四日市市川島町
(株)日本総合施設 代表取締役社長 
里中俊雄 氏(51)

地域貢献も“事業の柱”



 「私たちの仕事は、電柱を立てたりケーブルを引くなど、地域住民にとって温かい印象の作業ではないのですよね。その分、まったく別の形で地域貢献できたら―」。電気工事業、都市型CATV(ケーブルテレビ)工事、交通信号機工事、電話通信工事業を中心に手がける一方、工事で出たケーブルの廃材を生かしたリサイクルにも着手。緑化活動に取り組むNPO法人の設立にも携わっている。


 四日市市の農家の長男。大学卒業後、有線放送電話の工事などをする会社に勤務。三、四年勤めたが退職、弟の秀郎さん(47)とミツバなどの水耕栽培を始めた。しかし、それだけでは生活の足しにならず、農業経験が豊かな父・末男さん(79)に栽培を任せ、前職場での経験を生かして昭和五十七年、電話工事を兄弟二人で始めた。


 最初は仕事がほとんどなかったが、声がかかれば愛知や岐阜、長野など遠方までも駆けつけた。「大手企業の孫受け、さらにはひ孫受け状態。少人数でもできる小さな工事を積み重ねていきました」と振り返る。


 二年後、(株)日本総合施設を設立。電話工事だけでなく、テレビの難視聴対策事業を。平成二年には(株)シー・ティー・ワイがケーブルテレビの本放送を始めたためその工事も請け負った。弟が以前、ケーブルテレビの工事会社に勤めていたためその経験が仕事につながったという。


しかし、ケーブルの工事中は作業車が交通を妨げるなど、人に迷惑をかけてしまう。何とかして地域に恩返しができないか―と考えていた。


そんなおり、趣味で花を育てていた妻の則子さん(50)が「町を花でいっぱいにしたら」と提案。これなら皆に喜んでもらえるかもしれない―と、知人とも協力してNPO法人・花里を立ち上げた。則子さんが副理事長を務め、寄せ植えやハンギングバスケットなど、ガーデニングを勉強。メンバーと共に各地区の市民センターや学校などに出向いて講習している。


 一方では、問題視されている業者の不法投棄や環境破壊を考え、廃材になったケーブルを細かくカットしたり、プラスチック、銅、アルミ、ほこりの四種類に分けてリサイクルする(株)クリエイトジャパンを設立。「儲けさせてもらった“カス”は、資源として有効利用しなければ。不法投棄などの問題は、工事会社側も対策を考える必要がある」と話す。


 今後は従来のケーブルから光ケーブルへ移行するのに伴い、材料の石英(ガラス)やプラスチック、鉄などを分別しなければならない。処理をどうするかが課題。二次製品の製作も考えているという。


 趣味を尋ねたら“仕事”との返事。「失敗したときに逃げてしまうのか、それともどう戦略を立てるか―と、葛藤もありますが、これは経営者ならではのだいご味です。家族サービスもしないとね」と話す。


 好きな言葉は「百尺竿頭進一歩(ひゃくしゃくかんとうしんいっぽ)」。追い詰められたときに勇気を持って一歩踏み出すこと。


 家族は父・末男さん、母・みや子さん、妻・則子さん、長男・祐介さん(26)、長女・祥子さん(25)、二女・真理さん(20)、三女・礼さん(18)。長男、長女、二女は独立。


(小寺 あかり)


H17.10.26 第269号


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