混合型痴呆の概念と診断の手順

 混合型痴呆:病理学的にはアルツハイマー病+脳血管性痴呆を意味する!

 剖検例では、痴呆の原因の10〜20%を占める!

 脳血管性痴呆では突発完成あるいは階段状悪化の経過をとる!


概念と病理学的診断基準

 混合型痴呆(mixed dementia)とは、本来は病理学的概念である。高齢者の痴呆の原因疾患の双璧はアルツハイマー病と脳血管性痴呆であり、この両者で70%以上を占めると考えられている。病理学的特徴は、前者は1.脳のびまん性の神経細胞脱落とグリオーシス、2.多数の老人斑とアルツハイマー神経原線維変化の出現であるのに対して、後者は3.肉眼的に大中小の脳梗塞の多発、4.大脳白質の広範な変性・粗鬆化である。

 混合型痴呆と診断されるのは、痴呆患者の脳に、アルツハイマー病と診断するに十分な老人性変化(1.と2.)と脳血管性痴呆と診断するに十分な血管性変化(3.と4.)が共存しているという条件を満たす場合である。すなわち、病理学的にはアルツハイマー病+脳血管性痴呆を意味する。頻度は高くなく、剖検例では、痴呆の原因の10〜20%を占めるとする報告が多い。

 

混合型痴呆の臨床診断

 上記のような神経病理学的概念の臨床像はどのようなものであろうか。その臨床経過の特徴は、アルツハイマー病と同じように緩徐進行性の記銘力低下、知的機能低下が進行している途中で、脳血管性痴呆にみられるような急速あるいは階段状の知的機能悪化が出現し、併せて運動麻痺、仮性球麻痺(=食事がのどを通りにくくなるなどの症状が出ます)、錐体路症状などの神経症状が加わることである。これは、潜行性に進行していたアルツハイマー病変化に脳血管障害を合併することによって、脳機能が一挙に低下し、痴呆が顕在化した状態を反映している。一方、これとは逆の順序で、脳梗塞多発による痴呆が先行し、新たにアルッハイマー病変化が加わって痴呆が悪化した場合には、臨床的確認は困難である。

 臨床症状では上述のように記銘力低下、見当識障害、思考障害、意欲低下などの痴呆症状に、運動麻痺や仮性球麻痺、錐体路症状のような神経症状を伴うことが多い。混合型独自の特徴的症状はない。

アルツハイマー病、脳血管性痴呆と、混合型痴呆の臨床経過の模式図

 アルツハイマー病では緩徐進行性の経過。

 脳血管性痴呆では突発完成あるいは階段状悪化の経過をとるのに対して、混合型痴呆では両者の複合した経過をとる。

 

画像検査所見

 脳CT、MRI、SPECTのような画像所見だけで混合型痴呆と診断することは不可能であるので、必ず臨床経過と臨床症状を加味して診断する必要がある。脳血管性痴呆の条件を満たす血管性病変、すなわち大脳の大中小の多発梗塞と広範な白質病変は、画像上に明瞭に描出される。一方、アルツハイマー病では、初期には画像上に著変は認められないのが普通である。したがって、混合型痴呆の画像にはアルツハイマー病変化は反映されにくく、脳血管性痴呆と大差ない所見となる。

 

混合型痴呆の新しい概念

 これまで述べた古典的な混合型痴呆の概念に対して、一九九二年に発表された米国のカリフォルニア州アルツハイマー病診断治療センターの虚血性脳血管性痴呆の診断基準では、混合型痴呆を、「虚血性脳病変に加えて、他の全身性あるいは脳の疾患が一つ以上あって、それが痴呆の原因と考えられた場合」と定義している。つまり、原因疾患をアルツハイマー病と脳血管性痴呆に限定せず、その他の脳疾患や内科的疾患にまで対象を広げ、その診断名は「脳血管性痴呆確実+アルツハイマー病疑い」とか「脳血管性痴呆確実十甲状腺機能低下症」と記載することを捉唱している。 

(以下省略)

(三重大神経内科 葛原茂樹教授) 

(参考文献:平成12年1月29日号 日本医事新報・質疑応答)

 

私の感想

 葛原教授の論文はいつもながらにクリアカットに論点が整理されており、大変分かりやすいですね。

 著作権の関係で全文はご紹介できず、最後の部分は割愛させていただきました。全文必要な方は、日本医事新報社に第3953号をお申し込みください。

 「混合型痴呆」についてのまとまった記述は少ないので紹介させていただきましたが、新しい概念も提唱されてきていることを知りました。

 

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