「アルツハイマー型痴呆の臨床」の書評

 第1期(初期)は自覚もあり、脳萎縮も軽度!

 初期は“うつ病”と誤診されやすい!


 平成10年6月25日、岡山大学神経精神医学の黒田重利教授が、「アルツハイマー型痴呆の臨床」という著書(出版社:新興医学出版社、3300円)を出版されました。

 専門家・詳しくアルツハイマー病を勉強したい方にとってはなかなか良い本であると思います。今回はこの著書の書評を述べさせていただきます。

 

P18:「ものとられ妄想」を呈しやすい人

 自験では、痴呆は中等度で、若い時しっかりしていた、厳しかった人が多く、お金・ものに関心がある患者さんに多く、特に女性に多い。

私の感想:妄想を生じやすい人を検討した報告はなく、貴重な資料であると思います。

 

P41:良性健忘と悪性健忘(=アルツハイマー病に伴う健忘)は痴呆外来では鑑別をもっとも求められるが、その境界は必ずしも明らかでない。

私の感想:正直な意見ですね。私も痴呆ドックを施行していて、アルツハイマー病初期であるのか、ひどい良性健忘であるのか鑑別に悩むケースはしばしばです。このようなケースでは経過を追って症状の変化を見ることが最も確実な鑑別方法となります。

 

P71〜72:アルツハイマー病第1期(初期・健忘期)

 記憶障害が認められ、記銘、想起障害がおこる。ものをどこに置いたかを忘れる置き忘れ、物品名・人名がすぐに思い出されず、ど忘れとなり、「あれ」「これ」と代名詞が多くなる。同じことを繰り返していう。記憶障害は、はじめは部分的であるが、持続・増悪し、電話の内容が伝えられない、その日の行事をまったく忘れてしまうなど信じられないような記憶障害が混じる。時間の見当識障害が認められ、月・日を誤る。思考も内容が単純・浅薄となり、抽象思考が特に困難になり、また新しいことの理解が悪い。日常生活は単調となり、自発性は低下し、それ以前の生活態度と異なり、“うつ”を呈し、うつ病と誤診されることがある。神経学的には正常である。頭部のCT・MRI検査は正常か、萎縮は認められたとしても軽度である。(中略) 

 この時期にアルツハイマー病では知的低下を嘆き、恥じることが多い。アルツハイマー型老年痴呆ではこのように嘆くことは稀である。

私の感想:アルツハイマー病初期はこのようにMRIでも診断がつかない(=MRIが正常)ケースも多く、しかも本人の自覚(病識)があるようなケースでは、“うつ”と誤診されることはしばしばです。 

 アルツハイマー病初期を如実に表現した、なかなかの記載であると思います。

 

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