痴呆:運転免許の更新に絡んで!
予防接種:公費助成の対象外になるケース!
(冒頭省略)
【予防接種と本人の意思確認】
具体的な事例を見てみると、高齢者施設での集団感染をきっかけとして、2001年に予防接種法が改正された。これにより、65歳以上の人がインフルエンザ予防接種を希望する場合、費用の一部が助成されることになった。しかし、予防接種において痴呆の患者の場合は本人の同意が得られないという理由で、公費助成の対象外になるケースが出てきた。予防接種法改正の付帯決議に、説明と本人の同意の徹底が盛り込まれたためで、本人の意思確認が必要になったからだ。そこで厚生労働省では、本人が意思表示をできない場合、家族と主治医の協力で対象者本人の意思確認を行うこととした。このような場合も主治医の意見は求められる。
医療行為の同意ができない痴呆患者には、成年後見人から同意してもらうことが望ましい。主治医は痴呆患者を診察する際、以上のことを十分に認識しておく必要がある。
【運転免許の更新に絡んで】
また、同年に道路交通法が改正され、一定の病気の人は運転免許更新時だけでなく、随時、専門医・主治医の診断書を提出し、運転免許証の取り消しおよび停止の申請が可能となった。痴呆の診断をした場合、その患者が運転免許証を持っているかを確認し、頻繁に運転をしているのか、あるいは仕事や生活上の日常生活において必要なのか、家族を含めて十分な討議が必要となる。この際に、患者の病状の把握を踏まえて、自動車運転をどうするのか、的確なアドバイスと説明が求められる。
特に注意を要するのは、運転免許証の更新時。更新書の病気・症状などの申告欄は、書類の裏側にあり、痴呆の患者はその欄の6番が対象となる。痴呆が進行した場合、患者の家族と相談して免許の取り消しを行うことになると、同申請書と診断書が必要となる。これらは、専門医や主治医の判断で作成することになる。
痴呆の患者による不幸な自動車事故の例がある。痴呆と診断された1週間後に、死亡事故を起こしてしまった患者がいる。医師が、患者とその家族に痴呆であることを十分に説明して告知し、さらに免許取り消しの申請をしていれば、交通事故を未然に防げたかもしれない。
痴呆と診断されていたのにもかかわらず、運転免許書の取り消しまたは停止の申請を行わないことが、直ちに法的な問題を生じさせることはない。しかし、症状から運転を控えることが望ましい患者に対して、医師は家族などに十分な説明をすることが大切となる。もし、このことを怠ってしまい事故などが発生した場合は、医師の賠償責任が問われることがある。痴呆の患者が運転することは危険であると医師が認識していたのに、十分な説明を尽くしていない場合、医師は善管注意義務と説明報告義務を問われることもある。
主治医には今、医療的対応に加え、様々な場面において法的責任を問われる範囲が広がっている。早期診断の重要性はもとより、痴呆診断までの判断や法律的な側面から、地域における主治医の使命を改めて確認したい。
筑波大学大学院・ビジネス科学研究科 新井 誠教授
私の感想
私も、痴ほう症のご家族より、「運転の是非」について質問されることが時折ありました。今回の記事で、「法的な問題点」が理解でき、とても参加になりました。
新井先生のコメントは明快でいつも参考になります。