前頭前野の両側性萎縮に対しては、アルコール過飲と高脂血症が特異的に大きく作用!
側頭葉は高血圧によって萎縮しやすい!
高脂血症はさらに高血圧とは違った形で白質の崩壊を引き起こし、これもゆっくりとではあるが痴呆状態を生じる!
「Able Brain System」(Mエルグ TEL:018-862-3033)
わが国ではこれまで体系的な痴呆予肪の対策は捉唱されていないし、長年月をかけた予防体制の研究なども、筆者の知る限り実効ある形では行われていない。
さて、私見によれば、予防と予測の問題は表裏をなすものである。もし人々の痴呆化を有効に予測する手法が確立されるなら、その予測に役立つ因子を制御することによって、有効な予防手段が出現する可能性が高い。以下では、筆者らが開発し、最近地域活動に応用している「痴呆予測・予防システム」の基本的な考え方とデータの特徴について述べる。
(2)個々の脳障害類型と危険因子の対応
筆者は、十数年前からMRIの脳画像情報をデータベース化することによって、多くの脳障害の類型別に、これらに寄与する既往歴や背景因子を同定する作業を統けてきた。これにより、例えば前頭前野の両側性萎縮に対しては、アルコール過飲と高脂血症が特異的に大きく作用し、その他にはほとんど有力な因子は存在しないことを明らかにしたこ。また、高血圧は、単に脳血管系の危険因子として作用するばかりでなく、脳全体の栄養状態や萎縮に関与し、とりわけ側頭葉は高血圧によって萎縮しやすいことなども明らかとなった。また、高血圧者の一部には、海馬の萎縮が生じてアルッハイマー型痴呆といわれる型の痴呆を有意に多く生じることも判明した。
他方、高脂血症はさらに高血圧とは違った形で白質の崩壊を引き起こし、これもゆっくりとではあるが痴呆状態を生じる。例えば、血清の総コレステロールは220mg/dlでは脳障害域の中にあり、脳障害リスクを十分低下させるには、平均的には総コレステロール値を180mg/dl以下にすべきことも報告した。また、高脂血症はとりわけ女性において、不安や抑うつの危険因子となることも明らかになっている。
これらの関係は、最近の疫学的手法である多重ロジスティック解析を用いることで容易に表現することができる。個々の因子の計数が求められれば、これを用いて脳障害の発生確率と頻度とを、逆推定することができる。
(3)脳障害から痴呆の予測へ
次に、脳障害と痴呆との関係は、やはりロジスティックモデルを用いて逆推定モデル化することができる。これにより例えば、大脳皮質の全般的萎縮(脳溝拡大)は、局所的な神経学的症状とは相関しないが、痴呆の進行とは明らかに関係を持つことなどもわかる。MRI上でT2高信号を呈する白質の障害も、しばしば「無症候性脳梗塞」という用語で呼ばれるが、これは誤解を招く用語であり、明らかに痴呆に寄与する重大な障害である。
以上に述べた二つの統計的推論モデルをつなぎ合わせることで、生活歴や既往歴から現在および将来の脳障害のみならず痴呆の発生確率をも予測することができる。
(4)痴呆予防運動の具体的展開へ
このシステムを実際に106名の痴呆者を含む429名の患者(MRIは265名)に適用したところ、各種脳障害の有無については平均77.0%の、また痴呆の有無については86%の正答率を得た。すなわち、現段階でも、どの因子を制御すればどの程度痴呆を予防できるかについて、十分有用な示唆を得ることができることがわかった。本システムは「Able Brain System」という名前で公表してあり(Mエルグ TEL:018-862-3033)、すでに秋田地方の特定地域の痴呆予防活動に利用され、自治体や保健婦活動の道具となって有効性が示されている。
(秋田大教授 保健管理センター所長・苗村育郎)
論文の原著を見ていないため、どの程度信頼性が高いデータかはチェックしておりませんが、極めて示唆に富む論文であることに違いはありません。
「側頭葉は高血圧によって萎縮しやすい」。そして、高血圧患者さんの一部には、海馬の萎縮が生じてアルツハイマー型痴呆を発症しやすい(精神医学40:279、1998、苗村育郎)等のデータも大変考えさせられるデータですね。
高齢発症のアルツハイマー型痴呆は、これらの解析を重ねることにより随分と予防できる時代が早期に来るかもしれませんね。しかし若年発症のアルツハイマー病は、高血圧・高脂血症とはあまり関係ないので、やはり遺伝子研究が鍵を握るように思いますね。