早期アルツハイマー病

 

 認知リハビリで学習能力の存在示唆!


〔米メリーランド州ベセズダ〕米国立衛生研究所(NIH)の一機関である米国立加齢研究所(NIA)が助成した2件の新規研究によると,早期アルツハイマー病(AD)患者には,従来考えられていたよりも学習能力が残されているようだ。これらの有望な研究から,早期認知障害では重要な情報を想起したり,日常の仕事をよりうまく行ったりすることについての学習が依然として可能な患者がいることが示唆された。マイアミ大学とマウントサイナイ医療センター(フロリダ州マイアミビーチ)精神医学のDavid A.Loewenstein博士らによるこの所見は,American Journal of Geriatric Psychiatry(2004;12:395−402)に発表された。

 

介入により情報処理が迅速に

 2004年7月の報告では,3〜4か月の認知リハビリテーション(リハビリ)に参加した軽度障害AD患者では,人の顔や名前を思い出す能力が平均170%改善した。また,買い物で適切なお釣りを渡す能力に71%の改善が見られたことを明らかにした。リハビリ参加群は,参加しなかつた同様の患者群と比べて,情報に対する応答や処理がより迅速で,時間や場所をより正確に判断できた。これらの改善は,認知リハビリ終了の3か月後にも継続していた。

(中略)

 NIA加齢痴呆部長のNeil Buckholtz博士は「これらの試験成績を総合すると,ADの早期段階にある高齢者は,日常生活を続けるうえで助けとなるテクニックを学習することができるという興奮すべき概念が浮かび上がる」と述べ,「これらの所見は,早期ADではどの記憶能力が保存されるのかを正確に指摘できることを示すもので,それら記憶機能を標的としてその大部分を再生する方法を示唆するものだ」と評価している。

 

リハビリ参加者に記憶ノート

 認知とは,考え,学び,記憶する能力である。以前の研究から,脳卒中を起こした患者や外傷性脳傷害の患者では,認知リハビリにより記憶や他の認知機能を効果的に改善できることが明らかにされた。これらのテクニックのいくつかは,一部のAD患者の記憶の改善にも役立ってきた。しかし,今回の研究は,ADで軽度の障害を受けた患者のための単独のリハビリプログラムに複数の特定の認知記憶テクニックを組み込んだ最初のものと考えられる。

 Loewenstein博士らは,ADと診断された44例を認知リハビリ(CR)群と精神刺激(MS)群の2群にランダム化割り付けした。対象者はすべて限定された期間,AD症状の悪化を防ぐ助けとなると考えられる塩酸ドネペジルなどのコリンエステラーゼ阻害薬を服用していた。

 CR群の25例は,週2回45分間のセッション(合計24回)に参加した。これらのセッション中,患者は顕著な顔の特徴と名前とを関連付けるなどの“顔−名前認知テクニック”を学んだ。例えば,いつもほほ笑んでいるSamという名の男性は「Smiling Sam」として思い出すようにさせた。次に,時間や場所の正しい判断を高めるために,CR群に記憶ノートを与え,約束,薬剤服用スケジュール,親せきや友人,医師との接触を記録するよう奨励した。参加者には試験期間を通じて1日2回,この“中央情報保管庫”のレビューを行うよう求めた。

 また,CR群に買い物で釣り銭を計算する効果的な方法を教え,3回支払いをした後には計算機を用いて小切手帳のバランスチェックをするよう求めた。さらに,コンピュータスクリーン上に黄色いボックスがランダムに現れたときには,それに応答してマウスボタンをクリックさせた。このテクニックは,注意の範囲や認知処理速度の改善のためにデザインされたものである。最後に,同群にはかぎのような対象物を,あたかもそれを用いているように操作することを求めた。一部の人々では記憶を活性化でさるテクニックである。さらに,参加者やその介護者に,これらテクニックのすべてを自宅で練習するよう推奨した。

 

世間とのかかわりを持続できる

 一方,MS群の19例は,記憶力,集中力,問題解決技能が必要とされるコンピュータゲームを行った。また,MS群には,彼らが育った近所について描写するなどの種々のトピックを話し合うよう求めた。さらに,クロスワードパズル,ワードスクランブルなどの宿題を行うことも求めた。

 試験終了時,平均してCR群はMS群より顔と名前を結び付ける能力が有意に改善し,精神処理速度が速く,時間や場所をより正しく判断し,買い物で正しい釣り銭を計算することができた。しかし,両群とも,操作に技巧が必要な対象物や小切手帳のバランスチェックに関する記憶の改善は見られなかった。

 Loewenstein博士らは「この試験から,早期AD患者は学習できることが明らかになった。脳の特定領域を標的とする一定のテクニックを患者に教えれば,学習能力を大幅に高めることができる。さらに重要なことに,特定の認知リハビリ戦略を組み合わせれば,全体としてより長期間,AD患者が日常活動にかかわり続け,家族や友人,世間との関係を維持する助けとなるであろう」と述べた。

(2004年9月9日付Medical Tribune p56)

 

私の感想

 「早期認知障害」というのは「軽度認知障害」を意味しているのでしょうね。

 MS群のリハビリメニューには、「彼らが育った近所について描写するなどの種々のトピックを話し合う」と書いてありますから、いわゆる「回想療法」的な要素も取り入れたようですね。

 いずれにしても、軽度認知障害(MCI)の状況の方には、「早期AD患者は学習できることが明らかになった」という報告は大きな朗報ですね。

 『記憶ノートを与え,約束,薬剤服用スケジュール,親せきや友人,医師との接触を記録するよう奨励した。参加者には試験期間を通じて1日2回,この“中央情報保管庫”のレビューを行うよう求めた』という手法だけは積極的に勧めていきたいですね。

 

過去のバックナンバー 

(1)アルツハイマー病型痴呆患者の施設入所に影響を与えるデイケアの効果について

 http://www.inetmie.or.jp/~kasamie/ALZday-care.html

(2)アルツハイマー型痴呆患者の手続き記憶に関する縦断研究

 http://www.inetmie.or.jp/~kasamie/AlzRiha200204Nousinkei.shtml

 

ご意見はこちらまで

ホームへ戻る