第25回日本認知症学会・抄録集より

 

 MRIでの海馬萎縮の陽性率はCDR0.5,1,2でそれぞれ71.4%,73.5%,91.3% 脳血流SPECTで特徴的な血流パターンの陽性率は64.3%,70.7%,61.5%!

 健常者の偽陽性は意外と多い?!


 第25回(2006年 in 広島国際会議場)日本認知症学会の抄録集が9月8日送られてきました。

 基礎的な分野の演題に関しては私には難解な内容が多いですが、私が最も注目している「早期診断」の分野で、目にとまった抄録が2点ありましたのでご紹介しましょう。

 

1)健常者脳血流SPECTにおけるeZIS(eazy Z-score Imaging System)の問題点

 宮本礼子(延山会西成病院・内科)他

 【目的】「アルツハイマー型痴呆の診断・治療・ケアガイドライン」にはeZISなどの画像統計解析を行うことが推奨されている.しかし,健常者のeZIS画像を詳細に検討した報告は演者らが調べた範囲ではない.そこで,健常者を対象にeZIS画像でどのような所見が得られるかを検討した.

 【対象】健常成人4名(男3名,女1名),平均年齢49±17(SD)歳(26〜65歳),MMSE=29.7±0.5点,頭部MRIは全員異常なし.

 【方法】(装置)γカメラ:東芝E-CAM(LEHR),データ処理装置:GMS5500A,(収集)トレーサー:99mTc-ECD(800MBq)(再構成)散乱線補正(TEW法)吸収補正(Chang法:μ=0.15cm-1)解析ソフト:eZISver.3

 【結果】1.eZIS画像は,施設間差・散乱線・吸収補正の有無で8通りの組み合わせを行ったが,全てにおいて,全員に血流・代謝低下を認め,かつ,画像も異なった.さらに,施設間差補正を使うと4名とも血流・代謝低下部位は増加した.2.(上記3つの補正を使った場合)1名で両後部帯状回と左楔前部にZスコア(ZS)3と4の,2名で左楔前部にZS3の血流低下を認め,早期アルツハイマー病の所見であった.他の部位は,4名に左頭頂葉と左前頭葉にZS2〜4の,3名に右頭頂葉と右前頭葉にZS2〜3の,2名に左後頭葉と左側頭葉にZS2〜3の,2名に左小脳にZS3〜4の,1名に右小脳にZS5の血流低下を認めた.

 【考察】健常者4名全員にeZISで血流・代謝低下を認めた.その原因は,1)多重比較の補正がないのでZS2程度の出現は統計学的にあり得る.2)施設間差補正が有効でない,が考えられる.【結論】認知症診断にeZISを使う場合,健常者にも無視できない血流・代謝低下がみられることを認識すべきである.

 

 

2)アルツハイマー病の早期診断におけるMRI,脳血流SPECT,FDG-PET,脳脊髄液マーカー検査の有用性の比較

 森永章義(金沢大学大学院・医学系研究科)他

 【目的】アルツハイマー病(AD)の早期におけるMRI,脳血流SPECT,FDG-PET,脳脊髄液マーカー検査の有用性を検討する.

 【方法】当科もの忘れ外来を受診し,NINCDS-ADRDAの診断基準によりprobableADと診断された159例(男性65名,女性94名)に対し,頭部MRIでの海馬萎縮(median temporal lobe atrophy(MTA)scale2以上),99mTc-ECDによる脳血流SPECTでのADに特徴的な血流パターン(後部帯状回血流低下あるいは側頭頭項葉血流低下),18F-FDG-PETでのADに特徴的な代謝パターン(後部帯状回代謝低下あるいは側頭頭頂葉代謝低下),脳脊髄液アミロイドβ1-42蛋白(Aβ42),総タウ蛋白(T-tau),リン酸化タウ蛋白(P-tau)を検討した.

 【結果】平均年齢は73.1歳.CDR0.5が14名(男性6名,女性8名),CDRlが115名(男性47名,女性68名),CDR2が30名(男性12名,女性18名)であった.MRIでの海馬萎縮の陽性率はCDR0.5,1,2でそれぞれ71.4%,73.5%,91.3%.脳血流SPECTで特徴的な血流パターンの陽性率は64.3%,70.7%,61.5%.FDG-PETでの特徴的代謝パターンの陽性率は75.0%,85.7%,100%であった.Aβ42の陽性率は80.0%,85.5%,83.3%.T-tauの陽性率は75.0%,85.7%,100%.P-tauの陽性率は100%,88.2%,100%.P-tau/Aβ42比の陽性率は100%,97.1%,100%であった.

 【結論】ADの早期診断では脳脊髄液マーカーがMRI、脳血流SPECT、FDG-PETよりも有用であることが示唆された.

 

私の感想

 軽症認知障害のままでとどまるか、アルツハイマー病に発展するのかの予測は、いかなる専門医でもごく最近まで困難でした。しかし近年、MRIのVSRADという手法あるいは脳血流検査(SPECT)のeZISにより80%程度は、アルツハイマー病に発展するのかどうかの予測が可能とも言われ始め3か年研究が進められています

 私もそう言った最新データを目にしてからは、MCI症例でアルツハイマー病に発展するのかどうかの精査を希望している患者さんに関しては、上記のようなデータをご紹介し、このような設備を持った医療機関への受診を勧めてきました。

 しかし今回の抄録を読むと、『MRIでの海馬萎縮の陽性率はCDR0.5,1,2でそれぞれ71.4%,73.5%,91.3%. 脳血流SPECTで特徴的な血流パターンの陽性率は64.3%,70.7%,61.5%.』というデータのようですから、やはりなかなか80%という高率な感度を得ることは実際には難しいようだな・・と感じました。特にSPECTの陽性率の低さにはちょっと驚きました。しかも演題1)に述べられているように、健常者における『偽陽性率』がまだまだしっかり検討されていない状況では、健常者(あるいは非進行型MCI)を「早期アルツハイマー病」と誤診して告知までしてしまう危険性を考えると、MRI&SPECTに全信頼を寄せるのは時期尚早と言わざるを得ないかな!と感じました。

 是非とも出席したい学会ですが、あいにく開催日の10月6日〜7日は脳神経外科学会総会と日程が近く参加不可です。

 CDRに関しては過去のバックナンバーもご参照下さい。

 

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