アルツハイマー病と画像

 機能画像検査において、早期アルツハイマー病の海馬の血流代謝低下が明らかでない理由!

 海馬萎縮がアルツハイマー病発病の危険因子!?(80名の軽度の認知機能障害者の追跡調査で、アルツハイマー病が27名に発症)

 AChEの定量を可能とするPETリガンドが開発!

 


(冒頭省略)

早期診断と超早期診断

 アルツハイマー病の診断,ことに早期診断の問題は,アルツハイマー病の病態,特にその進展の問題と表裏一体である。アルツハイマー病が早期に海馬や側頭葉内側部を冒し,大脳皮質に進展することは病理学的研究から明らかである。形態画像検査においても,軽度の痴呆の状態において,海馬の萎縮が認められる。ところが,機能画像検査においては,早期の海馬の血流・代謝低下は明らかでない。この説明として,当初海馬の血流・代謝測定にかかわる低いS/N比の影響が考えられていたが,機能画像による血流・代謝が,神経細胞数よりむしろシナプス結合を反映しているという事実を考えると理解しやすい。機能画像検査における血流・代謝低下は,局所の萎縮と関連しない。

(中略)

 現在,機能画像において最も早期に変化が現れる場所として後部帯状回が指摘されている。Michigan大学のMinoshimaらによって報告されたこの所見は,その後他のグループによっても再現されている。この領域は正常の老化によって影響を受けにくいことが示されており,アルツハイマー病の初期変化を被る神経細胞群のシナプス終末群の一部を示しているものと考えられる。しかし個々の症例においては,後部帯状回の解剖学的異種性のために当該領域の血流・代謝低下を視察または定量によって示すことは極めて困難であり(矢状断の画像において検討されるべさであろう),この所見を早期診断に応用するためには個々の症例を正常例のデータペースと比較するための統計学的な検定法も含めたさらなる工夫が必要であろう。

 早期診断をさらにすすめて,発病リスクのある健常者や軽度の認知機能障害(MCI:Mild cognitive impairment)を有する集団に対する超早期診断の検討も報告されている。Apolipoprotein E(ApoE)ε4はアルツハイマー病のりスクファクターとして検討されているが,アルツハイマー病を発現した群においてはApoE ε4の存在に関連する形態・機能画像上の特徴亜型といえるものは今のところないといってよいだろう。しかし,Reimanらは50〜62歳までの近親にアルツハイマー病がいる(家族歴のある)健常者において,ApoE ε4を有する11名のApoE ε4(+)リスク群とApoE ε4をもたない22名の対照群として形態・機能画画像を比較した。ApoE ε4(+)リスク群では,アルツハイマー病患者と同様のMRIにおける海馬体積の減少傾向を示し,FDG‐PETにおいて側頭・頭頂領域の低糖代謝と,ことに後部帯状回の低糖代謝を呈Lた。これは,ApoE ε4(+)のリスク群においては,認知障害の出現する以前から脳の機能的・形態的な病理変化が進んでいることを示唆している

 健忘のようなごく軽度の認知機能障害において,アルツハイマー病とどの程度移行があるかについても報告がある。Jackらは80例の物忘れ程度の軽度認知機能障害の外来患者を平均3年間にわたって追跡調査し,うち27例が観察中にアルツハイマー病の診断基準を満たし,海馬萎縮がアルツハイマー病発病の危険因子となることを示した。海馬萎縮の評価は,その構造の複雑さもあり単純ではないが,複数枚の断面を用いた面積評価で十分可能性があり,3次元的空間処理を用いて自動化することも可能であろう。

(中略)

 

生化学的示標による診断と局所脳機能測定

 アルツハイマー病においてAcethylcholin‐esterase(AChE)の低下が認められることが知られていたが,AChEの定量を可能とするPETリガンドが開発され,報告されている。Iyoらは放射線医学総合研究所で開発されたC-11 MP4Aを用いて,Michigan大学のKuhlらは,C-l1 PMPを用いてアルツハイマー病患者におけるAChE低下を報告している。どちらのリガンドも診断的価値があるのみならず、Acethylcholinesterase inhibitorによる治療効果の評価に用い得る。SPECTリガンドが開発されればより広い臨床応用が期待できる。

 生化学的示標はMR spectroscopy(MRS)によっても得られるが,アルツハイマー病における所見で最も一貫したものはN-acetyl aspartate(NAA)の低下であろう。Schuffらは,H-1 MRSを用いて萎縮補正後の海馬領域のNAA低下をアルツハイマー病患者で示している。

(中略)

 Functional MRIを用いた方法もすでにアルツハイマー病に対して試されており,今後Activation Studyの主流となると考えられる。

(以下省略)

(三井記念病院神経科 中嶋義文) 

(参考文献:平成11年8月号 臨床精神医学)

 

私の感想

 アルツハイマー病の画像診断はとても大切な課題なのですが、やはり早期診断という面ではまだまだ課題が多いのが現状です。私は「PETリガンド」、「MR spectroscopy(MRS)」、「Functional MRI」などの分野の知識は少ないのですが、まだまだ年齢的な物忘れなのか初期のアルツハイマー病なのかの画像による鑑別は難しいのが現状のようです。しかし今後のこの分野の発展は大変期待されております。

 軽度の記銘力低下のある方を経過観察することもとても大切な調査研究となります。何がアルツハイマー病早期の画像所見として重要であるのかということに関しての結論を出すためにです。そういう意味に於いて「80例の物忘れ程度の軽度認知機能障害の外来患者を平均3年間にわたって追跡調査し,うち27例が観察中にアルツハイマー病の診断基準を満たし,海馬萎縮がアルツハイマー病発病の危険因子となることを示した」という研究報告がとても貴重なのです。

 

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