アルツハイマー病の告知

 

 任意後見制度!

 告知して「自殺」の懸念は?!


 今回は「医療常識を高めましょう・シリーズ(2)」をお届けする予定でしたが、予定を変更してタイムリーな話題をご紹介します。

 アルツハイマー病の告知問題を皆で考えてみましょう。

 本年4月開催された、第五回・アルツハイマー型痴呆研究会において、告知問題がメインテーマの一つとして取り上げられ、賛否両論の意見が出されました。詳細は、下記をご覧下さい。

 http://www.inetmie.or.jp/~kasamie/AlzKokutiMedAsa.shtml

 日本は、アルツハイマー病告知後進国です。私自身も、患者さん本人に対しては、アルツハイマー病の病名告知をするケースが少ないのが現状です。そこで、アルツハイマー病の告知に関する実態調査を行っておく必要があると感じ、本年7月から約1か月かけて通院中のアルツハイマー病患者さんのご家族を対象にして、アンケート調査を実施し39人より回答を頂きました。

 病期に関わらず告知を希望された方が27人、初期の場合だけ希望する方が7人。望まれた計34人の中でも、患者本人への病名告知まで確認できたのは8名に過ぎませんでした。「天命に任せたい」、「怖いから」という理由で、2人の方は告知を希望されていません。このご意見も軽視できないと思います。

 自分自身は痴呆症になったら告知を希望するが、家族には病名を知らせたくないという日本特有の精神的風土がこれらの数字に表れています。

 また、告知を希望する理由も調査しました(重複回答あり)。「判断力が残されているうちに、家族への遺書などを書き残したいので」という意見が最多で21名、2番目が「自分の病名は正しく知りたいから」で19名、3番目が「どんどん悪化することが避けられないのなら、自分の死に方を考えたい」で7名でした。

 私自身は、初期アルツハイマー病の方に告知して自殺につながりはしないかと懸念しておりました。やはり7名と少数ですが、「自分の最期を考えたい」という意見が出されました。痴ほう症の問題行動などで苦悩している介護者が、もし自分がアルツハイマー病になったら、家族の手を煩わす前に自分の最期を考えたいと感じるのも当然のことかも知れません。それだけに、告知後の支える態勢が不完全な状況下での安易な告知は控えるべきだと私自身は考えています。

 しかし、「任意後見制度」を利用するには、告知は避けては通れない問題となります。任意後見制度とは、本人が元気なうちに(判断能力が衰える前に)判断能力が衰えてしまった場合に、誰にどのようなことを手伝ってもらいたいか(財産管理や法律行為など)、どのようなケアを受けたいかなどについてあらかじめ自らの意思を表明しておき、本人が実際に判断能力が衰えてしまった場合に、本人に頼まれた人が本人の任意後見人となり、本人の意志を実現する制度です。

 1994年11月5日、レーガン元米国大統領が「アルツハイマー病に関し、世間のより深い認識を促すため」に、自筆の手紙でアルツハイマー病であることを公表しました。この公表により、誰でもなりうる病気だとの認識が広まり、痴呆への偏見や差別が緩和され、隠さなくていいという機運が生まれたことはよく知られています。

 日本ではアルツハイマー病への偏見がまだまだ根強く残っています。そんな状況の中、「私はアルツハイマーです」というタイトルの衝撃的な記事が最近報道されました(本年8月1日付朝日新聞・生活)。本年京都で開催される国際アルツハイマー病協会第20回国際会議の3日目(10月17日)には、痴呆患者さんからのメッセージも紹介される予定です。

 がん告知に関する議論同様、アルツハイマー病告知に関する議論が今後深まっていくことを願っています。

 

 平成16年8月25日、著書第2作「インターネットで痴ほう外来を」(出版社:柘植書房新社)を発行致しました。痴ほう症を中心とした最新の医療情報を記載しました。 

(平成16年9月10日 三重タイムズ883号・日々想々)

 

ご意見はこちらまで

ホームへ戻る