亀山市で震度5強を観測した先月の地震。周囲で被害がなかったため、すぐに忘れてしまった。以前に比べて危機意識が薄らいでいるかも。各地で頻発する地震にも慣れてしまったような気が…。そんな時、多気郡大台町弥起井の病院勤務、松本敏也さん(52)に出会った

 ▼平成十六年の台風21号豪雨災害。被災した旧宮川村の復興を願って音楽活動を続けている。松本さんはこの村で生まれ育った。「かつてない規模の災害に犠牲者も出て、信じられない気持ちだった」と当時を振り返る

 ▼趣味の音楽を生かして村の人をいやせたらと災害の翌年、CD「ふるさとの川」を発表。地元のコンサートや祭りで歌うと涙ぐむ人もいた。前作から二年七カ月を経て、二作目「ふるさとの風」を作った。清流宮川が徐々に元の姿を取り戻してきたと感じたからだ

 ▼「実家の近くの川にフタゴ岩は、子どものころによく遊んだ思い出の場所。災害で土砂に埋もれ、もうこのまま見られないのかと思っていたら、少し顔を出したんです」。松本さんはこう歌う。♪いつかまた必ず 甦ると信じてる 桜の花咲く頃に 君を連れて行きたい いつか夢見た懐かしい ふるさとへー。CDは「道の駅奥伊勢おおだい」事務所などで販売、売上金の一部は同町社協に寄付する

 ▼災害は当事者の心にいつまでも暗い影を落とすが、一方で大切なものを再確認し、思いを形にする原動力にもなる。松本さんの歌を聴きながら気持ちを新たにした。

(編集委員 福家 明子)

H19.5.9 第293号


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