アルツハイマー病診断のポイント!
高齢者では、正常の老化過程でアルツハイマー病にみられる変化があることから、いわゆる年齢に伴うもの忘れ(良性のもの忘れや加齢性記憶障害Age-Associated Memory Impairment;AAMIなどと呼ばれる)と区別することが必要になる。しかし時にその鑑別は難しく、経過を追うとアルツハイマー病では年々症状が進行していく点が異なり、これが唯一の鑑別点となることも多い。
以下のように診断を進める。
1)痴呆がうつ状態や妄想状態、軽い意識障害が原因で起きていないかを鑑別する。
2)検査で痴呆の有無、程度を評価する一MMSEや長谷川式簡易知能評価スケールを行う。できればAlzheimer's Disease Assessment Scale(ADAS-J)を行うと経過による悪化を数値として捉えやすい。
3)病歴の経過を参考にしたり、6カ月〜1年の経過観察で、痴呆が次第に進行することを確認する。
4)生化学的検査やCT、MRIなどの画像検査で、アルツハイマー病以外の原因(アルツハイマー病以外の中枢神経疾患による痴呆、全身性内科疾患、薬物の影響、中毒など)による痴呆の可能性を否定する。この結果、最終的にアルツハイマー病が原因として残る。
5)CT、MRIで、脳萎縮が経過とともに進展することを確認する。また、SPECT検査でアルツハイマー病において比較的初期にみられ、特徴的所見とされている両側頭頂・側頭葉の血流低下画像を認めると、アルツハイマー病の可能性がさらに高くなる(他に特徴的な三次元表示血流画像による診断も役立つ)。
6)以上のプロセスを経て、アルツハイマー病と臨床的に診断する。
さらにアルツハイマー病診断の参考になる2、3のポイントがある。a)初期に物がなくなった、誰かに盗られたと騒ぐことがある(物盗られ妄想)。これは鑑別が時に問題となる脳血管性痴呆では、まずみられない。b)アルツハイマー病の患者は、初期では診察時の態度が極端に丁寧である。質問に対しわからないとき、「知りません」と答えることはほとんどなく、うまい理由付けをしながら知らないことをごまかすような答え方をすることが多い。脳血管性痴呆の患者は、はっきり知らないと答えることが多い。c)初期段階では高次脳機能障害はみつけにくいが、これを評価するには、簡単な平面図の模写ではまず異常が認められない。立方体の箱の模写をさせる、あるいは両手でキツネの形に左右ねじって指を合わせるなど、複雑な動作ができるかを検査するとよい(できなければ失行とする)。
(慶應義塾大学医学部神経内科講師 天野 隆弘)
専門的な意見ですが、アルツハイマー病診断のポイントがうまく整理されている文献です。
とても参考になる意見だと思います。特に「病歴の経過を参考にしたり、6カ月〜1年の経過観察で、痴呆が次第に進行することを確認する」というポイントが診断面で重視されていますね。