お年寄り、短期の物忘れに注意

 

 区別が困難:仮性痴ほう!

 こじれる前に精神科受診を!


 物忘れがひどくなり、痴ほうと診断された・・。だがどうも様子が違う。よく調べると、実はうつ痛が原因の、痴ほうと似た症状を示す「仮性痴ほう」だった、というお年寄りがけっこう多い。ただやっかいなのは、本物の痴ほうの初期症状にもうつを伴うことがあり、専門医でも区別が難しいことだ。比較的短期に物忘れがひどくなった場合には「うつ病を疑って」と忠告する。

(藤 英樹)

 

事例 1

 東京都内在住のAさん(70)は短歌作りが趣味。ところが半年ほど前から、短歌を作ろうとしても、漢字を思い出せなくなった。痴ほうではないかと気になり精神科医を訪れ、問診を受けた。痴ほうの判断基準に使われる長谷川式簡易知能評価スケールを試すと、三〇点満点で二三点。一般に二〇点以下が痴ほうの可能性があるとされるため、微妙な結果だった。

 問診を受けるAさんの表情は一見明るく、応答もはきはきしていた。

 ところが担当医がAさんに詳しく近況を尋ねると、漢字の記憶障害は、妻が入院し看病で疲れがたまったころ始まったと判明。さらに普段、意欲の低下や食欲不振、早朝に目が覚めるなど、うつ病の典型症状が見られることも分かった。

 担当医はうつ病を疑い、副作用の軽い抗うつ薬(SSRI)を処方した。するとAさんの記憶障害は一カ月ほどで消えた。

 

事例 2 = 省略

(中略)

 

 AさんもB子さんも仮性痴ほうと見られるケース。日本にどれほどの仮性痴ほう患者がいるか詳しいデータはないが、海外では、初診時に痴ほうと診断された患者の8%が、五年後にはうつ病と診断変更されたという調査結果もある。

 日本痴ほうケア学会代表幹事で東京都老人総合研究所の本間昭博士によれば、お年寄りのうつ病は抑うつ気分や意欲の低下などの症状は目立たず、不安や焦燥、体の不調を訴える心気症や自律神経症状が日立つことがあるという。(図参照=省略) 

 「そのため、自律神経症状が目立つ場合、仮面うつ病(腹痛や胸部痛、関節痛など身体症状を訴えるうつ病)を身体疾患と、不安や焦燥が目立つ場合は、うつ病を本物の痴ほうと、誤診しやすいんです」

 「お年寄りのうつ病は、加齢による脳の老化が背景にあるという点では本物の痴ほうと同じ。幸い、副作用の軽いSSRIなどの抗うつ薬が開発され、お年寄りにものみやすい。症状がこじれる前に早めに精神科の門をたたいてほしい」

(平成14年5月24日 中日新聞)

 

私の感想

 SSRI、SNRI(商品名:トレドミン)などの抗うつ薬が最近は推奨されています。

 『海外では、初診時に痴ほうと診断された患者の8%が、五年後にはうつ病と診断変更されたという調査結果もある』というデータは、臨床医は反省し診断には慎重に!という警鐘なんでしょうね。

 

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