CDR0.5で「痴呆疑い群」の早期発見を

 

 MCI基準では見逃し多い!

 宮城県田尻町の調査では、65歳以上のうち31.1%が、「最軽度アルツハイマー型痴呆」?!


 痴呆の早期発見と早期介入の重要性が指摘され,正常高齢者と痴呆症例との境界領域が注目されているが,その実態や定義はいまだ不明確であり,用語にも混乱がある。そこで,宮城県田尻町で痴呆などに関する研究を進めている東北大学大学院高次機能障害学の目黒謙一氏と宮城県田尻町国民健康保険診療所の石井洋氏に,正常と痴呆の境界領域である「痴呆疑い群」に関する定義上の問題点とその実態について聞いた。

    

混乱するMCI基準

 近年,Mild Cognitive Impairment(MCI)という概念が,正常高齢者と痴呆症例との境界領域を表す用語としてよく用いられるようになっている。もともとMCIは1991年に,正常と痴呆の境界例に関して,記憶低下の自覚に着目したReisbergらによって,Global Deterioration Scaleのstage3に相当する病態として提唱された。これが1999年,Petersenらによつて再提示され,あらためて注目されるようになったのだが,PetersenらによるとMCIの定義は,(1)主観的記憶低下を訴えている(2)正常高齢者に比較して記憶が低下(3)全般的知能は正常(4)日常生活上問題なし(5)痴呆ではない−の5項目を満たすものとなっている。しかし,本人による主観的な記憶低下の主訴を診断の前提としているため,記憶低下が自覚されない例や,自覚していても年齢相応なものと納得してしまっている例など,痴呆疑い例としてより注視すべき例が漏れ落ちてしまうとの問題点が指摘されている。

 こうした指摘に応えて,2000年にMCIの診断基準に関するコンセンサスペーパーが提出された。それによると,MCIの定義は,記憶や認知機能に関しては絶対的低下でなく,個人の以前の状態に比べて低下が見られる状態とし,日常生活動作(ADL)では単純なものは保持されているが,複雑なものが障害されている状態としている。また,本人の訴えだけでなく,家族による情報を重要視している点や,認知機能に対して教育年数の影響を考慮している点でも,PetersenらのMCI基準の問題点が改善されている。

 

CDR0.5基準の下位分類も

 このコンセンサスペーパーによる新たなMCI基準は,Morrisらによってもともと提唱されていたClinical Dementia Rating(CDR)によるCDR0.5基準にほぼ合致するものである。

 CDRはアルツハイマー型痴呆の重症度の評価尺度として研究・臨床において広く用いられている基準である。専門医,看護師,心理学者などによる,患者本人と家族に対する半構造化された認知機能に関する6項目の質問によって構成されている。質問項目は記憶,見当識,判断力と問題解決能力,社会適応,家庭状況,介護状況に関するもので,評価は正常の0から,疑い例の0.5,軽度の1,中等度の2,重症度の3までの5段階で行われ,CDR0.5は,最軽度アルツハイマー型痴呆(very mild AD)と位置づけられている。

(中略)

 

CDR0.5群は最軽度のアルツハイマー型痴呆

 1988年以来,目黒氏らは宮城県田尻町において共同研究「脳卒中・痴呆・寝たきり予防プロジェクト」を進めている。このプロジェクトの一環として昨年に実施された高齢者における痴呆の有病率と原因疾患に関する調査では,65歳以上の高齢者1654人における痴呆の有病率は8.5%,CDR0.5の有病率は31.1%であった。

(中略)

 これまで目黒氏らが報告してきたCDR0.5群における視覚性注意障害や,前頭葉機能障害の存在などと考え合わせると,「CDR0.5群が最軽度のアルツハイマー型痴呆と考えて矛盾しない」と同氏は考えている。

(2002年7月18日号 Medical Tribune)

 

私の感想

 私も「MCI」という診断をつけながら、その診断基準には疑問点を感じてきました。その疑問点は皆が感じていたことなのだと言うことが改めて確認され、しかも改良点まで示唆されており良い記事でしたので、ご紹介致しました。

従来私が、MCIの患者さんに提示してきた説明書を下記にご紹介致します。

 http://www.inetmie.or.jp/~kasamie/AlzMCIasada.shtml

「年齢相応の知的機能低下」

  AAMIとMCIの違い!

  MCI:1年でその12%,4年ではおよそ半分がADに進行した!

     旧称=isolated memory impairment!

 

 前駆期・早期の痴呆症との鑑別の上で問題となる年齢相応のもの忘れについて述べる。1986年にアメリカの国立精神保健研究所からAge Associated Memory Impairment(AAMI)という観念が提唱されている。

 これは50歳以上の人でみられる,人名や物の置き場所を思い出せないなどの記憶障害により日常生活に支障をきたした状態をさす。具体的には,最近の記憶に関する記憶テストの成績が若年成人の平均得点?1SD以下である。またWAISの語彙のサブテストで9点以上の得点,Mini Mental State Examination(MMSE)では24点以上である。

 AAMIは本来生理的範囲にとどまるものを意味し,ADの初期を含む観念ではない。ところが このように操作的な診断基準ではADとの関係が曖昧になってしまう。またこの基準でいくと,対象とした高齢者の半数以上がAAMIであったという報告すらある。こうしたことからAAMIに対しては強い批判がなされるようになった。

 このような背景で,悪性度の高いもの,すなわちADへと進行する状態として示されたのがMild Cognitive Impairment(MCI)である。

 その診断基準は,1)自覚的な記憶障害の訴えと家族によるその確認,2)年齢に比し異常な記憶力低下(記憶検査では平均値から1.5SD以上の低下),3)記憶以外の認知機能は正常,4)運転や家計などの日常生活の能力は保たれている,5)痴呆はない,である。 MCIと診断された患者を追跡すると1年でその12%,4年ではおよそ半分がADに進行したとされる。

 もっともMCIそのものは新しい観念ではない。というのは以前から,isolated memory impairmentと呼ばれ,その多くがADへと進展する一群があることが知られていた。

   (国立精神・神経センター武蔵病院  朝田 隆  宇野正威 共著)

             (平成13年4月号 精神科治療学 より抜粋)

 

 

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