ワクチン接種により認知機能が回復し正常化することはない!
(冒頭省略)
V. ワクチン接種患者の臨床経過
このワクチン接種はそれ以上行われないことになったが(AN−1792:受身免疫を受けたマウスは,学習障害の発現が抑制ないし改善することが示されたため,ヒトでの治験が行われた。このワクチンはAN−1792と呼ばれ,合成Aβ1-42とアジュバントQS21よりなり,筋注するタイプであった。第I相試験は英国と米国で行われ,AN−1792ワクチンが1カ月に1回,6カ月間投与されたが,とくに副作用はみられなかった。そこでヨーロッパの数カ国が参加して第II相試験が行われた。しかし,第II相試験に入りワクチンを1〜2回接種したところで,副作用としての髄膜脳炎が実薬群280名中約6%に出現したため,2002年はじめ,この治験は中止になった。),この治験にエントリーした患者の経過観察は継続された。Hock,Nitchらは組織染色により老人斑に結合する抗体(tissue amyloid plaque immuno-reactive antibody:TAPIR抗体)が上昇した患者では,上昇しなかった患者より1年後の認知機能の低下が有意に軽かったと報告した。Gilmanらは治験に参加した全症例の1年後の結果を報告した。それによるとAβに対するELISA抗体が高値であった患者は,低値であった患者よりいくつかの記憶機能ドメイン等の認知機能が有意に良かった。しかし,Hock,Nitshらが報告したようなMMSE(Mini-Mental State Examination)スコアに差はみられず,ワクチン接種患者でも同様の認知機能の低下がみられた。両者の違いは抗体測定の方法の違いにあるようであるが,両者に共通する点は,少なくともこのワクチン接種により認知機能が回復し正常化することはないということである。このことは,ヒトの脳の代償機能は大きく,病変の進行によりもはや代償機能が破綻したときに認知症を発症するのであって,その時点で老人斑を除去しても元に復することはないことを意味している。最近Nitshらはワクチン接種により進行が停止したと思われる症例があることを学会で報告しており,発症後では進行を停止させる効果は期待できるかもしれない。あるいはその後認知機能が徐々に回復する可能性はまだ残されている。いずれにしてもアルツハイマー病を早期に発見し,早期にワクチン接種することにより発症を予防するのがベストではないかと考えられる。
(以下省略)
(国立長寿医療センター研究所 田平 武)
私の感想
ちょっとショッキングな文章がありましたね。=『少なくともこのワクチン接種により認知機能が回復し正常化することはないということである。このことは,ヒトの脳の代償機能は大きく,病変の進行によりもはや代償機能が破綻したときに認知症を発症するのであって,その時点で老人斑を除去しても元に復することはないことを意味している。』
しかし、発症後超早期に診断してワクチン療法を施せば、進行を停止させる効果は期待できるかもしれない!という希望は持てるようです。この辺りの結果が出てくるには臨床試験後長い年月を要するような気がしますね。