再評価の対象となったのは、イデベノン(商品名:アバン=武田薬品)、塩酸インデロキサジン(商品名:エレン=山之内製薬)、塩酸ビフェメラン(商品名:アルナート=藤沢薬品工業、セレポート=工ーザイ)、ニセルゴリン(商品名:サアミオン=田辺製薬)、プロペントフィリン(商品名:ヘキストール=ヘキスト・マリオン・ルセル)の五種類の薬。
厚生省は九六年四月、五種類の脳代謝改善剤を製造・販売する各社に対し、有効成分が入っていないプラセボ(偽薬)と比較する臨床試験をして、効き目を検証するよう指示。各社はそれぞれ数百人の思者を対象に臨床試験を実施した。
関係者によるとニセルゴリンを有効成分とする「サアミオン」以外の薬は、プラセボと比較して効き目に差が出なかったという。
脳代謝改善剤は、田辺製薬が最初に開発した。七八年一月に厚生省の承認を受け、子供の精神発達遅滞に伴う意欲低下などの治療薬として、「ホパンテン酸カルシウムー(製品名「ホパテ」)を売り出した。八三年二月、脳血管障害の後遺症の改善薬としての効能が迫加されたことをきっかけに、痴ほう症患者への使用量が激増した。
その後、ホパテと同等の有用性があるとして承認を受ける類似薬が次々と登場した。今回、再評価の対象となった五種類の脳代謝改善剤も、ホパテを比較対照薬に使った承認前の臨床試験で、同等の効果があるとして承認された。
しかし、八九年にホパテの副作用で十一人の患者が死亡していたことが判明。厚生省は、ホパテの脳血管障害後遺症の改善薬としての効能を取り消した。八七年には、薬の評価基準として、プラセボとの比較試験を求める指針ができた。にもかかわらず、厚生省は五種類の脳代謝改善薬について再評価を求めなかった。しかし、医療保険財政の悪化などを背景に大蔵省が再評価を強く要求。厚生省は九六年、ようやくプラセボを使った臨床試験を指示した。
再評価のためのデータ収集が始まるまでに時間がかかり、結果的に巨額の医療費が無駄になった。
【メモ・・・脳代謝改善剤】
脳の代謝を活発にする薬理作用を持つとされ、脳梗塞や脳出血に伴う意欲低下、情緒障害を適応症とする。市場規模は年間約千三百億円とされる。今回、再評価の対象になった五種類の薬は一九八六〜八八年に承認を受けた。痴ほうに対する有効な治療薬がないことから、開業医も合め医療現場で広く使われてきた、老年精神科の専門医の間には有効性を疑問視する声がある。