痴呆症で見られる症状

 

 痴呆の定義(WHO&アメリカ精神医学会)!

 「保続」! 「オウム返し」!

 着衣失行:右側頭頂葉〜後頭葉の障害!

 徘徊:右側の頭頂葉〜後頭葉の障害による視空間失認が基礎になって起こる! 


 「痴呆」は病気です。しかし、「物忘れ」だけでは病気でないこともあり、それらを区別することは重要です。本人にとっても重大な問題ですが、家族や国のレベルでも由々しき問題です。単なる物忘れだけなら、介護保険の世話になる度合いが低く、経済的負担も少なくてすみます。

 「痴呆」とは何か? 定義として世界保健機構(WHO)やアメリカ精神医学会によるものがよく使われます。WHOの定義は「慢性あるいは進行する脳の病気によって生じる記憶の障害、思考能力の低下、時・場所・人が分からない(見当識障害)、理解が悪い、計算ができない、学習能力の低下、言語の障害、判断力の低下など多面にわたる高次の大脳機能が障害される症候群」です。アメリカ精神医学会のものは「複数の認知機能の障害があり、そのため社会的・職業的にも能力の低下を示す」ことです。認知機能障害の中で必須のものは記憶力低下、とくに短期記憶の障害、記銘力障害で、痴呆が早期から現れます。ただ、古い記憶も多少とも低下し、病気が進むに従い著しくなります。

 記憶力低下は通常の物忘れでもみられますが、痴呆症では記憶障害以外に4種類の認知機能障害が起こります。1)失語、2)失行、3)失認、4)実行機能の障害は「痴呆」ではみられますが、生理的な「物忘れ」では認めません。

 

1)失語

 声は出るが、物の名前が言えない運動性失語や、音は聞こえるが、意味が理解できない人もあります(感覚性失語)。運動性失語は言葉が出ず、口数が減り、発語に努力が必要です。リズム感がなく、語句が短く、単語を羅列します。「めがね」とか「時計」などの単語が出ず、「あれ」とか「それ」と言います。名前や場所が分からず「あの人」とか「あそこ」と言います。運動性失語のある人のMRI検査では左前頭葉の後方下部で、側頭葉に近い所が小さくなり、左前頭葉後方下部の血流が下がり、左前頭葉後方下部の働きが低下しています。

 感覚性失語のある人は言葉が出るものの、内容が理解できません。「言語明瞭、意味不明」といわれ、話の長いのが運動性失語と違います。感覚性失語のある人は「言い間違え」(錯語)が多く、「めがね」のことを「時計」などと言います。間違った字を書くため読めないこともあります。MRIで左側頭葉の上後方が萎縮し、血流も下がります。

 言葉の異常はアルツハイマー病、脳血管性痴呆などの病気でも現れますが、とくに目立つ痴呆症があります。前頭葉や側頭葉が萎縮する痴呆症で「前頭側頭型痴呆」と呼び、代表格はピック病です。ピック病ではさまざまな言葉の障害が現れます。同じことを何度も繰り返す「保続」が起こり、「今日は何月何日?」と尋ねると、「4月1日」と答えます。次に、「ここはどこ?」と尋ねると、「4月1日」と答え、娘さんを指して「この人はだれ?」に対して「4月1日」と言います。言葉だけでなく、行動の保続もあり、手で膝を叩く動作をいつまでも続けますピック病の人には「オウム返し」がよくあり、「今日は何日?」と言うと「今日は何日?」と答えます。腹をたててはいけません。

2)失行

 運動障害はなく、手や足が動くのに、まとまった動作や行為ができません。挨拶ができないとか、箸などの道具が使えない、図形がうまく書けないなどの不都合が生じます。そのため、日常生活にも差し障りがあり、家族も不思議がることが多いようです。

(中略)

 失行のある人は白い紙に色々な図形が書けません(構成失行)。左側の頭頂葉〜後頭薬の障害によって起こります。今まで使っていた道具(箸やマッチ)が使えないことがあります。箸を渡して、食事を摂取する動作もできません。物の使い方の指示に従えない障害(観念性失行)もあります。左側の頭領葉の広い部分に障害があると観念性失行が起こります。

 痴呆症の人はしばしば衣服を逆様(後前)に着ます(着衣失行)。右側頭頂葉〜後頭葉の障害で起こります。軽症の人は着衣失行にショックを受けますので、前後のない単純な衣服を使うと元気が出ることもあります。失行によって字が書けない(失行性失書)のは観念運動性失行、構成失行、観念性失行が加わったものと思われます。

3)失認

 感覚障害はないのですが、見たり、聞いたり、触ったりしてもそれが何か分かりません。日常使っているものを見ても何か分からず、使えません(視覚失認)。両側の後頭葉が障害されています。

 色が区別できない(色彩失認)のは左側後頭葉の障害によります。人の顔が区別できない(相貌失認)により娘を妻と見間違えることがあります。新しい記憶が失われ、古い記憶が残るため、昔の妻が娘と似ていたのでしょう

 空間情報を認識して、操作できないことがあります(視空間失認)。地図上での見当識障害があり、大阪市の場所を示せず、知っているはずの場所や道が分からなくなります。徘徊は右側の頭頂葉〜後頭葉の障害による視空間失認が基礎になって起こります

4)実行機能の障害

 計画を立てて、それを実行することができません。

(以下省略) 

(洛和会京都臨床治験センター所長 中村重信)

(平成16年6月25日発行「ぽ〜れぽ〜れ」287号)

 

私の感想

 分かりやすく良くまとまった記事でしたが、「実行機能障害」の項目はやや具体例に欠けておりましたので、具体例を紹介致します。

 「家電製品(テレビのリモコンなど)が使えなくなった」、「趣味や日課ができなくなった」、「簡単な家事もできなくなった」といった症状が、具体的な「実行機能障害」として挙げられます。

 

ご意見はこちらまで

ホームへ戻る