「早期に発見」浸透!
「もの忘れ外来」をご存じだろうか。そんな名の診療科にかかる患者が増えている。40代半ばにさしかかり、話そうとしたことを忘れたり、人の名前が思い出せなかったりすることがしばしばある。頭の片隅に引っかかるものを感じつつ、津市の三重大医学部付属病院を訪ね、診療の様子を聞いた。
(中村尚徳)
神経内科の「もの忘れ外来」。毎週火曜日午後、十数人の患者がやってくる。どんなもの忘れなのか。生活状況はどうか。伊藤伸朗医師(38)ら2人が、じっくり話を聞くことから診察が始まる。
伊藤さんによると、そもそも記憶は、脳の側頭葉内側にある「海馬」(かいば)と呼はれる部分にいったんとどまる。年を取れば脳全体が小さくなって記憶力は弱まるが、「海馬」が目立って縮めば、認知症など病気が原因のもの忘れをするようになる。
では、病気のもの忘れとはどんなものなのか。
「人や物の名前が思い出せなくなった」と自ら心配しているうちは、まず病気とは言えないようだ。実際、訪れる患者の4分の1ほどは取り越し苦労に終わる。ただ、伊藤さんは「今の季節や何月、何日かといったことまで間違える場合は怪しんだ方がいい」と言う。
さらに、自分はしっかりしているつもりでも、何度も同じことを尋ねたり、今までこなしていたことができなくなったりして、家族から見ても変だと思う場合は病気の可能性が高い。
ちなみに患者の大半は60〜70代。遺伝的な要因でまれに20代で発症することもあるが、40代で認知症になるのは特殊な例という。
薬の発売契機
三重大病院の場合、「もの忘れ外来」は00年5月に立ち上がった。その前年に国内でただ一つ認可されている認知症薬が売り出され、初期治療ができるようになったためだ。それまでは徘徊(はいかい)などを鎮静剤で抑えるしかなかった。
さらに介護保険制度が00年4月に始まったことも背景にある。認知症は 早めに見つけ、進行を少しでも遅らせる治療をした方がいいという考え方が広まり始めた。県内でも同様の外来を設ける病院が増え、個人病院が開設する例もあるという。
三重大では最新機器も備えている。問診や試験で怪しいと判断した場合、脳の形を見るMRIや、脳の働きを画像化して調べる検査で認知症かどうかを診断する。治すことはできないが、治療すれは新聞を読もうといった意欲もわき、表情も良くなる。伊藤さんは「介護する側にもいい影響が出るはずです」。
「認知症」倍に
年を追うごとに、患者の数は増えている。1年間に認知症と診断する数は06年、開設した年の倍近くになった。伊藤さんは患者に接しながら、「寿命が延びた半面、お年寄り夫婦だけの世帯や独り暮らしが増えている。認知症を取り巻く環境は、これからもっと厳しくなる」と感じているという。
私の感想
私の開設している「もの忘れ外来」も、「痴呆・メール相談」というタイトルで、平成16年5月29日の朝日新聞の「こころ・からだ」で紹介して頂きました。
三重大学病院のもの忘れ外来の最大の魅力は、やはり最新機器が揃っていますので、より正確に、認知症なのかそうでないのかが判断できるという点です。
ただ、そのような最新機器をもってしても、約80%の正診率であるという現状も受診される方は知っておく必要はあります(インフォームド・コンセントの重要性)。
私は、もの忘れを心配する方からメールを頂いた場合には、下記のようなアドバイスをしております。
『どうしても心配でしたら、「もの忘れ外来」などで診察を受けましょう。
◎全国「もの忘れ外来」最新情報を下記サイトで見ることができます。
http://www2f.biglobe.ne.jp/%7Eboke/boke2.htm
アルツハイマー病のもの忘れか、年齢相応のもの忘れかの判断が難しく、その境界のタイプ(MCI:軽度認知障害)という概念もあります。
http://www.inetmie.or.jp/~kasamie/AlzMCIasada.shtml
軽症認知障害のままでとどまるか、アルツハイマー病に発展するのかの予測は、いかなる専門医でもごく最近まで困難でした(ただし近年は、MRIのVSRADという手法あるいは脳血流検査=SPECTにより80%程度は、アルツハイマー病に発展するのかどうかの予測が可能とも言われております。これらの検査は特殊な検査ですので中小病院にはおかれていない可能性がありますが、大病院でしたらまずおかれていると思います。受診前に確認されると良いと思います)』
それにしても、『毎週火曜日午後、十数人の患者』とは、受診者数が多いですね。文中にある『脳の働きを画像化して調べる検査』とは、SPECTのことです。
今年も4月に開催される第8回アルツハイマー型痴呆研究会・学術シンポジウムでも、おそらくこの「正診率」が約80%からどう推移したのか・・という話題はきっと上ることだろうと思います。