抗不安薬、睡眠薬と記憶障害

 ハルシオンの有害性は?


■ はじめに

 中枢神経作用薬は脳内の学習‐記憶系機能に何らかの作用をもたらす.精神治療薬として用いている多くの薬物の抗精神病薬・抗うつ薬・抗不安薬あるいは睡眠薬は,いずれも中枢抑制作用を有することから,注意機能の抑制をもたらし,記憶機能にマイナスに作用する.とくに,記憶に直接関連するアセチルコリン系の活動を抑制する薬物は,確実に記憶機能を抑制することが判明しており,抗コリン作用を有する薬物として抗コリン性抗Parkinson薬・三環系抗うつ薬・定型抗精神病薬などがよく知られていながら,臨床的には広く用いられている.これとは別に,抗不安薬や睡眠薬としてのbenzodiazepine系薬物(BZ)による健忘作用が,とくに1991年10月BBC放送の“Halcion Night Dream”として大々的に取りあげられ,triazolam(ハルシオン)による健忘が一部に社会問題化している。ここではBZ健忘について科学的に述べておく。

 

□ わが国での報告例

 BBC放送やNewsweek誌がtriazolamの健忘をとりあげる契機となったのは,オランダの精神科医van der Kroefの一連の報告であり、この間の事情は別の総説に詳述されている。当時triazolamの1mg錠が使用されていたオランダで,かなり高率に“もうろう状態”や“健忘”を主体とする精神症状が多発した様子が,Lancet(1979)に報告されて一部に注目されていたのである。

 わが国でも挟間と川原による自験報告,稲見,杉本らの統計的報告をはじめ,多くの散発的報告も加わり,BZ健忘の全貌が次第に明らかにされていった。とくに,田所の自ら体験したBZ健忘についての報告は,科学的のみならず文学的にも優れ,BZ健忘についての啓蒙的役割は大きかった。

 ほとんどの症例が臨床用量よりも高用量で,アルコールと併用されておりもうろう状態と健忘というパターンが認められている.

 

□ BZ健忘を避ける工夫

 臨床用量のBZ系抗不安薬を服用している範囲では,記憶機能に関して日常の生活にほとんど影響なく,長期連用者を対象として種々の精神運動機能や記憶機能の検査でも,それが実証されている。強い不安や緊張・焦燥・不眠に加えて種々の身体症状のもとに苦しい生活をおくるよりは,BZ系抗不安薬の服用によってQOLが高められ,結果的にはむしろ高い水準の成績が得られていると判断される.報告例の多い睡眠薬であるが,臨床用量の範囲内で適正に用いられている限り,健忘が問題になることはまずないといってよい.  

(参考文献:平成10年2月号 CLINICAL NEUROSCIENCE P181〜185)

 

私の感想

 ハルシオンを内服されている方は大変多いと思います。常用量であれば長期連用しても記憶障害を来さないという報告でほっとされたのではないでしょうか。

 

ご意見はこちらまで

ホームへ戻る