脳循環の悪化は症状の増悪因子に!?
軽症アルツハイマー病では、長谷川式簡易知能評価尺度改訂版(HDS-R)の点数が年間2.5点程度悪化する!
脳循環の悪化は症状の増悪要因に
国立精神・神経センター武蔵病院の字野正威副院長は,アルツハイマ一病(AD)早期症例の増悪因子について考察。ADの症状増悪に対する脳血流の影響を明らかにするため,平均脳血流量と知的低下の速度との関係を検討したところ,「ADと脳血管性痴呆との間には,症状を増悪し合う関係があるのではないか」と報告した。
GDS4群で進行速い
宇野副院長らは,総合的知的機能低下評価尺度(GDS)について,認知機能検査(MMSE=Mini-Mental State Examination)24点以上を3(AD♀早期,疑い)とし,23点以下を4(軽症AD)として検討したところ,MMSEの年間低下率は,GDS3群は平均-1.3〜1.4で進行が緩やかだが,GDS4群は-1.7で進行が速かった。同時に施行した長谷川式簡易知能評価尺度改訂版(HDS-R)では,GDS3群はほぼ-1.5,4群はほぼ-2.5であった。そのため,「疑い」から「軽症」へ進行する過程を捉えるには,長谷川式はMMSEより有用である,としている。
同副院長らは,食道癌の手術後,またWPW症侯群で入院後,せん妄が遷延化し,痴呆が増悪した例を経験した。従来から「麻酔後痴呆」や「心臓原性痴呆」が指摘されてきたが,これらはADを増悪させる要因となることがある,と見ている。また,脳卒中の既往がないAD症例で,MRIで大脳基底核,視床,深部白質に高信号斑点(UBO=unidentified bright objects)がある程度見られる症例は,これまで特別な関心が持たれてはいなかったが,これらのなかに進行が速い例が含まれており,なんらかの虚血性変化が合併していると考えられるという。
次に,SPECTによる平均脳血流量とMMSEの変化率との相関を検討したところ,脳血流量42ml/l00g/分以上の例はあまり知的低下は進行していないが,36ml/l00g/分以下では進行が速かった。字野副院長は「現在,アルッハイマ一病と血管性痴呆を峻別する傾向があるが,進行の過程で両者は相互に脳の病変を加速し,症状を増悪し合うような関係にあるのではないかと思われる」と述べた。