脳循環代謝改善剤の薬効評価は全て改善度なる評価尺度を用いている。最終全般改善度をもって「プラセボに比して有意に優れている」または「基準薬と同等」もしくは、「基準薬に比し有意に優れている」とされ厚生省の認可を受けている。
しかし、全般改善度の評価法の問題点は抗アレルギー剤、等における臨床試験でも採用されており、客観的で再現性のない評価法である事が指摘されている。その評価尺度は、「著明改善」「中等度改善」「軽度改善」「不変」「悪化」等の様に5〜7段階評価を採用している。治験担当医師により評価されるのであるが、その評価の「基準」について再現性のある規定がなく、全く主観的な評価法である。この事は、個別の評価項目についても同様である。
個別評価項目は精神症候、自覚症状、神経症候、日常動作障害等に大きく分類され、そのもとにさらに各個別評価項目が細分され合計数十項目もの多項目について評価されている。これら個別評価項目も同様それぞれで5〜7段階での尺度により評価されている。この様な方法での評価を数十項目についてそれぞれ評価し積み上げて、全般改善度評価をするのである。僅か数項目での「有意差あり」との個別項目の評価結果を総合すると魔法の箱の様に「全般改善度で有意差あり」との結論が導き出されてくる。
この様な評価法で、「全般改善度で有意差あり」との結論を持って厚生省の認可を受けているのである。ホパテを基準薬として厚生省が認可してきた5薬剤(バックナンバー参照)も含め全ての脳循環代謝改善剤の評価方法の共通した問題である。
ガイドラインによる評価の問題
アニラセタム(サープル、ドラガノン)に関しては、l987年の厚生省による「脳血管障害に対する脳循環・代謝改善薬の臨床評価方法に関するガイドライン」(以下ガイドラインとする)に沿って評価された最初の脳循環・代謝改善剤というが、その事に意味があるのであろうか。
われわれは、厚生省が認めた本薬剤の「効能・効果」との関連でその妥当性について検討したが、科学的に承認し得る根拠や妥当性を認める事はできなかった。ガイドラインに沿ったとされる試験は、プラセボを対照とした二重盲検比較試験であるが、脳梗塞、脳出血を対象としてl18施股による多施設での試験である。
割り付けは「4症例分1組(各組にアニラセタム、プラセボ2症例分)として無作為に割り付けた」とされるのであるが、本試験に見られる問題点を幾つか指摘しておきたい。対象疾患が脳梗塞であるにもかかわらず、本試験は脳出血をも対象とした試験となっている事、そのため脳梗塞での解析対象は総症例数の69%となっている事。ブロックサイズが4症例と非常に小さい事、しかも、施設当たりの症例数は、平均約2.4症例しかなくブロックが完了できていない施設が多い事、アニラセタム群と、プラセボ群に15名の差があり無作為に割り付けたとは思えない偏りが出ている事、個別評価項目は43項目もの多項目評価の臨床試験であり「有意差が認められた項目」はその内僅か9%の4項目にしか認められなかった等の多くの問題点のある臨床試験である。以上の問題はそれ以前の臨床試験と基本的に同じであった。「ガイドライン」に沿って評価されたという事が、従来の試験と比べて科学性を保証した事にはなっていないのである。
今後の課題
今回の承認取り消しの意味するものが単に4薬剤の市場にアニラセタム(ドラガノン、サープル)やニセルゴリン(サアミオン)が取って代わっただけに終わらせないため、厚生省に対して今回の再評価の成績を全て公表する事(ガイドラインには次のように記されている「試験結果は、結果のいかんにかかわらず、原則として公表する。」)と共に、残りの脳循環代謝改善剤についても全て早急に再検討するように要望したい。