医療常識を高めましょう(6)
 がん検診の利益と不利益 


 シリーズでお伝えしております「医療常識を高めましょう」も今回で6回目を迎えます。シリーズ3回目(本紙924号)において、PET−CT検診も含めたがん検診の現状をお伝えしましたが、医療機器の進歩などもあり、がん検診も徐々に変貌を遂げてきておりますので、最近の現状をお話したいと思います。
 国立がんセンターのサイトの中に、「科学的根拠に基づくがん検診」というコーナーがあります(http://www.ncc.go.jp/jp/kenshin/about/gankenshin.html)。冒頭の「がん検診の利益と不利益」というコーナーに以下のような記述があります。
 「がん検診にも不利益な側面があります。第1は、検診によってがんが100%見つかるわけではないという点です。どのような優れた検査でも100%の精度ではありません。がん検診にはある程度の見逃しがつきものといえます。第2は、過剰診断により、過剰な検査や治療を招く可能性があることです。検診によって『がん疑い』が増加すると、そのための精密検査が増加します。また、治療の対象とはならない微小ながんが発見された場合でも、手術や薬物治療が行われることがあります。こうした過剰診断や過剰治療は、医療費の増大を招くことになります。第3は、受診者の心理的影響をもたらす点です。精密検査が必要ということで不安を感じることもあります。」
 肺がんの早期発見の切り札として、ヘリカル(らせん状)CTを用いての「低線量CT検査による肺がん検診」が注目されています(非低線量胸部CTは、被曝の面から、健常者への検診として用いるべきではありません)。X線で発見可能な大きさは2〜3センチですが、CTでは約5ミリの病変も発見できるためCT検診を希望される方も増えているのですが、その際に問題となるのが、「過剰診断」です。早期の肺がんと診断され手術を受けたが、術後に肺がんではなかったことが判明したというケースも多く報告されるようになってきているのです。
 前述の国立がんセンターのサイトでは、各種のがん検診の有効性評価に関しても言及しています。既に読まれた方は、評価判定が「有効」となっているものが少ないことにガッカリされたのではないでしょうか。乳がん検診の視触診(単独)、前立腺がん検診の直腸診などごく最近まで当たり前のように実施されていましたが、「無効」とされています。
 また、科学的根拠に基づくがん検診推進のページ(http://canscreen.ncc.go.jp/)では、「がん検診ガイドライン」が公開されており、各種がん検診の推奨グレードを知ることもできます。
 「前立腺がんのPSA検診」、「肺がんの低線量CT検査」、「胃がんの内視鏡検査」は、死亡率減少効果の有無を判断する証拠が不十分(推奨グレードI)という推奨グレードです。推奨グレードIの場合は、対策型検診(市町村が行う老人保健事業による集団検診・個別検診や職域の法定健診に付加して行われるがん検診が該当)として実施することは「推奨しない」が、任意型検診(検診機関や医療機関などで行われている総合健診や人間ドックなどに含まれているがん検診が該当)として実施することは、効果が不明であることと不利益について十分説明する必要があり、その説明に基づいた「個人の判断による受診は妨げない」という評価なのです。
 医療機器の発達により、より小さな病変の発見が可能となってきておりますが、そのことが逆に「過剰診断」という新しいタイプの不利益を招く結果に繋がっています。どの「がん検診」を受けるのかは、個人の判断に任されています。検診を受診する前に、がん検診の利益と不利益等に関する知識を整理しておくことが望ましく、その際の参考資料になればと思い最新の情報および最新情報の入手先などをまとめて紹介しました。



その後の情報
低線量CTによる 肺がん検診は偽陽性率が高い
 低線量CTによる肺がん検診では高い偽陽性率が認められると,米国立がん研究所のグループがAnnals of Internal Medicineの4月20日号に発表した。
 同グループは,進行中のNational Lung Screening Trialで検診における偽陽性のリスクを評価した。対象は,喫煙指数30 pack-year以上で肺がんの既往のない55〜74歳の現喫煙者または喫煙経験者3,190例。登録時と1年後に低線量CTまたは胸部]線による検診を行う群にランダムに割り付け,1年間追跡した。検診で陽性とされ,その後の追跡で陰性であることが確認された場合を偽陽性とした。
 Kaplan-Meier法による解析の結果,低線量CTによる偽陽性の累積確率は1回の検診で21%,2回の検診で33%,胸部]線ではそれぞれ9%,15%であった。結果的に偽陽性が確認された受検者のうち,低線量CT群の7%と胸部]線群の4%が侵襲的な検査を受けていた。
      (Croswell JM,et al.Ann Intern Med 2010;152:505−512)

 

ホームへ戻る