「痴ほう」と「うつ病」の見分け方!
関東地方に住む主婦(61)は、二年前から、何をするのもおっくうに感じるようになった。家事をす気がせず、買い物に行っても何を買っていいか分からない。夜眠れず、睡眠剤を飲み始めた。しばらくすると、一日ぼ〜っとして何も話さなくなった。日付も分からずトイレも使えなくなった。近くの診療内科で「アルツハイマーがある」と言われ、薬を処方されたが良くならない。夫に連れられて専門病院の精神科を受診した。
診察では、押し黙って時々小声で「分からない」と答えるだけ。知能テストの結果は高度痴ほうの点数だった。だが、感情がなく「何も答えられない」という患者の樣子などから、うつ病と診断。抗うつ剤を飲み始めて約三週間で、はっきり受け答えできるようになり、笑顔も戻った。
老年精神医学専門の須貝佑一・浴風会病院精神科医長は「高齢者のうつ病は、痴ほうに似た症状が出る場合があり、専門医でないと診断が難しい」という。日本のうつ病の患者数は把握されていないが、市橋クリニック(東京)の市橋秀夫医師は「海外では高齢者の十数%が治療の必要なうつ症状との推計もある。高齢者は、肉親の喪失体験など、うつ病を起こす誘因が多い」と話す。
高齢者のうつ病では「自分は悪い」という自責感が強く、それが「警察につかまる」などの妄想になることがある。注意力の低下や優柔不断も強まり、一度聞いたはずの内容を確認されても「わからない」と答える。一見、痴ほう症の記憶障害だ。
痴ほう症との見分け方は、以下の通りだ。
痴ほうとうつ病の見分け方
痴ほうに比べて、うつは発症がより急。
ニコニコするなど多幸感の人が少なくない痴ほうに対して、うつは表情がなく何も話さない。
痴ほうでは質問がわからないと言い訳したりはぐらかしたりするが、うつではわからないことを認める。
痴ほうの妄想は他人を攻撃することがあるが、うつでは自分を責める。
うつでは食欲が減退することが多い。
「痴ほう症が治った!」という話を時折聞かれると思いますが、このようなケースは「うつ病」を「アルツハイマー病」と誤診しているケースがほとんどです。