ないですね。5つしかありません。(一番後ろは、最初の音のオクターブ違いなので、最初の音と同じと考えてください)

なにが足りないのでしょうか。じ〜っと見てみましょう。じ〜〜〜っ………(1)は、ファとシがいませんね。(2)は…(2)も一緒です。ファとシがいません。

この、『ドレミソラ』だけで構成されるスケールを、ペンタトニックスケールと云います。『ペンタ』は『5』を表す言葉です。(ペンティアム、ペンタゴン…どちらも『5』に関係していますね)おタマが5つだけなのでこう云います。(これに対して、これまで見てきた7音で構成される音階をヘプタトニックスケールと云いますが、この言葉は別に覚えなくていいです)このペンタトニックスケールは、実に色々なところで使われるのですが、代表的なところではロックでしょうか。少々強引に進めても大概合うので、知っていると便利です。

ワタシの作品では…そうですね、いつかどこかでの二ループ目、メロディを挙げてみましょうか。(原曲は変ロ長調、つまりシ♭がドに聞こえます)
いつかどこかで・二周目
聞こえかたとしては、『ラドドラドラドレ ーレドレッドレミ ーーミーミレレ ーーレドーーーー……』です。ファとシが入っていませんね。こんなふうに、ドレミソラの五音というのは大変結びつきが強く、その音がコードから外れていても合っているように聞こえることが多いです。実際、上のメロディでも、赤で示したソの音は、コードから外れた音なのですが、そんなに変には聞こえませんよね。

短調の場合も同じです。例を聴いてみましょう。曲の最後、『ジャジャジャン♪』と鳴る所に注目(注聴か?)して下さい。
ミソラ♪(.wav[MP3]、26KB)例1
ファソラ♪(.wav[MP3]、27KB)例2
例1の方が断然カッコ良くないですか?例2はなんだかなよっとしてますよね…。1は『ミソラ』、2は『ファソラ』と鳴っているわけですが、こんなふうにちょっとしたところにでも使えます。かなり便利です。――下の譜はおマケで、キーは無視で移動ド、アメリカで放送されているポケモンのテーマソングの一部。元の曲はロック調の曲です。参考まで。
POKEMON THEME

さて、これまで調と音階について見てきました。もちろん、まだまだ説明してないこともありますし、ここで出した以外の音階もたくさんあるのですが、それは応用の範囲ですから、ペンディングとして、次に進みましょう。
ペンタドラゴンでみぃ
こらむ

四七抜き音階

『金魚〜え〜金魚っ』
『竹や〜竿竹っ』

どちらも日本人にはおなじみのメロディですね。…え?トーフ屋のラッパなら知ってる?今 トーフ屋はどうでもいいのです。…ん?知らない?う〜ん……もう最近は こんなの、聞かなくなっちゃいましたもんねぇ。ちょっと寂しかったりもしますが… とりあえず、メロディを載せてみましょうか。
金魚〜 竹や〜
両方とも、ミ、ソ、ラの音だけで構成されていますね。

実は、こんな、日本に昔からあるメロディというのは、以下のようなスケールに 基づいて作られていることが多いのです。
ヨナ抜き音調
ドレミソラド、四番目の『ファ』と七番目の『シ』が抜けていますね。だからこの 音階を『ヨナヌキ音階』と云います。…ん?どこかでみたスケールですね… そうそう、上に書いてあった、ペンタトニックスケールとまったく同じなのです。 日本古来の音階と、ロックの音階が同じなんて、ちょっと不思議じゃないですか?

上に書いたスケールは長調の場合ですが、短調でも同じことが云えます。
ヨナ抜き音調(短調)
この場合だと、『レ』と『ソ』が抜けてます。こちらは上で紹介したペンタトニックとは 少し違いますね。(でも、これも五音で構成されているからペンタトニックには違いない のですけどね)

――これらのスケールは、あるジャンルで頻繁に聞くことが出来ます。なんだと思います? ――実は、演歌なんです。演歌には、このスケールが頻繁に登場します。一度機会が あったら(あるのか!?)よく聴いてみてください。すぐわかると思います。

とりあえず、すごくカンタンなものですが、サンプルを作ってみました。演歌っぽいで しょう?
長調・演歌風(.mid、3KB)長調・演歌風
短調・演歌風(.mid、3KB)短調・演歌風
こらむ

二六抜き音階

ヨナヌキの話が終わったところで、下の音階を見てみましょう。
二六抜き音調
今度は、二番目の『レ』と、六番目の『ラ』が抜けています。ではこのスケールで作った サンプルを聴いてみましょう。

ユンタ風(.mid、2KB)

…なんとなく沖縄っぽくないですか?そう、これは『ユンタ』の音階なのです。

まあそんなわけで、何が云いたかったかというと、ぱっと聴いて『あっ、これは インドの雰囲気がする』とか『なんかブルース』とか感じるときは、たいてい、 そこには特定のリズムや音階がある、ということです。ひっくり返せば、あなたが ある特定のジャンルの曲を創りたいな、と思ったら、サンプルをたくさん聴いてみて、 そしてそこからその曲独特のリズムや音階を割り出し、それにそって創ればらしくなる、 ということです。ユンタでもロックでも(ペンタトニックはその一つですね)カンツォーネ でも……必ずそこにはなにがしかそれを特徴づけるものがあるのです。それを見抜く 力を養えば、あなたはまた一歩、偉大なる作曲家に近づけることでしょう。


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