欧米におけるアルツハイマー病終末期のケアの現状!
アルツハイマー病は死因の第4位!
Q:
Home Care MEDICINE7巻1号13ページ(Medical Tribune)に、アルツハイマー病終末期に、脳の病変が進行すると体が動かせなくなり、食べ物も飲み込めなくなる。日本ではそこで胃に管を入れて命を永らえるが、それをしない米国や豪州では、アルツハイマー病は死因の第4位を占めている、とある。
これは、経鼻経管栄養法、胃痩栄養法、あるいは中心静脈栄養法、末梢からの輪液も行わないということか。この決定は、患者の元気な時、あるいはアルツハイマー病のごく初期の段階に、患者自身が自己決定し文書に署名するなどして行われているのか。あるいは家族の意思によるものか。医師などの判断で、積極的にアルツハイマーの終末期には栄養法が行われないのか。法的問題はないのか。
また、アルツハイマー病の終末期の対応について、群馬大学・山口晴保教授に。
(山梨県 I)
A:
本邦では、アルツハイマー病が5〜10年ほどの経過で死に至る疾患であることがきちんと認識されていない。終末期には、自発語なし、表情なし、四肢の随意運動なし、尿便失禁と失外套症候群に近い状態となる。こうなると嚥下が困難になり、随意的に食べるのではなく、口の中にとろみをつけた食物塊が入ると反射的に嚥下が起こって飲み込む状態となり、いずれはそれも困難になるので、経管栄養(胃痩を含む)や中心静脈栄養を行わなければ死に至る(参考文献1=省略)。
スウェーデンでは、このような失外套に近い段階になったら、姿勢、食物の形態など経口摂取のために最大限の努力をするが、飲み込めなくなったら末梢からの点滴による補液のみで看取る。もちろん、回復の可能性がある急性期疾患による嚥下障害であれば一時的に経管・経静脈栄養を行う。
オランダのナーシングホームを視察した時に驚いたのは、認知症が進んで嚥下障害のある方が、きちんと背広にネクタイ姿で介護を受けながら夕食を摂っていた一方、経管栄養の方を一人も見かけなかったことである。
米国でも同様に基本的には経管・経静脈栄養を行わないが、州によってリビングウィル法の内容が異なるので対応が異なる。経管栄養や輸液は、気道分泌物を増加させ、呼吸困難や浮腫を悪化させるので、その中止・差し控えは倫理的との見解(参考文献2=省略)が支配的だが、賛否両論あるようである。
認知症終末期の緩和医療について、この段階に至っては本人の同意は得られない。米国のリビングウィル法では施行に本人の同意が必要なので、たとえ元気な時に署名してあってもアルツハイマー病終末期には役に立たないのである。そこで、米国ではDurable Power of Attorney(永続的権限行使)という制度が作られている。これは、なるべく本人の事前の意思(自己決定権)を尊重しようという趣旨である。本邦の任意後見人に医療決定権を持たせたものとご理解いただきたい。
ちなみに、本邦の後見人や任意後見人には治療行為の代諾権はない。本邦では、認知症末期の医療に誰が同意するのかという点が未整備である。医師が終末期緩和医療の判断を行うには、認知症の終末期医療に関してガイドラインが示され、法的な整備がなされることが前提であるが、本邦では一向に進んでいない。
(以下省略)
群馬大学医学部保健学科教授 山口晴保
東京大学医療倫理学 箕岡真子
私の感想
私は、認知症の終末期医療に関する治療方針は、家族との話し合いの中で阿吽の呼吸で決めていく問題のように感じていましたが(=経管栄養を導入するかどうかも含めて)、ガイドラインという発想を持っている研究者の方がおられるようですね。
私自身、欧米の認知症終末期医療の状況は、ほとんど経管栄養に移行しないという話はそれとなく聞いていたんですが、文書として目にするのは初めてです。かなり大きなインパクトを受けました。一口に欧米と言っても、いろいろ方針は違うと言うこともこの論文で良く理解できました。非常に良くまとまっている論文でしたのでご紹介させて頂きました(著作権の問題もあり一部割愛させて頂きました)。
私自身は、もし認知症で終末期に入ったら、経管栄養はやめて欲しいです。