松本好市氏(64)
 四日市社会保険病院院長
 四日市市羽津山町

医療と患者との信頼が大切



 平成十年、三重大外科助教授より院長に赴任。県内唯一の社会保険病院で、「安全な、ゆとりある医療・福祉の提供」と、保健活動による健康増進への貢献を図る。


 松阪市出身で、九人兄弟の末っ子。子供のころは、検事になって“悪”を裁くのが夢だったという。


 高校生のころ、十六歳上の兄が多気郡に松本医院を開業。看護師らも住み込みで働いており、晩ご飯はいつも大勢でにぎやかに食べていた。


 三年のとき、その兄が病気に。後継ぎを意識するようになり、自分も医学部に進んだという。


 三重大学医学部大学院・博士課程を卒業後、同大外科医として三十年勤めた。


 ベトナム戦争でまかれた枯葉剤の影響で、結合双生児として生まれた双子の弟・ドクちゃんの手術を十二年前、主要スタッフとして手がけた。


 人工肛門から自然肛門に戻すもので、一週間後には肛門から排便できるように。四週間後には、鈴鹿サーキットへ遊びに出かけられるほど回復したという。


 「メスを持って、人を切ることが許されるのは医者だけ」と、その責任を重要視する。


 責任が重く、仕事がハードな割に低賃金で、勤務医が足らない状況。院長として赴任以後、優秀な医者・看護師探しや患者らの意見を聞くなど、忙しい毎日。火、金曜は外来も担当している。


 平成十一年、大腸がんや腸の難病疾患などの専門治療を行う「大腸肛門病センター」を開設。糖尿病の増加により、糖尿病センターも昨年完成した。医師、認定看護師、保健師、管理栄養士、運動療法士らがチームを組み、生活習慣を指導改善する。


 「昔に比べ、患者は治療の選択肢が増えた。命令的ではなく、資料を用いて説明し、患者とのコミュニケーションを取ることが大事」と話す。


 院内に置いた意見箱を週に一度開け、月曜の管理者会議で目を通す。「笑顔と親切な気持ちがうれしかった」という感謝の文字に励まされ、やりがいや救いを感じている。


 「患者が理解して医療を受けるため、診療行為について十分理解できるよう話し合い、真剣に考える責務がある。安全である上に、医療と患者との信頼を大切にしていかなくては…」と話していた。


 運動が好きで、硬式テニス歴は約二十年。日曜には津スポーツセンターで汗を流す。


 津市に妻(57)と暮らす。長女(33)、二女(30)、三女(28)は結婚して独立。ほぼ毎日のように訪れる三人の孫たちに囲まれ、にぎやかに過ごしている。


(江川 智恵) 


H19.7.25 第297号


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