健忘型MCIだけが、ADへ移行するわけではない!
軽度認知障害(MCI)とは,健常と認知症の境界の状態である。物忘れ外来受診者の場合,MCI高齢者の12〜15(%)が毎年,認知症に移行する。しかし,地域在住高齢者の調査では移行率はそれより低く,また認知症に移行しない,もしくは健常に戻るMCI群も存在するため,MCIの亜型が関心を集めている。
そこで,米国ペンシルバニア州の大規模地域集団において,MCI高齢者の認知機能の特徴を2年ごとに調査した。その結果,4つのMCI亜型(健忘型,失語型,失行型,遂行機能障害型)が認められた。それらは,認知機能の単一ドメインにおける最低1種類の認知機能検査の平均値より1.5SD低下,もしくは複数ドメインにおける最低2種類の認知機能検査の平均値より1.0〜2.0SD低下という基準に基づいて診断された。
それらのMCI亜型を,4年間および最長12年間の全期間にわたって観察し,アルツハイマー病(AD)への移行に関する危険因子について,オッズ比(OR)と95%信頼区間(CI)を求めた。その結果,基準時において健忘型MCIは有病率9%,ORは4年間で9.8(CI:5.7〜16.7),全観察期間で10.7(CI:7.6〜15.0)であったが,他の亜型でも同様の数値が得られた。4年間におけるADへの移行に有意に関連していたのは健忘型と失語型,複数ドメイン型であったが,全観察期間ではどの亜型もADへの移行に有意に関連していた(表)。さらに,どの亜型もADへの移行に関して高い感度(0.90〜0.96)と低い特異度(0.04〜0.03)を示した。地域研究での予測通り,陽性予測値は低く,陰性予測値は高かった。記憶障害のみがADへの移行に関与するわけではないことが,以上より明らかとなった。MCIの他の亜型に対する注意が必要である。

【Mary Ganguli:Prevalence and outcomes of MCI subtypes in a rural American community cohort Psychiatry Today18:16-18,2008】
私の感想
本演題は、IPA 2007 Osaka Silver Congress(平成19年10月14−18日)のシンポジウム(シンポジスト:東北大学大学院医学系研究科高齢者高次脳医学の目黒謙一医師、Mary Ganguli etc)の一演題です。
オッズ比に関しては、その意義がもし分からなければ以下を参照下さい。
http://www.inetmie.or.jp/~kasamie/EBMbeppu0103.shtml
この論文のポイントは、『4年間におけるADへの移行に有意に関連していたのは健忘型と失語型,複数ドメイン型であった』&『記憶障害のみがADへの移行に関与するわけではない』です。
アルツハイマー病に移行するMCIとして、健忘型MCIが注目されてきたわけですが、決して健忘型だけではない!と言うことをこの論文は示唆しているわけです。
P.S:
2007年度のIPA(International Psychogeriatric Association)は、第22回・日本老年精神医学会および第26回・日本認知症学会との共催開催でした。