ドネペジルの治療開始が遅いと、最大の効果を得られない可能性がある!
アリセプトの長期投薬が可能に!
2002年4月13日(土曜日)、東京・経団連会館において、第3回の研究会が開催され、私も参加してきました。学術的な面では、「やはり早期からアリセプトを使用した方が有用性の期間が長い」という主旨の演題内容が多く、早期診断の必要性が改めて確認されましたが、学術的に興味深い話題は、前回の第2回研究会より少なかったように思います(第2回研究会ではかなり多くの質問をしましたので、13日に頂いた第2回の講演集には、私の名前がたいへん多く入っておりました)。
私が気になった主な情報をお届けいたします。
(1)長期投薬が可能に!
アリセプトの長期投薬に関しては、冒頭で長谷川和夫(代表世話人)先生が話題提供され、そして最後に座長の先生(広島大学・中村重信教授)がコメントされておりました。
「この4月より、アリセプトも長期投薬が可能となり、60日でも90日でも処方可能となりましたが、アルツハイマー病という疾患の性格上処方日数は30日程度にとどめるべきでしょう」と話されておりました。
(2)中止後のリバウンド現象は必発である。この文献(アルツハイマー型痴呆患者におけるドネペジルの有効性と安全性についての多施設第III相長期オープン試験=Doody,R.S. et al.:Arch Neurol.,58:427-433,2001)より、アリセプト中止(=washout)の期間が6週間にわたると、今までドネペジル(商品名:アリセプト)を内服し、進行を遅らせた効果が消失する事実は重要である。
軽度から中等度のアルツハイマー型痴呆患者において、ドネペジルの144週(2.8年)までの長期投与は有効かつ安全であることが認められた。
アルツハイマー型痴呆患者におけるドネペジルの治療開始が遅いと、最大の効果を得られない可能性がある。
(3)欧米のデータをそのまま日本に当てはめることは問題があるが、Study 301の結果から判断すれば、5mgの投薬継続では、39週程度でプラセボ群と差がなくなるから、やはり10mg投与のようなケースが必要な場合もあるのではないか。今後の検討課題です。
(4)アリセプトの有効性は、AchRα7(=アセチルコリンのレセプター関連遺伝子)遺伝子の多型性を調べることで、ある程度は予測できた。
(鳥取大学 浦上克哉先生)
(5)アリセプトは、幻覚・妄想といった周辺症状にも効果を発揮する場合がある。効果が出る場合には、通常約1か月で幻覚・妄想は消失します。
作用機序としては、アセチルコリン活性の低下によって、相対的に基底核のドーパミン活性が上昇すると、幻覚・妄想が発現することがあるため、それがアリセプト投与で解消されるためだろう。
(国立下総療養所 堀 宏治先生)
(6)アリセプトの「後期興奮」は、投薬が開始されてから多くは2〜3か月後に出現します。その頻度は、24.4%でした。
パーキンソニズムの副作用が出ても、3日ほど服用を中止すると、washoutされ副作用は消失します。
(愛知県厚生連海南病院 河野和彦先生)
(7)レスポンダーかノンレスポンダーかは、服用開始後12週で判断できます。しかし、一見薬が効いていないように見えても(=認知機能評価で点数が改善しない)、中止したらリバウンド現象が起きて、認知機能評価で点数が下がり、レスポンダーであったことが確認されるというケースもあります。
6週のwashout期間では、中断が長すぎて、投薬再開後の認知機能の戻りが悪いので、レスポンダーかノンレスポンダーかを評価するには、我々の検討では3週間程度のwashout期間が妥当と思われました。
(埼玉精神神経センター 丸木雄一先生)
(8)Feldmanの報告書(重症例における検討)の問題点は、24週以降の効果の持続が不明である点です。
(札幌医科大学 中野倫仁先生)
私の感想
『ドネペジルの治療開始が遅いと、最大の効果を得られない可能性がある』という部分は、特に大切な部分ですね。
私の検討では、「重症例でも意外と有効例が多い」ことが分かっており、以前にも学会(第20回日本痴呆学会)・このHP上でも紹介してきました。それ自体は、Feldman(Neurology 2001)の報告(「高度例を対象とした試験ではおそらく初めてアリセプトの有効性が確認された」)で確認されているのですが、重症例になってから投薬したのでは、T最大の効果Uは得られないと思われるという「仮説」が提唱されたわけです。今後更なる検討が必要な部分ですね。
AD進行初期には、アセチルコリン伝達が活動過多に(平成14年4月4日号 Medical Tribune) ということが話題になっており、早期から投薬開始すべきかどうかでは新しい疑問が投げかけられています。そのことに関しては、座長の田邉敬貴(愛媛大学)先生が少し触れましたが、演者の一人池田学(愛媛大学)先生は、「MCIの定義は確立されたとは言い難い部分もあるが、やはりMCIの段階から投薬すべきではないか」と話されておりました。
しかしながら、定義が不明確という問題以上に、「MCIの自然経過がきっちり確認されたとは言えない状況で、アルツハイマー病になるのかどうか分からない病態に対してアリセプトを投薬することには疑問がありますね。」と私とある演者の先生は、懇親会で意見が一致しました。
懇親会会場で、ファイザー製薬(兵庫県)の方より、「先生のHPはいつもアクセス数が1ケタのうちに訪問しておりますよ」という話を伺いました。今回の学会記報告は如何ですか? よろしければ感想などお聞かせ下さいね。