SCENE.KーII

           登場人物:ルシィ、タケル、アロウ
              場:泉の仙洞

もう1度きっぱりルシィは同じ言葉を繰り返した。
 「行けません」
 「…何を莫迦なことを」
 そうして、思わず呟いたタケルのその返事にくすりと笑う。
 「いつものこと、ですわ。わたしが莫迦なことを言うのは。…でしょう?」
 「ふざけてる場合か?!」
 「いつもはとんちんかんに真面目だって怒るくせに」
 「ルシィ!!」
 ジュリに怒鳴られるのは慣れてるけど、そういえばタケルに怒鳴られるのは初めてかもしれない。
 一瞬、びくりと肩をすくめてから、そんな風に数えてみて、ルシィは心の中でまたくすりと笑う。
 かばってくれようと彼と自分の間にパタパタと飛び出して来てくれたアロウを「大丈夫」と抱きしめながら。
 タケル、ジュリ、フィオ。
 この3人に出会ってから、いくつの「初めて」をわたしは知ることができたのだろう。教えて貰ったのだろう。何にも知らなかったわたし。
 何もかもが不思議でわからなくて色々なことが難しくて…だけど面白くて楽しかった。
 それは「みんな」が一緒だったから?
 その答えは…1人になったら、きっと解るのね。ここでさよならを言った後で。

Text:Ririko Misato
Cut:Asami Sakakibara