解答

解  答

 


解答(平成11年8月21日)

 問題は、「心肺蘇生を1人で行う場合、人工呼吸と心臓マッサージの割合は?」でしたね。


 この問題は、平成10年秋に私が行ったアンケートの中の一問です。これら医師には常識的な問題でも患者さんの正解率がかなり低いことが分かり、医師と患者さんの情報較差を埋める目的においてもカルテなどの医療情報の開示が必要であると感じ、1999.12.7病院の外来カルテ開示(当時全国初)に踏み切ったのですが、皆さんも挑戦してみて下さい。

 

心肺蘇生を1人で行う場合、人工呼吸と心臓マッサージの割合は?

結果(右の数字は、実際のアンケートの結果です)

□ 人工呼吸15回に対し、心臓マッサージ2回  :35人

□ 人工呼吸5回に対し、心臓マッサージ5回   :52人

□ 人工呼吸2回に対し、心臓マッサージ15回  :75人

□ とにかく心臓マッサージだけを優先する    :64人

  無回答                   :39人 

 

 正解は、もちろん人工呼吸2回に対し心臓マッサージ15回です。正解率は28.3%でした。

 

解説

 日本救急医学会・救命救急法検討委員会委員長の小濱啓次氏(川崎医大救急医学教授)は、九八年六月に開かれた第一回日本臨床救急医学会で、心肺停止例の救命成績に関する同委員会の調査結果を発表しました。「九六年一月から三月までに、全国33の救急部や救命救急センターに収容された1278例の心肺停止患者の生存率を、救急救命士制度導入前の八八年と比較した結果、24時間後の生存率は、制度導入前が14.7%だったのに対し、制度導入後は9.6%にすぎなかった。一週間後の生存率も制度導入後の方が有意に低かったという結果が出ている」と報告しています。救急救命士制度に疑問を投げかけるデータとも読みとれます。

 米国心臓協会(AHA)と救急心臓治療委員会(ECC Committee)による心肺蘇生法のガイドラインでは、救命には心停止後4分以内にCPR(心肺蘇生)を行うことが重要とされています。これに対して、現在の日本の現状では、心停止が起きてから119番通報までに約10分、救急車が現場に到着するまでに約6分かかっています。つまり、現場到着以前にタイムリミットを超えてしまっているのです。

 東京都立墨東病院救命救急センタ一医長の濱邊祐一氏は、「本当に救命率を上げるには、学校教育でCPRの講習を必修にするなど、一般市民に広くCPRを普及させ、現場に居合わせた人間が誰でもCPRができるようにすべきだ」と指摘しています(「日経メディカル」九八年九月号)。

 「愛する家族が目の前で倒れたら、あなたはどうしますか・・・」という書き出しで始まる朝日新聞記事もご紹介します。

 兵庫県立健康センター(エ078ー441ー2234)の河村剛史所長は、人工呼吸や心臓マッサージなどの心肺蘇生法を紹介するCD−ROMを製作しました。心臓発作による突然死は45歳以上の男性に多く、7割が家庭で起きています。何もせず救急車を待った場合、社会復帰率は2%程度であるが、心臓が止まってから2分以内に心肺蘇生をすれば、3割が社会復帰できるまで回復するとされています。CD−ROMでは、成人・小児・乳幼児の三つの年齢層向けの方法を動画で説明しており、さらに、気管に詰まったものを取り出す方法や水難救助法など計11項目を紹介しています。河村所長は、「家庭のパソコンで気軽に見て、いざという時に役立ててほしい」と話しています(九八年十一月八日付朝日新聞日曜版)。

 私はこのCD−ROMを見たいがために、愛用のMAC以外に、富士通のパソコンを購入してしまいました。ちょっと衝動買いぽかった。でも大変役立っています。

 以上の記事を読まれてどのように感じられましたか? 読者の方の中にも、心臓マッサージ・人工呼吸の講習を体育の授業などで受けた記憶が残っている方も多いと思うのですが、心肺蘇生に自信のある方というのはそんなに大勢みえるものではありませんね。それは平素使う機会がないから忘れてしまうからです。それを如実に表すのが、今回のアンケートの正解率の数字です。

 「心臓が停止しているのだから、とにかく心臓マッサージだけを優先する」と回答された方があまりにも多く大変驚きました。日本の救命率が高くないわけが改めて理解できました。大変大きな波紋を投げかける数字ではないかと思われます。

 心肺蘇生の方法は救助者の人数によって異なるのですが、救助者が1人の時は15回の心臓マッサージに2回の呼気吹き込みを、2人の時には5回の心臓マッサージに対し1回の呼気吹き込みをするのでしたね。呼気吹き込みは1.5秒〜2秒かけてゆっくりと吹き込むことでしたね。しかし上記の前にやらなければならないことがありましたね。そうです。気道確保です。そして頚動脈を触って脈がないことを確認してから心臓マッサージを開始するのです。心臓マッサージは1分間に80〜100回の速さでします。

 心停止後の脳の変化についても復習しておきましょう。たとえ心停止しても、意識の座である大脳皮質は4分間、生命維持(意識・呼吸・循環)に不可欠の脳幹は8分間も生存可能であり、心停止後2分で蘇生すれば完全に回復可能であるとされております。しかし蘇生に5分かかれば、大脳皮質が死滅(大脳死)するので植物状態となってしまいます(植物状態での長期生存は可能)。蘇生に9分以上を要すれば、たとえ蘇生しても既に脳幹も死滅している(全脳死)ので、数日から数週間後に心停止は避けられません。 

(参考文献:近日発売の私の著書より)

 

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