質問票は早期アルツハイマー病による軽度認知障害の識別に有用な可能性

 

 日常生活動作における依存性または自立性により予測できる可能性!


【10月11日シカゴ】

 重要な日常生活動作に補助を要する軽度認知障害患者はアルツハイマー病に進行しやすいと思われるという知見が、米国神経学会(ANA)第131回年次集会(シカゴ)で発表された。

 「軽度認知障害の診断には、機能的活動質問票(Functional Activities Questionnaire)[FAQ]などの日常生活動作の個別評価の解析が有用な可能性があることが、われわれの知見により示されている」と筆頭研究者のEdmond Teng, MD, PhDは発表で述べている。Teng博士は、カリフォルニア大学ロサンゼルス校David Geffen医学部アルツハイマー病センターの研究員である。

 同研究で用いた評価ツールFAQは、患者の介護者に対して実施されるものであり、これにより10項目の道具的な(instrumental)日常生活動作(IADLs)を行う患者の能力を評価する。軽度認知障害患者とアルツハイマー病患者との間では、一部の領域(domain)ではFAQのスコアが重複しているものの、この2疾患は、自立して自宅の近所から離れて移動できるかどうかによって最も有効に識別される(P=0.001)、と同博士は述べている。

 

 FAQで取り扱っている10領域を以下に示す。

 1.  小切手を切るほか、他の金銭的記録を維持管理する。

 2.  納税記録または作業記録を整理する。

 3.  1人で買い物をする。

 4.  技術を要するゲームをする。

 5.  コーヒーまたは紅茶をいれる。

 6.  バランスのとれた食事を用意する。

 7.  現在起こっている出来事の経過を追う。

 8.  テレビ番組、本、雑誌に関心を向け、理解する。

 9.  約束、家族の集まり、服薬を覚えている。

 10.  近所から離れて移動する。

 

 介護者は患者の各活動について0から3までの得点をつけた。0はその活動が正常に自立してできることを意味している。1はその活動を1人でできるが困難を伴うこと、2は補助を必要とすること、3はその活動をするには他人に依存することを意味している。

 同研究者らがこの研究を実施したのは、軽度認知障害を有する人たちでは基本的に問題のない機能的能力を有する状態が持続すると他の研究により示されていたためであった。しかし、他の研究では、そうした患者はIADLsが低下することが認められている。そこで、同研究者らは、FAQを用いて軽度認知障害患者と軽度アルツハイマー病患者とを識別できるかどうかを明らかにしようとした。

 同研究者らは、正常な対照被験者65例、軽度認知障害患者42例、軽度アルツハイマー病患者22例について、FAQへの回答を分析した。さらに、これらの被験者を、1領域に記憶欠損のある軽度認知障害、複数領域に記憶欠損のある軽度認知障害、または記憶欠損なしに分類し、さらに軽度アルツハイマー病を疾患の「可能性あり(possible)」と「可能性が高い(probable)」に細分した。

 軽度認知障害患者における総FAQスコアは、いずれのサブタイプでも同様であったが、対照群および軽度アルツハイマー病群との間には有意差があった(それぞれP<0.001)。Teng博士が示したように、自分の近所の外への移動ができる能力により、軽度認知障害とアルツハイマー病とは最も有効に識別された。この項目において1を超えるカットオフ値は、全軽度認知障害患者と全アルツハイマー病患者とを86%の割合で分類した。さらに、このスコアでは、複数領域に記憶欠損のある軽度認知障害患者とアルツハイマー病の可能性が高い被験者との分類率は87%であった。

 「定義した期間内にアルツハイマー病に変わる軽度認知障害患者の亜集団を真に確実に予測する神経心理学的手段があれば、最新世代のアルツハイマー病治療薬の計画が立てられるのみでなく、そうした薬剤の試験を行う上でも大きく進歩するであろう」とSam Gandy, MD, PhDは取材でMedscapeに話している。Gandy博士は、トーマスジェファーソン大学Farber神経科学研究所(ペンシルベニア州、フィラデルフィア)所長であり、米国立アルツハイマー病協会医学・科学審議会(National Medical and Scientific Advisory Council of the Alzheimer's Association)議長を務めている。なお、Gandy博士は、この研究には関わっていない。

 「これらの薬剤は主としてアミロイドの増加を標的としている。アミロイドの増加はアルツハイマー病のごく初期に見られる事象であり、臨床試験でこうした新薬を評価する対象が疾患初期であればあるほど好ましい」とGandy博士は付け加えた。「そうでなく、同疾患でのこうした検査が遅すぎれば、薬剤の「偽陰性」結果が得られる可能性があり、実際に十分に早期に行われた場合のみ、これらの薬剤が非常に有効となる可能性がある。疾患経過の「十分に早期」の極端な例は、一次・臨床前予防(primary preclinical prevention)である。これは、いかなる障害も現れないうちに、リスクのある人を知り、「発症前にアミロイドを食い止めたい」と思っており、結果的にそうなればいいと思う」。

 別の専門家は、こうした設定でFAQが有用であることに同意している。「複雑なIADLsにおける障害は軽度認知障害患者にみられる最も早期の機能的障害であることが多い」とカリフォルニア大学サンディエゴ校神経科学部長Leon Thal, MDはe-メールで記している。「FAQはIADLsを測定するための有用な手段である」

(ANA 131st Annual Meeting: Abstract S-20. Presented October 8, 2006.)

 

私の感想

 アルツハイマー病とMCIの鑑別は重要な課題ですが、最近はその鑑別の手段は、MRI(VSRAD)、SPECTなどの「検査機器」に期待される傾向が強かったのですが、「詳しい症状」の観察が実は大事なんでよ!という報告で注目される結果ですね。今後もこのような研究は大切だと思われます。

 

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