老人痴呆症は大別して多発性脳梗塞症によるものとアルッハイマー型(AD型)痴呆症のものとの2つになる。米国では75%は後者であるとされているが、日本では50%で、両者の混合型も多いという。
AD発症者は日本ではl00万人,米国で400万人と推定されており,65歳以上の老齢者の6%は罹患しているが,85歳以上になると30%は発症するという。逆に,AD痴呆症の70%は85歳以上であるので,高齢者の割合が23%となるわが国では2030年に360万人になるが,米国でも750万人と推定され,その対策は重要である。米国のAD痴呆症に対する研究費はl975年は350万ドルであったが,85年には6,000万ドル,95年には3億5,000万ドルと飛躍的に増加し,NIA(米国立加齢研究所)が中心となり民間にも下賜金(グラント)を出し研究を進めている。
大半の患者は老健施設に入所
その症状の段階は3つに分類され段階により治療介護の度合が異なるが,その進行度は個人差が高く3年から20年の隔たりがある。第一段階(軽度の記憶力低下・人格の変化など)から第二段階(第一段階の症状の増悪、最近の記憶喪失に加えて遠隔の記憶喪失も目立つ、不穏状態が起こってくるので家族も症状に気づく)までは在宅治療が可能であるが,彷徨癖があるので家人は目が離せない。第三段階(知的機能の高度な障害、言語障害、屎尿失禁、やがて寝たきりに)は介護施設への入所が必要である ケアも可能である。しかし,在宅では介護する家族の犠牲が大きく,日本では娘や嫁がほとんど世話をしているので,本人のみならず家族のQOLも低下しているが,米国では大半は老健施設に入所している。ナーシングホームでは入所者の平均年齢が84歳であるので,60%以上がなんらかの痴呆症を合併している。
ADは当初,65歳以前に起きる初老期に発症する進行性痴呆とされ,65歳以上の老年痴呆と区別されていたが,現在はいずれも同一の機序によるとする見方が主流を占める。
治療
AD発生には頭部外傷も関係があるとされ,症状の促進にもつながるという。
ADの診断は主としてCTによる除外診断が有効とされる。CTはAD以外の原因で起こる痴呆症、血管硬化からくる多発性脳梗塞症,卒中後の痴呆症,低圧水頭症,脳腫瘍などの診断に優れているので診断の助けになる。
また、PET(ポジトロンCT)により若年性ADは大脳皮質の糖代謝の変化を観察することが可能であるが,老年型では診断ができないという。
最終的診断は剖検による大脳変化によるが,ケンタッキー大学のSnowdonの研究では,高度に典型的大脳変化のあったl0l歳の尼僧が、生前には高い認知力があり日常生活においてても指導的立場で死ぬまで教育者として活動したケースもあり,頭脳活動および日常年活が症状の発生および進行に大きな関連があることが判明し衝撃を与えている。
(元ニューヨーク医科大学臨床外科教授 評論家 廣瀬輝夫)
とにかくアルツハイマー病の進行度というのは、個々の症例でバラバラで、予想がし難いというのが現状なんです。
日本ではまだまだ嫁・娘が介護にあたるのが当然という状況ですが、アメリカでは福祉施設入所が主流のようですね。介護は人生のQOLを下げると割り切って考え社会福祉制度に任せるか、介護は人生の一部(順番にするもの)と考え大和魂で臨むか難しい判断ですね。
「PET(ポジトロンCT)により若年性ADは大脳皮質の糖代謝の変化を観察することが可能であるが,老年型では診断ができないという」という部分は専門的で少し分かりにくい表現と思いますが、アルツハイマー病を早期診断するための1つとして期待されている検査の1つにPET(ポジトロンCT)という検査があると考えて頂ければ結構です。そのPETが頻度の少ない若年性タイプの診断にしか有用でないということをこの部分は述べているのです。
「頭脳活動および日常年活が症状の発生および進行に大きな関連があることが判明」と、この101歳の尼僧1人の存在だけで断定してよいものかどうかはおおいに疑問なのではありますが、病理診断が最終診断とされるアルツハイマー病において、病理所見が当てにならないケースも多々あるということだけは歴然とした事実のようですね。