果物の種をまくと、同じ植物が育ちますが、
元の品種になることはありません。
ほとんどの場合、元の品種よりはるかに劣った別の品種が育ちます。
ところが柑橘類に限っては事情が異なります。
柑橘類のほとんどは、多胚性の種子を持つため、
交配しても両親の遺伝子を受け継ぐことはあまりありません。
一つの種の中に複数の胚があるため、受精していない胚が育つ確率が高いのです。
つまり、他の品種と交配しても、母親のクローンになるのです。
そのため柑橘類の種をまけば、同じ品種が育つ確率が高いのです。
少々の変異があっても素晴らしい品種に育ちます。
おもしろいのでぜひ試してみてください。
ただし実がなるためには、10年近くかかります。
おすすめは生垣のように植えることです。
ウンシュウミカンだったら、ちゃんとした実がなるはずですし、
中には素晴らしい品種が現れるかもしれません。
ちなみに、なり始めてからしばらくは、
樹勢がいいので皮が厚くなったりします。
▽今さらなりすぎ次郎
ミカンは多胚性ですから、ミカンとオレンジを交配しても、
ほとんどがミカンに育ち、交配は失敗してしまいます。
しかし、膨大な数のタネをまけば、いつかは雑種ができるかもしれません。
それを実際にやった人がいて、「きよみ」という品種が誕生しました。
交配から登録までに30年以上を費やしたそうです。
なんでも育種には、奥様も協力があったとか。
うちの嫁なんて、放置した苗はゴミ箱に捨ててしまうというのに。
ウンシュウミカン×オレンジ、こういった雑種はタンゴールと名付けられました。
この「きよみ」は、おいしい品種ですが、
味よりも重要な素晴らしい特長をいくつも持っていました。
種子が単胚性だったのです。
つまり「きよみ」を交配に使えば、誰でも交配ができます。
「きよみ」からは「でこぽん」という商品名でおなじみの「不知火」を始め、
「はるみ」や「せとか」など、多くの品種が作り出されました。
しかも「きよみ」は、単胚性に加えて雄性不稔でした。
交配どころか、「きよみ」の種をまけばすべてが新品種ということになります。
▽きよみの実生
ようするに、生垣みかんなら親品種のクローン。
生垣きよみならすべてが新品種ということになるのです。
さて「きよみ」を食べて、タネをまくことにしましょう。
最初はスーパーで「きよみ」を買っていたのですが、
ちゃんとした産地の「きよみ」には、ほとんどタネが入っていません。
日本でミカンと呼ばれている果物は、正しくはウンシュウミカンといいます。
面倒なので以下、ミカンと書きます。
日本のミカンのほとんどはタネがありません。
ミカンには花粉がなく、その上、稔性も低いからです。
受粉能力高い、他の柑橘類の花粉が付かないと、タネができません。
たとえば八朔や甘夏などが受粉能力が高いとされています。
真面目なミカン農家では、こういった柑橘類はミカン園の近くに植えませんし、
有名な産地ではこういったことが徹底されています。
名産地ではなく、もっと素人くさい「きよみ」を手に入れたいところです。
幸い、有機栽培という看板を掲げ、
自家製のいろんなカンキツ類を販売している方がいました。
さっそくその方の「きよみ」を2箱落札して食べてみたところ、
たくさんのタネが入っていました(笑)。
ちなみに、30個の「きよみ」に対して、タネがあった「きよみ」は3個でした。
入っていたタネは9粒、すぐに植木鉢にまきました。
2箱で、30粒以上のタネが得られました。
収穫できるのは10年後と言われていますが、
接ぎ木すればその期間を短縮できます。しないけど。
さて、私がまいた「きよみ」は、どんな品種と交配しているのでしょうか。
もっとも栽培が多いウンシュウミカンは雄性不稔です。交配はありえません。
問い合わせたところ、甘夏、八朔、伊予柑、文旦、ポンカンと、
ありとあらゆるカンキツ類を栽培しているとの返事がありました。
何と交配しているのかはわからないですね。
ちなみに我が家のキャバクラ農園だと、「せとか」は花粉がなく、
「はるみ」は花粉を持っています。
いずれにしろ、畑の真ん中に甘夏の大木が植えてあるので、
ミカンはタネだらけですが。
▽これはひどい