アルツハイマー型痴呆患者の手続き記憶に関する縦断研究

 

 中等度以上のアルツハイマー型痴呆患者であっても,新しい手続き記憶を獲得し,長期保持できる可能性が示唆!


要旨

 重度から中等度の知的能力低下を認めた3例のアルツハイマー型痴呆患者を対象に,2種類の手続き記憶課題を実施し,その獲得と長期保持(1カ月,5カ月,20カ月)について検討した。

 3例のDAT患者は,いずれの課題についても,試行を重ねるごとに所要時間が減少し,5カ月後も短い時間で課題を遂行できた。3例中1例については,獲得から20カ月後の検査においても所要時間が短く,手続き記憶が保たれていたと考えられる。これより,中等度以上のアルツハイマー型痴呆患者であっても,新しい手続き記憶を獲得し,長期保持できることが示唆された。アルツハイマー型痴呆において,進行期にも保たれる能力が示されたことは,同疾患患者における認知的リハビリテーションの可能性を示唆しており,残された能力を活かしたQOLの向上が期待される。

(東京大学大学院総合文化研究科生命環境科学系認知行動科学 川合寛子ほか)

(脳と神経2002年4月号 P307〜311)

 

私の感想

 アルツハイマー病のリハビリ(デイケアなど)効果に関しては以前よりかなり議論がされてきました。その代表的なものは、このサイトです(http://www.inetmie.or.jp/~kasamie/ALZday-care.html)。今回の報告を読んで、少なくとも「手続き記憶」に関しては、アルツハイマー病患者さんにおいても学習効果が期待できることが示唆されました。適度なリハビリは、やはりアルツハイマー病患者さんにも必要だと思われますね。

 

【メモ・・・記憶の分類】

 記憶というものは、ものを覚える「記銘」、それを保存する「保持」、記銘したことを思い出す「再生」という過程よりなっている。

 この記憶は時間的な側面より、臨床的には即時記憶、近時記憶、遠隔記憶に分けられます。心理学用語では短期記憶・長期記憶の2つに分けられ、短期記憶は即時記憶に相当し、長期記憶に近時記憶と遠隔記憶が相当します。

 即時記憶は30秒以内の記憶で、近時記憶は30秒以上、分・日・週に及ぶ期間の記憶で、年余にわたる記憶が遠隔記憶であります。

 さて加齢に伴う記憶の低下とアルツハイマー病の記憶低下で、時間的側面での違いがあるのでしょうか。残念ながら加齢性の記憶力低下も、初期アルツハイマー病の記憶力低下も共に近時記憶の低下が主体です。ですから低下した記憶の種類からは、加齢性のものか初期アルツハイマー病なのかの判断は困難なわけです。

 

※長期記憶の分類(宣言記憶と手続き記憶がある)

(1)宣言記憶(意味記憶とエピソード記憶がある)

 a)意味記憶:社会的に誰もが知っているような事実や地名などの記憶

 b)エピソード記憶:個人的な経験たとえばみんなでピクニックへ行ったとか、夕食の内容などの記憶

(2)手続き記憶:自転車の乗り方のように体で覚えているもの

 

 意味記憶は加齢の影響を比較的受けにくいのに対し、エピソード記憶は加齢とともに低下します。エピソード記憶がほぼ1回だけ遭遇した出来事の記憶であるのに対し、意味記憶の場合には、長期にわたる学習がなされていることも加齢の影響が少ないことに関連していると考えられています。

 アルツハイマー病患者さんでは、加齢性の記憶力低下と異なり、意味記憶・エピソード記憶がともに強く障害されます。

 

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