明らかな発病リスクを軽減する可能性のある環境要因が5つある:エストロゲン補充療法、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)、ヒスタミンH2拮抗薬、抗酸化ビタミン、そして赤ワイン !?
リスク軽減する5要因
遺伝は運命と同じではない。アルツハイマー病の素因を持つ人の発症を遅延し,明らかな発病リスクを軽減する可能性のある環境要因が5つある。エストロゲン補充療法,非ステロイド性抗炎症薬(NSAID),ヒスタミンH2拮抗薬,抗酸化ビタミン,そして赤ワインは,すべてこのような作用を持つとされている」と述べた。
今回の研究は,ユタ州の田園地域であるカシェ郡のおもにモルモン教徒の住民を対象に行われた。これらの住民は,喫煙率,アルコール依存症率が非常に低く,(その影響と思われるが)特に男性の寿命が長い。さらに痴呆の診断に混乱を来すような慢性疾患の罹患率が比較的低い。
今回の患者対照研究では,上記住民3500人から759人を抽出,l8か月後にフォローアップを行った。内訳は対象群としてのアルツハイマー病群l97例と,これら患者群と年齢(5歳ごとに分ける),性,教育程度,APOE4対立遺伝子の数が一致し,痴呆徴候のない対照群562例だった。
予備結果では,NSAIDの投与がオッズ比0.44(信頼区間95%)と,明らかな(アルツハイマー病)防御効果を有することが示された。
同じくアスピリンにもオッズ比0.56と防御効果が見られた。Breitner教授は「アスピリンは被験者で心血管保護のために服用されている場合が多く,ほとんどはアスピリン325mgを毎日または1日おきに,または80mgの低用量を毎日服用していたが,このような少量服用者でも明らかな防御効果が示されたことから,古い感覚で,効果を得るために高用量のNSAIDを投与していたが,その必要のないことが示唆された」としている。しかし,paracetamol(=アセトアミノフェン)や他の非アスピリン剤,非抗炎症鎮痛薬のオッズ比はおよそ1で,いずれにも防御効果は認められなかった。
H2拮抗薬に明らかな効果
一方,H2拮抗薬にはオッズ比0.35と明らかな防御効果が認められた。しかし,この結果は適応疾患による交絡を認めた。「胃逆流でH2拮抗薬を服用している患者は,制酸薬を服用している可能性が高い。この交絡因子を排除する唯一の方法は,H2拮抗薬ではなく制酸薬を服用した患者およびその逆の患者が得られるような,十分な対象数をそろえて,優れたレトロスペクティブ研究またはコホート研究を行っていくことだ。しかし,残念なことに,現時点でそのようなデータは得られていない」という。
「ヒスタミンH2受容体拮抗薬」というと具体的には、タガメット、ザンタック、ガスター、アルタット、アシノンという薬がありますが、今更言うまでもなく胃潰瘍、十二指腸潰瘍、逆流性食道炎、急性・慢性胃炎の際に使われる薬です。
これらH2受容体拮抗薬は従来「せん妄」を誘発しうる薬としても知られておりました。それが一転アルツハイマー病予防に有効ではないかという報告で驚いております。
オッズ比0.35(オッズ比に関しては、私のホームページ上のファイルが分かりやすいと思いますが、詳しく知りたい方はこちらをどうぞ)というのはすばらしいデータですね。大規模な再評価がなされることを願っております。
現状でのアルツハイマー病予防には、「明らかな発病リスクを軽減する可能性のある環境要因が5つ(エストロゲン補充療法、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)、ヒスタミンH2拮抗薬、抗酸化ビタミン、そして赤ワイン」という部分を全面的に信頼するのであれば、エストロゲンは男性では使い難いのですが、男女ともにNSAID(アスピリン、インドメタシン、イブプロフェン等ありますが、この文献を読む限り小児用バファリン毎日1錠=アスピリン81mg含有が最も良いようですね)、ヒスタミンH2受容体拮抗薬、ビタミンE、赤ワインを飲みましょうということになるのでしょうか。