正常な高齢者,AD発症前患者と初期AD患者は認知障害の進行経過の同一線上にある!
〔ワシントン〕カロリンスカ研究所(スウェーデン・ストックホルム)のLars
Backman博士らはアルツハイマー病(AD)に関する47件の研究についてメタアナリシスを行い,後年ADを発症する人々に見られる認知障害の特徴を明らかにした。AD患者には診断確定の数年前から各種の認知領域に初期徴候が現れ,脳機能が全般的に悪化した状態が持続し,その後機能が急激に低下する。この所見は,Neuropsychology(2005;19:520−531)に発表された。
厳しい基準満たす文献を選ぶ
Backman博士らはストックホルム老年学研究センター(ストックホルム),マックス・プランクヒト発育研究所(ベルリン),南フロリダ大学(フロリダ州タンパ)と共同で厳しい基準を満たす学術文献を選び,AD患者1207例の前臨床データと健常者9097例のデータを比較検討した。ADの発症前状態を検討する理由は,理論レベルでは正常な加齢から痴呆への移行を理解することが発症機序の解明に不可欠で,また臨床レベルではリスクを持つ人々を早期に特定でされば効果的な治療が行えるためである。
解析では,1985年1月〜2003年2月に発表された47件の学術文献を検討した。1985年は,系統的で信頼度の高いAD診断基準が導入された年である。
解析の結果,いずれの文献とも発症前患者は全般的な認知能力,生活記憶,知覚速度,実行機能の著しい低下を示し,また言語能力,視空間認知能と注意力の軽度低下も見られた。
発症前患者の認知障害の一般的特徴は,AD診断確定のかなり前から多数の脳構造・機能に変化が見られることを示した最近の覿察に一致すると同博士は述べている。AD発症前に見られる生活記憶,実行機能や認知速度の低下などは正常な加齢による認知障害とよく似ているが,後年痴呆と診断される人々では症状が悪化する。
75歳正常者と質的差異はない
Backman博士は「正常な75歳の高齢者とAD発症前の患者には,認知障害のパターンに明らかな質的差異はない。むしろ,われわれは正常な高齢者,AD発症前患者と初期AD患者は認知障害の進行経過の同一線上にあると考えている。このことは正確な早期診断を困難にしている」と述べている。
ADの発症前状態は早期に現れ,数年間は比較的安定した状態で経過し,その後の認知機能の急激な低下により診断が確定することについては合意が得られつつあるが,今回のデータはこれを裏づける内容である。
同博士らは,ADの発症前状態を特定し,発症の可能性を正確に予測するためには多変量解析が必要となる。
今回の研究では,ベースラインで75歳末満であった発症前患者は,75歳以上の発症前患者に比べ認知障害が発症時により顕著であることも明らかにされた。診断確定までの年数が短い(3年末満)患者も,認知障害の重症度が高かった。これらの所見は,若齢で発症し進行が早い例では脳病変が重度で広範囲に及ぶため,発症前認知障害がより重度であることを示唆している。
私の感想
『正常な高齢者,AD発症前患者と初期AD患者は認知障害の進行経過の同一線上にある。このことは正確な早期診断を困難にしている』という当たり前の結果が確認されたようですね。
ですから「ADの発症前状態は早期に現れ,数年間は比較的安定した状態で経過しており、その時点ではそれがアルツハイマー病の前駆症状なのかどうかは判断できない」という結論のようです。「症状だけから超早期診断をするのは困難であるという結論であった」とも言えますね。