50代からの痴呆

 「転ばぬ先」の早期発見!

 マイルド・コグニティブ・インペアメント(軽度の認知的低下、通称MCI):痴呆ではないが、五年以内に痴呆になる可能性の高い「痴呆の前段階」


 「ある朝、突然痴呆になるということはありません。かつては置き忘れがあっても探し出せたのに、今さっきのことを忘れてしまう。前は日課をきちんとしていたのに、今は家族がうるさく言っても何もしようとしないなど、半年から一年前に比べて生活に支障をきたす症状が進んでいる場合、痴呆が疑われます」

 東京都老人総合研究所の本間昭・精神医学部門研究部長の話に、放課後の小学枚体育館に集まった熟年世代が、メモを取りながら熱心に聴き入っていた。

 この七月、東京都豊島区で始まったばかりの「痴呆の早期発見、予防プロジェクト」の幕開けとなる講演会だ。二日間で、モデル地区の約二百人が参加した。

 家業の商売を早めに切り上げて駆けつけた女性(68)は、「同居している子どもから『絶対にボケないで』と言われているので、積極的に参加して元気な老後を過ごしたい」と話す。亡くなった実母が、最後の二年ほど、「隣の人が盗みに来る」と繰り返したり、お金をあちこちにしまって忘れてしまうなどの痴呆が出て、心を痛めた経験があるだけに、「明日はわが身」の切実な問題だという。

 このプロジェクトでは、六十五歳以上の希望者に、今後数年間、痴呆の健診を継続的に実施する。と同時に、痴呆予防のために、運動や余暇活動のグループをつくり、楽しみながら脳機能を鍛える予定だ。

 人口が少なく、地縁、血縁がある農村部では、保健婦が住民の健康状態の把握に努め、痴呆予防に取り組んで実漬をあげているところもあるが、人間関係が希薄な都会での「痴呆予防」は新しい試みだ。

 豊島区では講演会に先立って四十歳以上の住民に、痴呆の知識などについてのアンケートを実施し、六十五歳以上の住民には、興味のある社会活動や趣味などを聞き取りして、プロジェクトをどう構築していくかを調査した。

 プロジェクトを推進する同研究所の研究員、矢冨直美さんは、「コミユニティーづくりから始め、ほかの区でも実践できるように、都会での痴呆予防のノウハウを蓄積したい」と意気込む。

 欧米の痴呆研究では、一九九五年ごろから、重度の痴呆だけでなく、「いかに早く発見し、手を打つか」に重点が置かれるようになってきた。

 そうした潮流のなかで出てきた概念が、「マイルド・コグニティブ・インペアメント(軽度の認知的低下、通称MCI)」だ。痴呆ではないが、五年以内に痴呆になる可能性の高い「痴呆の前段階」の人たちで、六十五歳以上人口の五%から一○%を占めるとされる。

 矢冨さんは、MCIの段階から、脳を使わない「社会的刺激がない生活」を改善し、脳機能を活性化する活動を生活に組み込めば、痴呆を予防できるのではないかとみる。「たとえば、最近あそこのおばあちやんがボケてきたからと、保健婦や近所の人が積極的に話しかけていったら、みごとにボケからよみがえった−−という例は、経験的にはたくさんある。しかし、残念ながら科学的に立証されたといえるデータがまだない。そのため、痴呆予防が本格化しないのが現状です。予防に力を入れることで痴呆の発症が抑えられることを示せれば、介護にかかる費用も安くすむし、なによりも、老後の生活の質の向上につながります」  

(参考文献:平成12年7月28日 週刊朝日)

 

私の感想

 矢冨さんのご意見は大変正直なご意見だと思います。すなわち「MCIの段階から、脳を使わない“社会的刺激がない生活”を改善し、脳機能を活性化する活動を生活に組み込めば、痴呆を予防できるのではないか」という意見は以前より提唱されているのですが、現実には「科学的データの実証がない」のが現状なのです。

 今回の取り組みで、アルツハイマー病の発症率が低下することがもし実証されたら、「軽症アルツハイマー病に対するデイケア」などの実践が有用であることの科学的根拠にもつながるわけですね。

 

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