清澄な風景画「ニュージーランド」

                                    背景は、テカポ湖













    








☆11☆ 冬を知らない生活風景  ☆




☆ 私の命はあと何年あるのだろうか。もちろん私には分からな

 いのだが、これまでにも何度もそれを予測をしようと試みたこ

 とはある。年金や保険を、どうすれば有利に利用できるかとい

 う問題を解明しようとすると、必ずこのことを考えることにな

 るからだ。



  そして結論はいつも「二元連立方程式に与式が一本しかない」

 のだった。だから仮定でしか結論は推定できない。年金は長生

 きほど得、保険は短命ほど得なのだ。



  話しは反れたが、元気に生を楽しむのはあと十年ほどだと思

 っている。つまり七十までだ。それまでの月日を有効に、しか

 も納得できる使い方がしたい。



  ここ三重県の鈴鹿で畑をし旅行を試みて使いきるのもいいが、

 未知の場所で新鮮な人生を開拓するのもいい。 こんどのニュ

 ージランド滞在は、<ここに住んでみようか>と思わせるもの

 があった。理由はさほど論理的ではないので、思わせるに至っ

 たと考えられるものを記号を付けてここに列挙してみようか。



  A、前項に述べたように自然が大事にされている。つまり私

 のイズムに合う。



  B、文明が物量主義、単純便利追求主義ではない。



  C、生活をエンジョイする施設が多く、人の生活観に「エン

 ジョイ」が根付いている。



  D、かつて日本にもあったが、仮に知らない同士でも挨拶な

 ど物を言い合う人情がある。



  E、物価が安く、少なくとも現収入と現レートで予測すれば、

 生活が楽だ。



  F、最後に、そして一番の魅力は、日本の冬が夏であること

 だ。



  私がどれほど異国を愛して惚れ込んでも、多分、私は今私が

 愛する畑を見捨てることはできないだろう。予測だにしなかっ

 たパラダイスを外つ国(トツクニ)に見つけて、駆け落ちみた

 いに移住したと仮にしても、日夜、この畑を思い、<今ごろ梅

 が、柿が、イチジクが>と恋しがるに違いない。夜中にふと目

 覚めて、<あの葱の後に何が作ってあるかなあ、荒れたままで

 放置されているのかなあ>、などと悔やむに違いない。



  だから畑とは「別れない」と決めた上で、冬の期間に限って、

 冬作を省いて、異国の生活を楽しむのがいい。またここの「鈴

 鹿おろし」なる冬の風は、純木造のわが家には厳しい。だから

 寒気を避ける贅沢も悪くはない。



  冬のない「くらし」への旅立ちをしよう。



  私は、三週間の滞在の後半、そのことを考えていた。



  ホーム・ステイのジュンとピーターは、そういう私たちの気

 持ちを察してか、売り家などがふんだんにあることを時々示し

 てくれたし、彼らが家族ぐるみでつきあう友人へも、私たちを

 紹介し、仲間に入れ、この世間での人づきあいを示してくれた。

 だから私たちは今や孤独ではない。



  住まいは、しかし借りるのがいいのか、買うのがいいのか、

 少し迷いは残る。



  滞在も終わりかけの頃、私たちは散歩していて、ある大きな

 屋敷風のそばを通りかかった。植え込みは深く、住まいは覗い

 ても見えなかった。門まで行くと、そこにある種の「学校」で

 あると示されてあったので、私たちは奥を窺い窺い進んで行く

 と、建物があった。



 <何だろう>と近づくと、中から人が出てきて、頼みもしない

 のに招じ入れた。陶芸教室だった。ロクロを見せ窯を示した。

 「いつでも加わってください」と、参加案内のプリントをくれ

 た。



  次いで中年婦人が現れ、自分はこの屋敷の持ち主で、こんな

 文化教室にいくつかの棟を貸している、と言った。



  ちょうど「ペインティング」教室がされていた。



 「中を見てもいい?」と問うと、

 「待って。先生に聞いてみる。」と言い、すぐ、

 「どうぞ。構わないそうよ。」と入れてくれた。



  ハーブ教室、絵画教室、習字教室と数種類がある。各講座と

 も最高人員十四人で十週単位で三千円程度の受講料だった。



  ただ住むだけではない。こうして文化教室にも通い、人づき

 あいもし、自然も観賞する。そうすれば、私は物を書いて自分

 に納得のいく年月を送ることができよう。



  いま、私なりにたどり着いたこんな夢をやっと持つことがで

 きた。実現には、大きな勇気は要らない。ちょっと行ってくる

 か、ぐらいの気持ちで十分だ。



  一九九五年の冬から、私は殻を脱ぐ。

                              ☆

☆ ☆   あとがき  ☆




☆ 人との触れ合いの美しさは、いわば絶妙の宝である。三週間

 の価値ある時を持ちえたのも、つきあっていただいた人たちの

 おかげであった。



  ロングステイクラブでお話しを聞かせて下さってから関西空

 港でお別れするまで、リーダーの菱田さんご夫妻には、私なぞ

 からは測り知れないほどのお世話になっている。各自が責任行

 動する者同士の旅だからと念じては、なるだけ厄介をお掛けし

 ないように努めたつもりでも、リーダーには、多分、すべてに

 渡って不断に心配をしていただいたに違いない。



  出発に先立つある日、電話したら、話しのついでに菱田さん

 は、

 「現地との連絡でファックス、八メートルを送りました」とか

 言われた。



  参加予定者に細部にいたる事前注意や準備物を指示し、一行

 を迎える現地を整えるまで、大変な質と量のご準備であったは

 ずだ。



  現地では未熟な一行から目を離さず、ジャパンナイトを準備、

 かつ成功に導き、清澄な自然観賞を演じてもくださった。だか

 ら、帰国の朝から奥さんが体調を崩されたのも、ひとえに責任

 感の故だったのではないか。



  リーダーご夫妻への感謝の気持ちに加えて、同行の士にも厚

 い友情に感謝したい。



  滞在中のある日、一人の方とこんな話しをした。



 「今回の仲間って、いいなあって思っています。かつて参加し

 た十日をこえる海外旅行では、必ずと言っていいくらい、もめ

 事があるんです。でも、今、私たち、とってもいいオツレさん

 だもん。」



  思えば全国からの教師の団体で欧州旅行をした時、三十前の

 女性が、同行女性から孤立したばかりか、帰路の飛行機に乗る

 や「どうして私は窓際に席がないの」と童女さながらにむずが

 って、スチュワーデスをはじき、同行者の誰もが隣席を拒否す

 る事態になって、鈍感な私がなだめ役を仰せつかったことがあ

 った。



  また中国の中域を旅した時、相部屋の七十前の二男性が、生

 意気だ、エラソウだと口論して、一度は仲直りしたのに、陶器

 の町、景徳鎮のホテルで、ビールを嗜みながらのカラオケ談義

 から、バカモノ呼ばわりが爆発し、私たち夫婦がおろおろと宥

 める役にはまったこともあった。



  そういう経験から旅仲間にはいい人をこいねがう。



  今回、学友はけっこうそれぞれ個性をお持ちだった。それで

 ありながら旅慣れておられる、いいお方ばかりだった。にわか

 出来のグループとはいえ旧知の間柄に似たものを、どなたも持

 っておられた。そして私は今、この方はかような特技に秀で、

 かように好ましいと表現したくてたまらないのだが、実在の個

 人を狭い主観でとらえて表現することに、どうしても遠慮が働

 いてしまう。



  個人名を省いて書くが、ダンス大好きの方達の軽やかだった

 身の振り方、景色をペン画で絵はがき風にまとめる技をお持ち

 の方、寸暇を惜しんでこの地ならではの見聞を求められたお方、

 これを機会に人生の転機を志されるお方、どのお方も我が鑑

(かがみ)ならぬはなかった。



  また半世紀前の大戦に華々しい献身自殺を賛美したころの身

 にしみる悲しい体験を、彼方の氷山のようにそっとほのめかし

 てくださった方が、「大往生」(永 六輔著)を読むように貸

 してくださったり、どこでもいつでも新しい人との触れ合いを

 見つけておられるのを見て、我が行く末の向かうところについ

 て、抽象思考から脱皮するのを意識したりする。  



  各々がたに多謝するばかりである。



  なお、「手作り本」とは私の場合、ワープロ、プリンター、

 コピー機を使ってこの手で本に仕立て上げることを言っている。

 子供のころ、縄をなったり草履を作ったりしたのと同じ感覚で

 やっている。太さの不揃いな縄や左右が瓜二つではない草履を

 作ると「不細工やなあ」と言われたものだ。



   だが、あの頃もそうだったが、できばえを誇れる腕が持てる

 日を、今も夢見ている。

              (一九九五、二、十五)

                              ☆

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【 資 料 】


ョ「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「イ

、ニュージーランド LONG STAY プラン                           、

、                                            1994.11/7(月)〜30(水)  、

カ「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「コ

◎場所 クライストチャーチ

◎学校 シー フィールド スクール オブ イングリッシュ  Seafield School of English

(99 SEAVIEW ROAD, NEW BRIGHTON, P.O.BOX 18516 CHRISTCHURCH, NEW ZEALAND)

        Telephone:(03) 388-3850, Facsimile:(03) 388-4970

◎内容 11/9(水)〜 22(火)

 午前 英会話研修 午後 フリー、各種アクティビティー参加自由

 11/23(水)〜 27(日) 卒業旅行(マウントクック、クインズランドタウン、

               ミルフォードサウンド観光)

◎ホームステイ先

 MR.MRS Russell [4 Portnall place, CHRISTCHURCH]    TEL:03-383-1287

       ※(23歳の息子、猫。趣味:登山、ゴルフ、旅行、庭仕事、音楽)

        (学校まで バスで10分)  

◎同行者

   (省略ー原フロッピー中にあり))

◎行程 

 07/NOV鼓8:28ーーー9:02中川9:03ーー10:43鶴橋ーー10:50難波 南海・難波ーーー関西空港

    集合・航空券 受け渡し 「ユニパック」看板前  13:40

  国際線出発ロビー 4F 中央 団体受付カウンター (案内書類持参)

 Flight: 07/NOV 15:40 KANSAI=====(KE757)===SEOUL        07/NOV 17:30 

          07/nov 20:30 SEOUL======(KE663)===CHRISTCHURCH 08/NOV 14:15



          29/NOV 18:10 CHRISTCHURCH==(AN828)===AUCKLAND  29/NOV 19:30

          29/NOV 22:40 AUCKLAND======(KE662)===SEOUL     30/NOV 06:45

          30/NOV 10:10 SEOUL=========(KE724)===KANSAI    30/NOV 11:40



◎持ち物の用意

  ■日常用品 衣類(下着=パンツ3、靴下3、ランニング2、上衣=ズボン3、Tシャツ=半袖2 

       &長袖1、ワイシャツ2、セーター1、背広上下1、ベスト1、コート1)帽子、靴、

       草履、ウエストバッグ    寝具(パジャマ) 水着

       薬(目薬、バンドエイド、虫さされ)  リュックサック

       洗面具、化粧品 

 ■学習用品  辞書(英和、和英、E-E)、ノート、

 ■パーティー用品 ★白飯レトルトパック=6 ★キューリキューチャンちゃんパック=4

                ★しばづけパック=4 ★桜でんぶパック=4  

        ★日本酒1L紙パック=2 ★グイ呑み=6 

        ★筆 墨汁 用紙

 ■旅行記用品 ビデオ、カメラ、旅日記

 ■必携 パスポート(豊=ML1763754,啓子=ML1763755 ともに11 JUN.1995まで)、

    旅行保険(94/10/29加入、東京海上火災 証書番号 豊=KJ017804623-0

        啓子=KJ017804624-0)、電子手帳(住所録)、航空券、磁石、円ドル換

         算表、今回旅行一件書類 

      お金(トラベラーズチェック、豊=100、000\、啓子=100、000\ 

              現金=100、000\)



費用 概算 298,000円

    内訳  期間中の宿泊、食事、英語授業、卒業旅行の費用:138,000円

        航空券SQ格安券推定:160,000円

◎参加申込締切:9月20日(火)

◎申込・問い合わせ:(略)



    ニュージランド ロングステイ 計画表

  

八月例会 菱田 計画紹介

九月 十日過ぎ? 電話で申し込み

九月 二十八日 学校手続きなど 書類 受取            おわり



[日 程]

7/28(Thu)LSC定例会 NZ・LS体験入門旅行計画(菱田氏)

9/11(Sun)参加申し込み 9/28(Wed)入学手続き書類受領

10/3(Mon)学費払込 10/6(Thu)航空券代払込

10/6(Thu)LSC安田代表宛に誓約書(この旅は自己の責任)を送付 10/26(Wed)諸経

         費分担金送付

10/29(Sat)海外旅行保険加入 

11/2,3(Wed.Thu)パーティー用に箱の酒、ご飯、キューチャン、柴漬物、デンブ、グイ呑み、筆、

         墨汁等調達

11/7(Mon)鼓ケ浦8:14ーー9:02中川9:03ーー10:50難波 早昼(千日前) 

         南海・難波ーーー関西空港  13:40集合

          航空券 受け渡し「ユニパック」看板前 

         15:40 KANSAI=(KE757)=SEOUL 17:30 20:30 SEOUL==

11/8(Tue) ====(KE663)===CHRISTCHURCH 14:15   学校(Siefield Scool)到着  

         ホスト・ファミリーへ

11/9(Wed)午前 ジュンの案内でNew Brighton.午後City

11/10(Thu) 9:00-12:15 学校でオリエンテーション レッスン   13:30-15:30 Wool Spinning

11/11(Fri) 9:00-13:00 レッスン   13:00-17:00 Cristchurch  Sightseeing

11/12(Sat)One Day Trip(牧場。ワイマカリリ川でジェット・ボート。  

         昼食は鹿肉ステーキと牛肉ステーキ。

           Arthur's Pass。Otira  からTranz Alpine鉄道でGreenfieldまで)   

11/13(Sun) 午前 リッカートン高校庭のフリーマーケット 午後 旧大学の催し広場へ。

         夕刻 ホーム・パーティー

11/14(Mon) 9:00-12:15レッスン  午後「T & Ski」のFactory & Shop 土産を買う。

11/15(Tue) 9:00-12:15レッスン 13:00-16:00 Quilling

11/16(Wed) 9:00-12:15レッスン 13:00-17:00 Garden Tour  

         夕食に「てんぷら」を作ってご馳走。    

11/17(Thu) 9:00-12:15レッスン 午後 アッシュフォード社へ  

         夕食後 リッカートン地区クラブへ。帰路ジョージ宅に寄る。

11/18(Fri) 9:00-12:15レッスン  15:30-19:00 Japanese Cultural Presentation 

                          夕刻シティーへ ミュージカルを楽しむ。

11/19(Sat) One-Day Trip マルイア温泉(ジンギスカン 食べ放題と飲み放題)

11:20(Sun) 午後 年一度の集いのパーティーに伴われる。

         軽いスポーツ・ゲームとバーベキュー。帰路ジョージ宅に寄る。

11:21(Mon) 9:00-12:15レッスン    13:00-14:30 Maori Cultural Programme

11:22(Tue) 9:00-12:15レッスン 卒業式  16:00ホームからAir Port Lodge Mortelへ 

                                  夜 打ち上げ会(レストラン「倉敷」)

11:23(Wed)観光バスでテカポへ。「湖畔」で昼食  Mt.John登山 

        「Lake TEKAPO Alpine Inn」で夕食(バイキング形式、たっぷり満足)、同泊

11:24(Thu)Mt.CookからQueen's Townへ 

        「Maori Culture Dinner」で夕食(バイキング式)Mountain View Lodgeに泊。 

11:25(Fri)Milfor Soundへ 船中で弁当   

         夕食は「中華Lai Sing」,Queen's Town泊。

11:26(Sat)Christchurchへ、Air Port Lodge Mortel泊。

11:27(Sun)シティへ出る。午前 思い出橋そばでスケッチ、読書。

          昼食は旧大学の催し広場で屋台の串肉、ビーフン、チャーハン(肉を喉に詰まらせそ

          うになった。今後要注意) 夕食 ビフテキ・野菜 炒め・サラダ(自炊)

11:28(Mon)Botanic Garden 昼食 中華料理 

          散歩中に文化教室を発見、訪問、参加の誘いを受ける。

11:29(Tue)シティ(百貨店、集合店で昼食、スーパーマーケットで菓子類の土産を買う)

           18:10 CHRISTCHURCH=(AN828)=AUCKLAND 19:30

           22:40 AUCKLAND=(KE662)===

11:30(Wed)     == =霧のためプサンに不時着==SEOUL

                  10:10 SEOUL=(KE724)=KANSAI 11:40

    荷物を宅配に依頼 関西空港ー(南海・急)ー難波 

  昼食  難波ー(近鉄・特)ー津ー鼓ケ浦

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