魚およびω-3脂肪酸の摂取量と女性の脳卒中発症リスク

 

 魚食べてもアルツハイマー病の予防には繋がらない(?!)が、ラクナ梗塞の発症リスクは低下!


 脳卒中発症率の時代的推移を久山町研究(1961年より)でみると、1970年代には高血圧の治療によって脳卒中は1/2〜1/3まで減少した。しかし80〜90年代には高血圧の治療がさらに普及したにもかかわらず、脳卒中発症率は横這いとなった(藤島正敏:日老医誌36:16,1999)。これは新たな危険因子(糖尿病、高脂血症など)の台頭によるもので、その要因として生活習慣、とくに食生活の欧米化(穀類摂取の減少、動物性脂質の増加)が考えられた。久山町住民の魚介類の摂取(成人換算値)を1965年を基準にしてみると85年は129%、94年は143%、一方国民栄養調査では各々94%、126%で決して魚の摂取量が減っている訳ではない。むしろやや増加傾向にあるが、肉類摂取の異常な増加(久山町331%、全国248%)とは比較にならない。日本人こそ食習慣の是正が急務である

 さて、日本人の食習慣の範囲内でも魚の摂取寡多によって血清EPA(エイコサペンタエン酸)含量に差があることが明らかである(井後雅之:米子医誌36:310,1985)。地域住民の魚の摂取習慣と血清EPA値は相関があり、毎日魚を食べる群のEPA値(μg/ml)164±69(SD)は、週数回食べる群の124±43、殆ど食べない群の98±38より有意に高い。山陰地方の漁村と農村住民の血清EPA値の平均値は前者が25μg/ml高い傾向にある。

 興味あることは脳卒中の訂正発症率(対人口10万人)が142.2対280.0、訂正死亡率は88.4対187.7といずれも有意(p<0.01)に漁村部が低い。この両群間に脳卒中の危険因子(高血圧、糖尿病、血清脂質など)の頻度に差がない。さらに高齢者の痴呆有病率はアルツハイマー病には差がないものの、血管性痴呆が0.5%対1.8%と漁村部は有意に低い。魚の摂取量が多いほど血清EPA値は高く、脳血管障害(脳卒中、血管性痴呆)に対して予防効果が示された。

(中略)

 EPAは炭素20、二重結合5の不勉和脂肪酸で、魚油より抽出したEPAをエステル化し、高純度に精製された製剤(エパデール・カプセル)がすでに臨床で用いられている。EPAの薬理作用は体内に取り込まれたのち、細胞のEPA含有率を高めて作用を発揮し、血小板では粘着・凝集の抑制作用(血小板のアラキドン酸代謝を競合的に阻害し、TXA2産生を抑制)、血管壁では伸展性保持作用(中膜障害の保護)、さらに血清脂質改善作用(コレステロール、トリグリセリド低下を有することが知られている。

 

病型別に魚およびω-3脂肪酸摂取と脳卒中発症との相関をみた初めての前向き試験〔1980〜94年の追跡結果〕

 魚およびω-3多価不飽和脂肪酸の摂取量と脳卒中の発症リスクを病型別に比較検討した前向き試験は行われていない。そこで、我々は、1980〜94年の14年間にわたり、前向き追跡調査を実施した。

 基礎疾患のない女性79839人を対象に、脳卒中の相対リスクを、魚およびω-3脂肪酸の摂取量別に比較したところ、魚摂取が月1回の人に比べ、それより持取量の多い人では、全脳卒中の発症リスクは低くなった。病型別にみると、魚を週2回以上摂取した群で血栓性脳梗塞のリスクが有意に低下し、特に週2〜4回摂取した群では48%の有意な低下となった。一方、ω-3脂肪酸については、摂取量が最も高い群において、全脳卒中および血栓性脳梗塞のリスクの有意な低下がみられた。魚およびω-3脂肪酸のいずれにおいても、ラクナ梗塞の発症リスクは低下したが、大動脈梗塞との間に相関はなかった。

(中略)

 

結論

 魚およびω-3多価不飽和脂肪酸を多量・高頻度で摂取すると、血栓性脳梗塞のリスクが低下し、その低下率は特にアスピリンを常用していない女性において高かった。一方、出血性脳卒中の発症リスクとは相関がなかった。これらから、魚およびω-3脂肪酸の摂取は血栓性脳梗塞のリスクを低下させる上で有用であることが示された。さらに、くも膜下出血や脳実質内出血のリスクを増大しないことが示された。

(平成14年4月号 メディカル朝日・文献レポート)

 

私の感想

 『高齢者の痴呆有病率はアルツハイマー病には差がないものの、血管性痴呆が0.5%対1.8%と漁村部は有意に低い』は少し意外なデータでした。

 エパデールを服用すると、赤血球の変形能が向上して、それがラクナ梗塞の発症率低下に寄与しているのではないかと推測されているようですね。

 魚を食べると、アルツハイマー病の予防に繋がるのではないかと言われ、米国では魚の摂取がブームになっているという話を聞いたことがあるのですが・・・。まあ国内でも検証される動きがありますので、結論はその最終結果を待ちたいと思います。

 

ご意見はこちらまで

ホームへ戻る