人口に基づいたmild cognitive impaimentの頻度および予後についてのprospectiveな研究

 

 MCIの40%以上が正常に戻った!


 Alzheimer病(AD)の臨床経過中には痴呆のcriteriaに合致しない微妙な認識能障害がある。Mild cognitive impairment(MCI)は正常とADの移行期を表現するものとの考えがある。実用的な槻念として,MCIは痴呆の診断が下されず,記憶力障害を訴え,客観的に記憶に関する行動障害があるが,全般的な認識能および行動が保たれている状態を表現するものであるとされている。1999年以降,とくに米国において使用されており,Quality Standards Subcommittee of the American Academy of Neurologyの報告はこれを堆奨している。MCI例の年間のADへの進展率,いわゆる変化率,自然経過を検討したいくつかの報告があり,年間7〜20%とされている。しかし多くの報告は特殊な外来例などであり,対象が偏っているといえる。

 本研究では南西フランスのGirondeおよびDordogneの人口に基づいた65歳以上の老年についてのProspectiveな研究組織に参与する症例3,777例からの2,048例が調査された。経過観察期間は5年,痴呆がなく記憶力障害を訴え,客観的に記憶力障害があり,一般的な認識能障害または日常生活動作(ADL)障害を認める場合をMCIと定義した。頻度は人/年の形で表現した。調査開始時MCIは58例(全症例の2.8%)存在した。5年の経過観察は1,265例中40例のMCI例が出現した。MCIの発症率は9.9/1,000人/年であった。MCIからADへの変化率は年間8.3%であり,MCIはADの予測因子として良好といえるものであった。しかしながら,経過とともに不安定であり,2〜3年の間に6%のみがMCIにとどまり,>40%は正常に戻った。

 以上,現代の定義によるMCIはADのよい予測因子であるが,きわめて不安定であり,ADに進展する危険性の高い別のカテゴリーを作成すべきといえる。

(浴風会病院 大友英一)

(2003年3月号 脳神経Vol.55 3号 P280 海外文献抄録=S Larrieu 、Neurology 59:1594-1599,2002)

 

私の感想

 MCIの自然歴が、大規模な調査結果で明らかになってきたようです。アルツハイマー病への以降はやはり高率ではあるものの、数%はMCIにとどまり、40%以上が正常に戻ったという調査結果は初めてだと思います。

 今まで、MCIと診断されると、「いずれはアルツハイマー病に・・」という暗いイメージがつきまといましたが、「正常に戻りうる」という可能性が示されたことは大きな意義がある思います。

 

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