アルツハイマー病と軽度認知障害を鑑別!
〔ニューヨーク〕
カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA,ロサンゼルス)精神医学・生物行動科学のGary W. Small博士らは,最近開発した低分子化合物の2-(1-{6-[(2-[18F]fluoroethyl)(methyl)amino]-2-naphthyl}ethylidene)malononitrile(FDDNP)を用いた脳PETスキャンを記憶障害があると自己申告したボランティア83例に実施したところ,軽度認知機能障害患者とアルツハイマー病(AD)患者,正常認知機能者とを鑑別することができたとNew England Journal of Medicine(2006;355:2652−2663)に発表した。
代替マーカーの開発に有望
Small博士らは「今回用いた方法は,アミロイド斑とタウ蛋白質による神経原線維の神経細胞内変化の脳内分布パターンを確認する非侵襲的方法として有用となりそうだ。FDDNP-PETは,ADの特徴であるこれらの異常蛋白質の脳内集積をモニタリングする代替マーカーの開発に役立つ可能性がある。FDDNPはアミロイド斑と神経原線維変化の双方に結合し,その局所結合パターンは早期ADと正常な加齢,非健忘性軽度認知機能障害,前頭側頭型認知症,その他のタイプの認知症との鑑別に役立つ可能性がある」と述べている。
また同博士らは,創薬のための代替マーカーの開発にもFDDNP-PETは有用と見ている。神経原線維変化やアミロイド斑の脳内蓄積の予防,または蓄積物の分解を目的とするAD治療薬が開発されていることから,これらの病変の脳内分布パターンを非侵襲的に検出する方法の開発が望まれる。
今回の研究における全体的なFDDNP-PET結合値は,軽度認知機能障害群よりも対照群のほうが低く(p<0.001),AD群よりも軽度認知機能障害群のほうが低いことが判明した(p<0.001)。全体的なFDDNP-PET結合値は,側頭,頭頂,後部帯状回,前頭の各脳領域の平均値と定義された。さらにFDDNP-PET結合値は,2-deoxy-2-[18F]fluoro-D-glucose(FDG)-PETの代謝測定やMRIの容積測定よりも診断群の鑑別に優れていた。現在,ADの確定診断は多くがFDG-PETやMRIに依存している。
分布は剖検の蓄積パターンと一致
Small博士らは,記憶障害があると自己申告したボランティア83例を研究に登録し,認知機能検査に基づきAD群(25例),軽度認知機能障害群(28例),認知機能障害のない対照群(30例)に分類した。FDDNP-PETスキャンに加えて,全例にFDG-PETスキャンを実施した。また,72例にはMRIを実施した。観察されたFDDNP結合の分布パターンは,剖検で確認されたアミロイド斑と神経原線維変化の蓄積パターンと一致した。
FDDNP-PETスキャンの14か月後に死亡したAD患者1例の剖検では,アミロイド斑と神経原線維変化のin vitroの濃度が高い領域と,in vivoのFDDNP-PET結合増加が示された領域とが非常によく一致していた。FDDNP結合値の高い内側側頭領域(海馬と内嗅領皮質)は,免疫反応性の神経原線維変化に富んでいたが,アミロイド斑はそれほど多くなかった。一方,その他の新皮質領域(外側側頭,後部帯状回,前頭領域)では免疫反応性のアミロイド斑が高濃度に認められ,一部に神経原線維変化も見られた。
内側側頭領域でFDDNP結合高値
Small博士らは,健忘性軽度認知機能障害患者を対象とした以前の神経病理学的研究について,「内側側頭領域の神経原線維変化量が正常加齢とADとの中間で,神経炎性とびまん性アミロイド斑,神経原線維変化が新皮質と辺縁系の全体にわたり広く分布していることが示された」と説明。「今回の被験者のうち,軽度認知機能障害患者のほとんどは記憶障害も伴っており(その他の認知機能変化を伴う例も伴わない例もあった),ADの被験者と同等に内側側頭領域のFDDNP結合値が高かった。この知見は健忘性軽度認知機能障害は,しばしばADの前駆症状であるという以前の観察結果と一致する」と述べている。
対照群は,軽度認知機能障害群やAD群よりも年齢が大幅に低かったが,55歳末満の者を解析から除外して3群間の年齢の有意差を排除しても,結果はほとんど変わらなかった。
これまで,AD患者と正常加齢のいずれにおいても,βアミロイド蛋白質は老人斑に,タウ蛋白質は神経原線維変化に予測可能な空間的パターンで蓄積することが知られていた。剖検でADと診断される条件は,脳内にアミロイド斑と神経原線維変化が高濃度に存在することである。
同博士らは「軽度認知機能障害については,これまでの研究で神経原線維変化が海馬などの内側側頭領域で検出されている。軽度認知機能障害がADに進行すると,神経原線維変化は脳の頭頂と前頭新皮質領域に拡大する」と説明している。
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対照群の1例と軽度認知機能障害群からフォローアップでAD群に再分類された1例の頭頂領域(上段)と側頭領域(下段)のFDDNP-PETスキャン像。軽度認知機能障害群からAD群に再分類された被験者のスキャン像では,FDDNP結合の増加が前頭領域(8.6%)、頭頂領域(8.9%),外側側頭領域(6・6%)に認められる。赤色と黄色がFDDNP結合値の高い領域 |
私の感想
FDDNPはアミロイド斑と神経原線維変化の双方に結合に結合するようですから、これまでアルツハイマー病の最終確定診断が「剖検」に委ねられていた状況をも変えてしまう可能性がありますね。
しかも早期診断能が、FDG-PETの代謝測定やMRIの容積測定よりも優れているようですから、FDDNP-PETによる超早期診断→ワクチン療法による早期治療・予防という夢のような展望が開けてきた感じがしますね。