“学び舎”が温泉に転身
大紀町の旧阿曽小 憩いの場として好評
地元有志が“もてなし”



  思い出が詰まった学び舎が温泉に転身―。松阪市から約四十`離れた度会郡大紀町阿曽の旧阿曽小学校の校舎が、さる七月に温泉施設として再スタートした。地元はじめ県内外から愛好家などが入浴に訪れ、地元女性グループも“おもてなしの心”で軽食を提供。憩いの場として親しまれている。


 同町役場健康福祉課・上村公正課長(51)によると、阿曽温泉は江戸時代から自然湧出。昔は炭酸水や痔の治療にも使われ、温泉ホテルもあったが、空気に触れると酸化しやすく、赤茶けるので長続きしなかったという。


 長年、源泉の飛散を抑えていたが「せっかくある温泉を何とか利用できないか」と、平成十三年に町と個人所有者の間で使用権の契約を交わし、準備を進めた。


 ちょうどこの地区にあった阿曽小学校が、三年前に滝原小学校と統合されて廃校になり、地元から「小学校を壊すより使ってほしい」と要望があった。


 このため築約五十年の平屋建ての校舎を改装。黒板やオルガンなどの備品や廊下も一部そのまま残し、「レトロでゆったりくつろげる場所」に生まれ変わった。


 炭酸水素塩・塩化物温泉で、一分間に七十gが自然湧出、泉温は二十七・三度。室内浴場と玄関横には無料の足湯も設けた。


 オープンすると鮎釣り客や通りすがりの人を含め、一日平均百二十人が訪れるようになった。夏休みには帰省の人も訪れ、「子どものころが懐かしい」という声も。


 スタッフの野瀬和朗さん(61)もここで学んだ卒業生。「自宅も学校のそば。廃校で子どもの声がなくなり寂しかったが、温泉で活性化されてうれしい」と話している。


 利用者アンケートでも「落ち着く」、「素朴さがいい」と好評。中には「子どものアトピーが良くなった」という声もあるが、予想以上の利用者に「今後、洗い場の増設、露天ぶろ、サウナなど拡張していきたい」と上村課長。


 さらに、元気いっぱいの“おばちゃん”たちが温泉を盛り立てている。地元有志「阿曽温泉あすなろ会」が利用者に甘味やコーヒー、うどんなど軽食を提供。町の特産品も販売したり、季節の花や山野草を飾って出迎え、「メンバーとの会話が楽しい」と、何度も立ち寄るファンもいる。


 中村ひで代表(73)は、「お客さんの要望に応えた新しい食事にも取り組み、初心の“おもてなしの心”“優しさ”を忘れず、活動します」と話していた。


 営業時間は午前十時から午後九時まで。水曜日休。入浴料大人五百円、高齢者など四百円、小人三百円で三歳以下は無料。


 (問)TEL0598(84)8080


(内田 敬子)


H17.10.26 第269号

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