軽度認知障害からADへの進展遅延効果を確認

 

 AD発症者の平均遅延期間は約6か月!

 研究終了時にはADへの進展リスクは3群とも同等!


〔米ミネソタ州ロチェスター〕

 軽度認知障害(MCI)はアルツハイマー病(AD)の強力な予知因子と考えられる記憶障害であるが,メイヨー・クリニック(ロチェスター)神経内科のRonald Petersen博士を主席研究者とする研究チームにより,塩酸ドネペジルがMCIからADへの進展を限定的ながら遅らせる効果のあることが初めて確認された。研究結果はフィラデルフィアで開かれた第9回アルツハイマー病および関連疾患国際会議で報告された。

 

効果は短期的かつ中等度

 Petersen博士らは,MCI患者におけるADへの進展を遅延ないし予防する効果について,AD治療薬のドネペジルをビタミンEおよびプラセボと比較するランダム化二重盲検プラセボ対照多施設間研究を行った。アルツハイマー病協会はこの試験を今回の会議で最も期待される研究の1つとしている。

 同博士は「これは,MCIからADへの進展に対するなんらかのプラスの治療効果を実証した最初の研究である。ADとそれに伴う認知機能低下の進行を遅らせる治療アプローチが進歩し始めたことで前途が明るくなった」と述べている。

 今回の報告によると,ビタミンEにはADの進展を遅らせる効果はなかった。しかし,3年間の研究の前半すなわち18か月間,ドネペジルで治療されたMCI患者はプラセボ群に比ベADへの進展リスクが軽減された。AD発症者の平均遅延期間は約6か月であった。

 ドネペジル群はどタミンE群やプラセボ群に比べ,当初はADへの進展が遅れたが,このリスク軽減効果は短期的なもので,研究終了時にはADへの進展リスクは3群とも同等になった。

 同博士は「ドネペジルは研究期間の前半に効果を発揮したようだ。しかし多くの交絡因子があり,研究終了時にはドネペジルの全体的なリスク軽減効果は消失した。ドネペジルは効果を表す期間が限定的かつ中等度と思われる」と述べている。

 ドネペジルの効果が時間とともに低下する理由はわかっていないが,薬効が18か月後には切れてしまうか,効果が中等度であるため疾患の進展が最終的には薬剤の化学的効果

を打ち消してしまうのではないかと考えられている。

 これまでの研究では,MCI患者は無治療では毎年10〜15%の比率でADになるが,すべての患者がADになるわけではない。

 今回の被験者は年率13%でADを発症した。ADになった患者のうち,ADと診断されるまでの日数は,ドネペジル群では661日,ビタミンE群では540日,プラセボ群では484日であった。

 研究結果が複雑なため,さらに分析を進め,この新情報の臨床的意義の評価や臨床的勧告を行うのは危険である,と同博士らは指摘している。

 

69施設769例が参加

 この研究には米国とカナダの医療機関69施設(769例)が組み入れられた。全被験者はMCIの基準を満たしており,ビタミンE,ドネペジル,プラセボの3群にランダム化割り付けされた。ドネペジル群は最初の6週間は5mg/日,その後研究終了まで10mg/日が投与された。ビタミンE群は最初の6週間は1,000IU/日,その後研究終了まで2,000IU/日が投与された。研究は各群におけるMCIからADへの進展率を比較するようデザインされた。

 米食品医薬品局(FDA)はMCI治療薬を承認していない。共同研究者でメイヨー・クリニック神経内科のBrad Boeve博士によると,ビタミンEとドネペジルが試験に選ばれたのは,ビタミンEはADの進行を遅らせ,ドネペジルはADの症状を緩和することが示されていたからであるという。

 同博士らによると,MCI患者は年齢から予測されるよりは強度の記憶障害を有するが,ADその他の痴呆の診断基準は満たしていない。つまり,加齢とADの中間状態にある。

思考も推論もきちんとできるが,年齢の割には近時記憶が障害されている。また,MCI患者では情報の分類,貯蔵,想起をコントロールする脳の領域である海馬の容積が減少していることも発見されている。この状況は,(1)記憶に関する愁訴(2)年齢に不相応な記憶障害を有する(3)正常な日常生活を行うことはできる(4)一般認知機能は正常(5)痴呆でない−の5つの診断基準で診断される。

(平成16年11月11日号 Medical Tribune P47)

 

私の感想

 記事のタイトルのインパクトは強いのですが、内容を読んで(=『今回の報告によると,ビタミンEにはADの進展を遅らせる効果はなかった。しかし,3年間の研究の前半すなわち18か月間,ドネペジルで治療されたMCI患者はプラセボ群に比ベADへの進展リスクが軽減された。AD発症者の平均遅延期間は約6か月であった。ドネペジル群はどタミンE群やプラセボ群に比べ,当初はADへの進展が遅れたが,このリスク軽減効果は短期的なもので,研究終了時にはADへの進展リスクは3群とも同等になった。』)、がっかりされた方も多いのではないかと思います。

 私も希望されたご家族には、MCIと判断してもドネペジルを投薬するケースがありましたが、今回の記事を読んでまた少々迷いが出てきました。

 ビタミンEも期待していたのですが、『ビタミンE群は最初の6週間は1,000IU/日,その後研究終了まで2,000IU/日』と高容量のビタミンEを投薬して検討した割には効果が確認されなかったようですね。残念な結果です。

 

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