アルツハイマー性痴ほう

 親身になり話し相手に!


 Eさんは五十歳代のコンビニ店長。同居している八十代の母親が三年前、アルツハイマー性痴ほうと診断された。母親は朝御飯を食べた後、三十分もしないのに「ごはんはまだかね」と聞いたり、少し目を離すと外に出ていってしまう。トイレの世話や入浴の介助が必要なほど脚が弱っているはずなのに、そんなときは、見違えるような元気な足取りで歩いていき、ときには居場所がわからなくなったりする。

 ぼけ始めたときはEさんと妻が二人で面倒をみていたが、今は店を妻に頼んでもっばらEさんだけで世話をしている。Eさん宅を訪問して「お一人で介護するのは大変ではありませんか」と聞くと、Eさんは「いやあ、もう慣れましたし、結構楽しいですよ」と、意外なことを言う。

 Eさんの経験によると、周囲にとって一見理解が難しそうにみえる痴ほう患者の行動も、その人の生活史をよく知っていると案外理屈に合っていることか分かるという。例えぱ、急ぎ足で家を出ていってしまうのは、「早く保育国に子供を迎えに行かなくては」と考えての行動であり、入浴を嫌がるのは、心理的に娘に戻ってしまった母親が「今日は生理日なので、おふろに入れない」と思っているのである。

 Eさんは母親の状態をよく観察し、今日は何歳のころに戻っているのかを判断、それに合わせて相手をする。あるときは母親の夫になり、またあるときは父親になる。もちろん時々は息子として接する。まるでままごと遊びをしているようだが、大事なことは、母親の言うことを逆らわずに受け入れ、親身になって会話の相手をすることだという。そうすると、母親の心理状態はきわめて穏やかに保たれる、とEさんは語る。

(東京都立保健科学大学教授 安田美弥子) 

(参考文献:平成10年10月19日 日本経済新聞・ココロジー)

 

私の感想

 介護のポイントがうまく濃縮されており良い記事ですね。

 同じ事を何度も聞いてくる痴ほう症患者さんに対して、「親身になって会話の相手をする」ことは大変難しいことです。何度言っても覚えない子供に繰り返し勉強を教えるのと同等の忍耐力を必要とします(子供には将来の楽しみがありますが、痴ほう症患者さんはだんだん良くなるということはないわけですから、その分さらに大変な忍耐を要するわけです)。

 

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