「やきものたまご創生塾」が開講
萬古焼後継者を養成


 四日市市を代表する地場産業の萬古焼。最盛期から比べると技術者も減り、高齢化が進んでいる。そこで萬古陶磁器工業協同組合は、後継者を養成する機関を初めて設立。研修生七人は「二百五十年以上の歴史がある萬古焼を守ろう」と熱心に技術を学んでいる。


 萬古焼は元文元年、沼波弄山(ぬなみろうざん)が三重郡小向村(三重郡旭日町)に窯を開き、作品がいつまでも残るようにとの願いを込め「萬古」あるいは「萬古不易」という印を押し、世に出したことが始まり。「萬古」とはいつまでも変わらない永遠の命をもつ≠ニいう意味だという。


 生産量は美濃・瀬戸焼など次いで全国四位を誇り、特に土鍋や花器は全国シェアの七割以上を占める。


 工芸品としても高い評価を受け、昭和五十四年に伝統工芸品の指定も受けたが、時代の流れとともに組合加盟社も減り、現在では約百社。


 技術者の高齢化や後継者の有無など、さまざまな問題が浮上。若手の養成が急務となり、同組合(渡邊昇衛理事長)は後継者を育成する「やきものたまご創生塾」を開講した。


 近隣の信楽焼や備前焼などは養成機関があるのに対し、萬古焼にはなかったため約二、三年前から企画を立て、県や市などの協力で今年の夏に実現。業界発展、未来の陶芸家誕生を願って活動している。


 研修生は男三人、女四人。来年の三月まで同市の県科学技術振興センターで基礎技術を身に付ける。同市をはじめ桑名、津市のほか県外からの研修生もおり、二十代から五十代と年齢層も幅広い。


 月曜日から金曜日までほぼ毎日、実技のロクロ成形を繰り返し。同じものを一日に四百個作るという。講義では、焼き物の仕事をするにあたっての必要な座学も学んでいる。


 来年三月には修了作品展なども行い、終了後は萬古業界で働く予定。


 講師を務める伊賀市の陶芸家・木村華陀さん(56)歳は「基礎は体で覚えてほしい。しっかり技術を身につけ、自由自在に作れる技術者になってもらいたい」と話す。


 研修生の野崎香織さん(23)=四日市市下海老町=は「補助をいただくなど、良い環境で勉強しています。感謝の気持ちを忘れず、技術をしっかり学びたい」。古川大輔さん(25)=宮城県石巻市=は「一度、地元で就職したが、陶芸をやりたくこの道て進んだ。多くの技術を学び、いろんなものをつくりたい」と、それぞれ希望に燃えていた。


(木下 英里)



H19.9.26 第299号

[バックナンバー]

[ E-mail:toukei@inetmie.or.jp ]