松生 幸一氏（６０）
松生卓球道場場主
津卓友会顧問
津市大園町
私財投じて競技の普及めざす
「継続は力なり」の精神で、競技者と指導者の立場で卓球とかかわり、昨年十二月に定年退職。〝第二の人生〟は私財を投じて津市半田池町に、卓球専門道場をスタートさせた。子どもからお年寄りまでの愛好家が毎日のように訪れ、「開けたのはみんなの協力と理解があってこそ」と、感謝している。
初めてラケットを持ったのは小学校高学年。中高とも卓球部に所属した。中でも津高時代の顧問・後藤裕文先生（故人）は、口出しするのではなく、温かく見守る〝無言〟の指導で「自分で考えること」を身に付けさせてくれた。全日本ジュニア、インターハイ、国体へ出場し、県高校選手権では単複ともに優勝した。
立命館大学在学中は競技から離れ、百五銀行への就職を機に再開した。しかし銀行内に部がないため他のクラブへ武者修行。
三十代になり、東海大会などで優勝。今度は「指導者になって選手を育てたい」と、銀行に女子卓球部を創部した。以後、男子部もつくり「自分の型にはめず個人の能力を伸ばす」を指導方針に、地元出身の選手を育成した。
やがて女子は、全日本実業団卓球選手権大会・軟式団体で九年連続ランキング達成。男子も平成十二年度全日本実業団卓球選手権大会軟式団体で優勝するなど、全国レベルに。自身も全日本軟式卓球選手権大会フィフティの部で全国優勝した。
その一方で、十五年前から〝地域貢献〟として地元老人会に銀行体育館を開放して指導。さらに小・中・高校生も集まり、人数が増えた。
定年を前に「長年続けてきた卓球を地域に根付かせ後進の育成ができたら…」と道場の開設を決断。妻ちえ子さん（五五）も了承してくれ、受け付けや業務、掃除などの裏方で支えている。
費用は退職金や株の売却金などでまかなったが、設計では一級建築士で卓球をする弟・純明さん（五三）が手伝い、父兄、学校の先生、卓球協会、地域らも支援。備品の提供などもあった。
足腰に負担の少ない床や、世界大会で使用する卓球台を十二台、プレーを勉強するための大型液晶テレビ、自習室のほか食堂なども完備、合宿もできるほど。
これまで通りジュニアには、技術だけでなく、あいさつやほう（報告）れん（連絡）そう（相談）など、人間形成に必要なことも徹底。挫折に強く、人の痛みのわかる社会人になってほしいと願っている。
遠方から来てくれる愛好家もおり、改めて道場の必要性を感じている。
妻と二男・瞬さん（二五）の三人暮らし。長男・大介さん（二八）は、和歌山県在住。
（内田 敬子）
H18.7.12 第280号
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