β蛋白はアミロイド前駆体蛋白(APP)がβ-セクレターゼとγ-セクレターゼによって切断されると生じる!
AD(アルツハイマー病)の発病機序はまだ完全には解明されてはいないが、脳に老人斑ができることが最も重要な出来事であると考えられている。老人斑はβ蛋白が繊維状のアミロイド蛋白となって沈着してできる。β蛋白はアミロイド前駆体蛋白(APP)がβ-セクレターゼとγ-セクレターゼによって切断されると生じるもので、AD患者ではこの切り出しが増加している。通常APPはα-セクレターゼによってβ蛋白の中程の位置で切断されるので、β蛋白はほとんど切り出されない。
β-セクレターゼはすでにBACEという物質であることが明らかにされ、その酵素活性を阻害する物質(インヒビター)の候補物質がすでにいくつか得られている。また、γ-セクレターゼはプレセニリンそのものあるいはそれと密接に関連する酵素で、そのインヒビターはいくつか得られている。これらはADの完治薬として注目されている。
γ-セクレターゼ阻害剤についてはphaseI臨床試験が行われた。副作用はあまりなかったとの発表であったが問題がない訳ではない。それは、γ-セクレターゼがNotch1などほかの蛋白質の切断にも関与しているからである。Notch1は成体では免疫細胞の分化に関与し、その切断を阻害すると免疫異常が起こることが分かっている。したがって、APPのγ-セクレターゼを特異的に阻害する薬剤の開発が望まれる。
β-セクレターゼ阻害剤の開発は世界中が苦労している。BACEのノックアウトマウスを作っても何も起こらないことから、その阻害剤はほかに大きな影響を与えないものと推定され、γ-セレクターゼ阻害剤よりよい薬となると期待されている。しかし、β-セクレターゼがほかの物質の切断にも関与していることが最近わかり、γ-セクレターゼと同じ問題をかかえている。
(国立療養所中部病院長寿医療研究センター長 田平 武)
私の感想
基礎的な研究の話しで、分かりにくいと思いますが、開発中のアルツハイマー病根治薬の作用機序を知るには良い論文でしたので、ご紹介いたしました。