ワクチン接種を受けた患者は,1年後の脳萎縮が対照に比し有意に強い!
(冒頭省略)
ワクチン接種患者の臨床経過
このワクチンの接種(=筋肉注射するタイプのワクチン療法)はそれ以上行われないことになったが,この治験にエントリーした患者のfollow-upは継続された.Hock,Nitchらは1年後の結果を報告した.それによると,組織染色により老人斑に結合する抗体が上昇した患者では,上昇しなかった患者より有意にMMSEでみる認知機能の低下が軽かった.本年7月フィラデルフィアで開催された国際アルツハイマー病学会では,治験に参加した全360例の1年後の結果が報告された.それによると,Hockらの報告程著しい差は見られなかったが,ELISAによるAβ抗体が高値を示した患者では,そうでない患者に比し記憶その他いくつかの機能評価項目で有意差が見られた.また,Nitchらは3年後の結果を報告し,抗体が上昇した何例かでは完全に進行が停止したとの報告を行った.ここで問題になるのは,Nitchらの結果は良すぎるのではないかということである.しかし,抗体の測定方法が異なっており,NitchはELISA抗体は臨床経過と相関しないと述べている.ここに,有効な抗体とは一体どういう抗体なのか,それを測定する銑敏な方法は何かが大変重要な研究課題として浮上している.
もう一つ,この治験で興味ある所見が見られている.それはMRIによる脳萎縮である.先の国際アルツハイマー病学会では,ワクチン接種を受けた患者は,1年後の脳萎縮が対照に比し有意に強いことが報告された.これに対しNitchらは,10月にベニスで行われた国際神経免疫学会で1年後及び3年後のMRI結果を報告した.それによると,1年後は確かにワクチン接種患者の脳萎縮は対照より有意に強かったが,3年後はワクチン接種者の脳萎縮は改善し,対照に比し有意に萎縮が軽かったという.1年後の脳萎縮がワクチン接種者で強かった理由として,潜在性の脳炎が起こっていたことも考えられるが,むしろ老人斑が消えることで炎症が減少し,炎症(=腫れ)がひいたことによって脳萎縮が強く見えたのではないかと筆者は考えている.
(以下省略)
(国立長寿医療センター研究所 田平 武)
私の感想
筆者の田平先生はこの文献のP277で、『現在サルでのワクチン投与が行われており、それがうまく行くとヒトでの治験を行いたいと考えている』と述べています。
H17年には、ヒトでの臨床試験が始まると言われておりましたが、この記載を読むともう少し遅れるかも知れませんね。
MRIにおける脳萎縮の経過は興味深いデータですね。