高齢認知症患者に地域作業療法が有効

 

 地域作業療法(COT)!

 治療必要人数(NNT)は2.8!


〔ニューヨーク〕

 ナイメーヘン大学医療センター(オランダ・ナイメーヘン)のMaud J.L.Graff博士らによる研究で,地域作業療法(COT)が高齢認知症患者とその介護者にとってきわめて有効な非薬剤療法であることが示された。詳細はBMJ(2008;336:134−138)に発表された。

 

治療効果も費用効果も高い

 地域ベースの作業療法(OT)と通常ケアを比較した今回の研究では,COTは高齢認知症患者の日常生活機能や介護者に自信を与えるだけでなく,双方のQOL,気分,健康状態も改善させることが示された。これらは認知症の治療に関する研究で,おもなエンドポイントとして推奨されている。

 今回の研究では,病院やナーシングホームなどの施設以外で生活している軽度〜中等度の65歳以上の高齢認知症患者135例を,5週間で10回のCOTを受ける群と通常ケアを受ける群(対照群)にランダムに割り付けた。両群の社会経済的背景やその他の患者背景は同等であった。

 Graff博士らは「COTは費用効果に優れる介入方法であるため,あらゆる地域保健サービス,プライマリケア,外来診療などで採用することを堆奨する」と述べている。

 患者と介護者1組当たりのCOTの全体的な費用は,3か月間で1,200ユーロ(1,790ドル)で,通常ケアと比べて安価であった。

 3か月間のすべてのケアに要した患者と介護者1組当たりの平均費用はCOT群で1万2,563ユーロ(1万8,433ドル),対照群では1万4,311ユーロ(2万998ドル)であった。つまり,COTは3か月間で1組の患者・介護者当たり平均1,748ユーロ(2,621ドル)のコスト減となるため,費用効果に優れることが示された。

 COTは,認知症患者の日常生活機能と介護者の自信を有意に改善するため,効果的かつ効率的な介入方法となる。COT群の治療奏効率は対照群に比ベ36%高かった。

 

在宅ケアでも効果が期待できる

 患者132例(COT群67例,対象群 65例)を対象としたintention to treat(ITT)解析では,26組の患者・介護者で認知症の治療が奏効したことが示された。この26組のうち,25組がCOT群(37%),65例中の1組が対照群(1.5%)に属していた。

 3か月後の試験終了時点まで残っていた患者数は,COT群68例中53例,対照群67例中52例であった。効果はITT解析で評価された。

 治療必要人数(NNT)は2.8(95%信頼区間2.7〜2.9)であった。有害事象は両群とも見られなかった。3か月間の試験期間中,COT群の各患者・介護者の自宅に作業療法士が平均9回訪問し,1時間の作業療法を行った。このほかに事務手続さ,インタビューデータ解析,アドバイス提供,ケアチームのミーティングなどに1組当たり7時間が費やされた。

 重要なことに,今回の研究対象となったCOTは,家族などのケア提供者のいない高齢認知症患者にも適用できることが示唆された。在宅ケアワーカーのサービスを受けている高齢者でも,ケアワーカーがOTのトレーニングを受けていれば,COTの効果が期待できる。

 現行の在宅ケアワーカーのトレーニングには,OTは含まれていない。在宅ケアワーカーにOTのトレーニングを提供することが,より効果的な患者ケアや費用の抑制につながると考えられる。

 Graff博士らは,今回の研究で検討されたCOTを継続して行う場合,在宅ケアワーカーを教育して家族などのケア提供者を監督できるようになれば有益だと考えている。ケアワーカーによる監督期間は,COTによる試験的介入の終了後数か月程度となる。

 同博士らは「OTに関する特別なトレーニングを受けた在宅ケアワーカーが,作業療法士の監督下でOTの一部を行うことが可能であるかどうかを検討するのも興味深い」と述べている。

 

作業療法士が業務推進の中心

 認知症は医療資源を最も消費する3大疾患の1つであることからも,今回の研究の重要性がうかがえる。

 認知症は患者自身の障害,ケアの負担,家族関係や友人関係の悪化原因となるだけでなく,大幅な医療費増大の原因ともなる。専門家の間では,認知症の有病率は今後20年間で倍増すると見られている。

 オランダでは,2003年の国民医療費の5.3%が認知症に使われた。また,認知症ケアに関連する費用は75〜84歳の年齢層に対する総医療費の14%,85歳以上に対する総医療費の22%を占めた。

 地域で暮らす認知症患者に対するOTの有益性と費用効果は,最近の複数の研究で示されているが,プライマリケアでOTを認知症患者に推奨することはあまりない。

 Graff博士は「適切な教育・訓練を受けた作業療法士の数を増やし,複雑なCOTによる介入を行えるようにする必要がある。COTには作業療法診断,認知症に特化した観察・インタビュー技術,OT目標設定,有効な治療計画の策定などが含まれる。COTに関するさまざまな業務は作業療法士が行うのが最適である」と述べている。

(2008.5.15 Medical Tribune P30)

 

私の感想

 認知症発症後のリハビリテーションとして効果が科学的に(大規模に)実証されたものは存在しませんが、小規模にいろんな取り組みは行われております。

 「回想療法」・「学習療法」などが代表的なものと思います。私は実践していませんので、詳細に関しては分かりかねますが・・。

 

学習療法:

 http://www.inetmie.or.jp/~kasamie/AlzGakusyuuReha.shtml

 

 回想療法に関しては、ネットで検索するといろいろ載っていると思います。

 

 一方、発症前の「予防」としては、厚労省が科学的に実証したデータがあります。

 http://www.inetmie.or.jp/~kasamie/AlzYobou0527Yomi.shtml

 =「週3〜5回、1回20〜60分、音楽に合わせてステップを踏む簡単な有酸素運動の実施&また魚の脂質に含まれるDHA(ドコサヘキサエン酸)やEPA(エイコサペンタエン酸)などを含む栄養補助剤を毎日取るとともに、30分以内の昼寝をした結果、生活習慣を指導したグループでは認知症の発症率が3・1%だったのに対し、しなかったグループは4・3%にのぼった」という予防効果(発症率が4・3%が3・1%に減少=完全に予防できるわけではありませんが、わずかに発症率が減少します)が確認されています。

 

 認知症患者さんの多くは、リハビリの類(デイサービスへの参加等)への意欲が乏しいです(むしろ嫌がる方の方が多いような印象があります)。無理に参加させても効果はないでしょうし、嫌がっている方をどのようにやる気にさせるかは、なかなか難しい問題だと思います。

 

参考資料:

1)早期のアルツハイマー病あるいは脳血管性痴呆の記憶障害等に対する認知訓練の効果に関するエビデンスはなく、方法論的な問題を考慮した、よくデザインされたさらなるランダム化比較試験が必要である。(2005年/第42回日本リハビリテーション医学会・教育講演、博野信次)

(リハビリテーション医学Vol.42 No.9 2005年9月P637〜642)

 

2)回想療法

 回想法(=若い時のことを思い出す高齢者の心理療法)は高齢者の脳の活性化や情緒安定に効果があると言われるが、国立療養所中部病院の遠藤英俊内科医長のグループの研究で初めて科学的に効果が裏付けられた。

 愛知県師勝町の回想法センターで65歳以上の人を対象に開かれている「回想法スクール」の参加者26人を対象に、「ふるさとの話」「漬物をつける」などをテーマに作業療法士らが参加者と語り合った(スクールは週1回1時間、計8回)。

 その結果、軽い物忘れのある人については、スクール参加の前後で2割程度、認知機能の検査の数値がアップした。

 また、町が参加者の家族に聞き取り調査をしたところ、「笑顔が多くなった」「参加前は感情に波があったが、穏やかになった」「自分から動くようになった」など、家族にも好評だった。

(平成15年1月17日付朝日新聞・家庭)

 

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